2009.11.24 Tue
「最近の痴漢判決は、無罪判決が目立つように思えるが実態はどうなっているのか?」という疑問から、ここ10年ほどの痴漢裁判の変遷を調べてみた。この特集では、本誌で掲載してきた全国15紙の新聞に報道された裁判から2000年1月~2009年10月までの痴漢に関する裁判事例と、記事による報道をまとめた。さらに、今年4月、強制わいせつの罪に問われた防衛医科大学教授を逆転無罪とした、最高裁の判決文を資料として加えた。
本誌の調べでは、上記期間の痴漢裁判は計67件。うち1審での有罪は50件(75%)、無罪は17件(25%)。日本の裁判での有罪率は99%というから、痴漢裁判での無罪率の高さがよく分かる。1審は無罪で、2審で有罪になったのは1件。逆に1審で有罪なのに2審で無罪の逆転判決は10件あった。さらに、1、2審の有罪を覆し、最高裁で無罪となったのが、今年4月の判決1件である。
都会の満員電車で通学や通勤する女性は、ほとんどといっていい位、痴漢の被害体験があるのではないだろうか? 身動きの取れない満員電車の中で行われる性犯罪に、これまでどれだけ多くの女性たちが泣き寝入りをしてきたことか。やっと許せないと声を上げる女性たちが出始めた。だが、彼女たちが受けた行為を警察に話すためにはセカンドレイプと同じ屈辱的な思いをせねばならず、それを乗り越えて訴える行為にはどれだけ勇気が必要なことか。
4月の最高裁の判決では、17歳の少女の発言と63歳の防衛医科大学教授の発言の信憑性が問われ、被害者の少女の側の供述に、「信用に疑いの余地がある」として逆転無罪判決が下された。5人の裁判官の意見が記載されたこの判決文は、さまざまなことを考えさせる。 性犯罪の根は深い。女性たちの声が裁判に反映されるまでには、どれだけの時間がかかるのだろうか?
(パド・ウィメンズ・オフィス『女性情報』編集長・内田ひろ子、11月号扉記事より)
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