2009.06.19 Fri
京都教育大学生による集団準強かん事件は、それ自体、あってはならない行為ですが、事件をめぐる大学の対応にも重大な問題があります。キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク関西ブロックでは、事件への誠実な対処と被害学生に対する支援と学習環境の回復を行うことを求めて、京都教育大学に申し入れをします。私たちが現在問題と考えているのは、以下のことです。
(1)京都教育大学は事実を解明し被害者を救済する責任を果たしていない。
大学は、女子学生の被害の申告を受けて調査を行いましたが、当事者の話が一部食い違うため強かんにあたるか明確な判断ができないと、「公然わいせつ事件」であったと結論しました。「調査はしたが話が食い違うので判断できない」というのは、セクハラ調査で大学がよく使う言い訳ですが、加害者側と被害者側の話が100%一致しないと判断できない、というのでは、調査はするだけ無駄です。そもそも、性暴力被害の問題では、被害者・加害者の主張が異なるのはよくあることで、とくに合意の有無について、被害者・加害者双方の主張を対等なものとしてみること自体、問題です。性暴力被害を扱う上では、そうした認識を当然もっているべきなのに、大学にはそれが欠けていたと思われます。大学に調査能力がないのなら、被害学生の同意を得て、捜査機関に事件をゆだね、事実を明らかにすることに大学として協力すべきです。
(2)大学は被害者を保護支援しつつ、警察に通報することも促すなどの措置を取るべき。
文部科学相は、「訴えがあったらいち早く警察に知らせるべき」と発言し、マスメディアでも同様の趣旨が述べられています。しかし、「大学が警察に通報しなかったこと」を、単純に非難することには、問題があります。性暴力被害者からの相談を受ける際の鉄則は、被害者の立場に立つことです。本人の意向を問うこともなく、即、警察に通報するなどは、決してしてはならないことです。言うまでもなく、それは、事件を表ざたにしない、ということでは決してありません。大学がすべきなのは、被害学生を心身ともに支えつつ、警察に通報することを含めて被害の回復のためにできることについて情報を与え、本人の意思を尊重しつつ刑事告発の行動を促すことだったはずです。
(3)大学の「教育的配慮」は、加害者処分を甘く、ということに終わっている。
京都教育大学は、教育的配慮で本件の対処をしたと主張していますが、加害学生たちは停学処分の間に、学童指導員のアルバイト等をしていました。これをみても、大学の措置は不十分きわまりないことが明らかです。加害学生への教育的配慮とは、このような卑劣な行為をなぜ起こしてしまったのかを反省させ、二度と繰り返さないよう教育することであるはずです。形式的に停学処分をしただけで、そのような措置を一切していないのなら、大学の言う教育的配慮とは、加害性をごまかし甘い処置を行うことでしかありません。また、この事件は、90名近くの体育会系学生たちの宴会で、周囲に学生の居る場で起こっています。逮捕された学生だけでなく、他の学生達にも、性暴力を容認する雰囲気があったのではないでしょうか。それは体育会にもともと蔓延しているものではないでしょうか。こうしたことを点検し、同様の問題が二度と起こらないようにすることが大学の果たすべき本当の教育的配慮です。
非常に残念なことですが、大学で性暴力が起こるのは珍しいことではありません。大学は、今回の事件を特別なことと受け止めるのではなく、そのようなことが起きやすい、大学、ひいては社会の問題をしっかりと見つめ、教育と指導にあたる必要があります。
事件報道後、インターネット上では、事件を歪曲し、被害者を貶めるような発言も目立っています。このような発言は、被害者をさらに傷つけ、周囲の学生たちにも悪影響を与えます。大学は、性暴力と人権侵害を許さない毅然とした態度を示し、被害学生の回復を支え、彼女が真に良好な教育環境でふたたび勉学に励めるよう、最大限のサポートをすることが何よりも望まれます。
(キャンパス・セクシュアル・ハラスメント全国ネットワーク関西ブロック)
*関西ブロックでは、「京都教育大事件から大学の性暴力問題を考える緊急集会」(仮題)を予定しています。詳細が決まり次第お知らせします。
「詳細はこちらをご覧ください。
http://wan.or.jp/modules/articles0/index.php?page=article&storyid=26
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