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『人口高齢化と労働政策 人口学ライブラリー15』小崎敏男・永瀬伸子(編著)

2015.08.27 Thu

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください. 本書は、今後迎える超高齢化社会を前に、高齢者の働き方と労働政策をまとめた書である。
その内容は、人口高齢化と経済成長の関係を検証したものから、高齢者の就業行動を分析し
たもの、高齢者の新しい働き方を探ったものまで幅広い。

WAN の趣旨から、ここでは筆者の分析結果(第7 章「高年齢女性の就業行動」)を紹介
する。高齢男性の就業に関する分析は数多い一方、高齢女性の「就業」に関する研究蓄積は
驚くほど少ない。なお、本書では「高年齢者」という用語を用い、50 才以上の者を分析対
象としている。2 つのデータを用いた分析からは、高年齢者におけるジェンダー格差が浮き
ぼりになった。
 まず、政府が高齢者就業を促進する一方で、2007 年に内閣府が実施した調査データによ
れば、働く高年齢女性は2 割程度と、高年齢男性に比べその割合は大幅に低い。これは、そ
の後の年金受給等にも影響を及ぼしている。その中で、特に60 歳代の比較的若い高年齢女
性が労働市場に出るようになっている。世帯類型別にみると、女性単身世帯でこの傾向がよ
り強い。

また、高年齢女性の世帯類型別にみた収入を公的統計(総務省『就業構造基本調査』)で
確認すると、高年齢単身女性世帯については驚くべきことに年収200 万円以下である世帯
が2012 年時点で9 割を超え、収入水準の中央値は圧倒的に他の世帯類型(一般世帯、単身
男性世帯)よりも低い。高年齢者の生活のゆとりを感じる要因としては、この収入に加え、
年金受給有無・貯蓄額に大きく左右されている。さらに、過去の就業履歴の有無が、高年齢
となった時の就業選択の大きな要因となっている。専業主婦として過ごしてきた者の高齢
時における就業確率は極めて低い。

女性にとって、「働く」ということはその時点における勤労収入だけでなく、高齢者とな
った時の収入及び就業確率にも影響をもたらすものであった。正規就業だけでなく、非典型
労働、無業と多様な職業キャリアを持つことが多い女性の場合、これまでの就業履歴が高齢
時の生活に直接・間接的に影響を及ぼしていることが、データから示唆される。 (共著者 寺村絵里子)








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タグ:高齢社会