女の本屋

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ジャーナリズムがジャーナリズムであり続けるために 『抵抗の拠点から』青木理

2015.03.16 Mon

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.2014年8月4.5日『朝日新聞』に掲載された、日本軍「慰安婦」問題をめぐる報道の検証記事を契機に--とはいえ、それまでにも『朝日新聞』に対する自民党(安倍首相はその最右翼)ほか、保守系・反動系メディアの批判はすさまじかったからこそ、検証に踏み切ったことも本書を読むとよく分かってくる--、本当に信じられないような『朝日新聞』バッシングが始まった。

本書は、共同通信社の記者を経て、現在はフリー・ジャーナリストとなり活躍している青木理さんが、昨今の『朝日新聞』バッシングの異常さを時代背景を含め論じたものである。

2009年鳥取で起きた連続殺人事件を扱った『誘蛾灯』など、ある事件をその背景にある時代性にも切り込む取材を続けてきた青木さんだが、本書においても、『朝日新聞』バッシングが、戦後日本の民主主義の大きな転換点として捉えられている。

第一章と第二章は、2014年8月以降、様々な媒体で発表してきた今回のバッシングに対する青木さんの問題意識を述べたエッセイ・論文からなっているが、第三章が本書の核心となっている。

第三章では、今回のバッシングによって、『朝日新聞』元記者の生活、そして家族にまで破壊されかけた日本社会全体の攻撃のすさまじさ、そしていかに、バッシングを利用して日本の民主主義を破壊しようとする勢力が蠢いているかが描かれる。

負の歴史を忘却に晒さないこと、政権批判、自国の失政の監視といったジャーナリズムの常識が、ジャーナリストたちの手によって放棄されようとしている。それは、上からは、安倍首相を始めとする、民主主義やリベラル勢力を敵視する権力者たちと、下からは、聞くに堪えない罵詈雑言を街角でがなり、ネット上では信じられない差別的用語を撒き散らす--ごく一部の人びととはいえ--差別主義者たちが跋扈する、わたしたちの社会の姿なのだ。

なぜ、本屋にこれほどの差別的な言辞が晒されているのか、『朝日新聞』バッシングがなぜこれほど盛り上がってしまったのか。

こうした禁断の言辞が飛び交う背景を分析すれば、日本社会の「上部」にも「下部」にも黒々と根を伸ばす歴史修正主義の蠢きが、事実として積み上げられてきたことを自己の都合のいい方向に塗り替えようと謀る策動が、ベッタリと張りついていると私は思っている(17-8)。

その背景にまで切り込む本書こそ、多くの人に読んで頂きたい(moomin)。








カテゴリー:わたしのイチオシ / moomin

タグ:慰安婦 / / ジャーナリズム / 朝日新聞 / メディア / マスコミ