2010.07.07 Wed
「なぜこんなに高齢女性が消費者被害に遭うのだろう?」、高齢者への詐欺事件が、ニュースにもならないほど日常茶飯になっている。自分たちの力で、みんなのネットワークで、高齢女性を消費者被害から守ろうと、7月3日(土)、高齢社会をよくする女性の会主催の集いが、故郷の家・京都で開かれた。講演者は、木間昭子さん(元独立行政法人国民生活センター調査室長)と、樋口恵子さん(高齢社会をよくする女性の会理事長)のお二人。
全国の消費生活センターに寄せられる相談事例は、年間、実に180万件! 木間昭子さんは、データを分析し、被害実態と、その背後にある業者の巧妙な仕組みを解きあかし、無条件解約に成功した現場の事例を紹介。実は、被害に遭う年代のピークは20歳代という。そして「判断能力に、やや問題のある高齢者」、とりわけ人口比で男性より多い70歳代、後期高齢女性の相談が、その次の山となる。歳をとり、心身の衰え、経済的・精神的不安、健康不安という弱みを突かれて、つい、だまされてしまう人たち。しかも被害に遭う認知症高齢者の大半は、男女を問わず、一人暮らしだという。 本人は「誰が来て、どのようにして、何を買ったのか」を理解していない。だから「誰が」「どのように」「何を」ということを明らかにすることから、現場スタッフの被害救済のスタートが始まる。以下は無条件解約に成功した事例。
訪問販売で、ふとんを契約(44万円)した認知症状のある70代女性。ケアマネージャーが「認知症により判断能力が不十分」と業者に伝えて解約。また健康食品(43万円)を買わされ、一部開封したが、「認知症を知りつつ商品の開封を誘導した」と指摘して解約。認知症がみられる一人暮らしの女性に7組ものふとんを販売。「過量販売」であるとして解約。また訪問販売で、効能効果をうたわれ、健康食品(25万円)を購入。一部飲んだが、病気を治せないのに、治ると告げた「不実告示」で解約を交渉中。
2000年の介護保険施行後、ホームヘルパー、ケアマネージャー、訪問看護師などの目を通して被害が明らかになる件数が増えたという。家の中に外の風が吹き込み、専門職の人たちのネットワークで被害を未然にくい止める。これも介護保険の効用の一つだ。
では、なぜ被害に遭うのか。コミュニケーションや、円満な人間関係を結ぶことが苦手な人、消費生活の経験・情報量の少なさ。そして地域の人々の無理解、無関心が、背景にある。悪徳業者が巧妙に手を変え、品を変え、やってくる執拗な勧誘から、高齢者や障害のある人々を守るために最も必要なことは? 木間さんは、専門性を備えたキーパーソンの存在が不可欠、現場には見事なキーパーソンがいるという。そのネットワークこそが強み。だが、一人暮らし認知症の人々を地域が見守ろうとする時、ネックとなる個人情報保護が立ちはだかることも、まま、あるという。
次に、樋口恵子さんの登場。いつものようにユーモアいっぱい、実践と理論が一致する話に、会場の参加者も、みんな大きく頷いて納得。「私も当事者です」「『それなら、被害の話をしてください』と頼まれて、今日は来ました」と。
介護保険の導入で、密室化した家の中に外からの目が入るようになり、顕在化してきた問題の一つに「被害に遭いやすい人々」の存在がある。65歳以上高齢者のうち認知症の人々は、推定で、2015年に11.7%(385万人)、2025年には14.4%(499万人)となる。高齢者のいる世帯の内訳は、高齢者一人22%と、高齢者夫婦二人世帯29.7%をあわせれば半数にのぼる。しかも老夫婦+未婚子18.4%が、3世代同居18.5%を上回るというのも、現代の縮図なのかな。
そして樋口さん自身の被害の一例。空き巣、デパートのカード抜き取り、電話による勧誘等々。樋口さんのことだから撃退トークも弁舌さわやかに、つい、自分のことを口走ってしまい、いらぬ情報を相手に与えて失敗することもあるとか。
被害防止は、1に情報、2にネットワーク。何より相談先の明確化、ぜひワンストップでの対応を。たらいまわしの相談窓口は高齢者には禁物だ。
「人生フィナーレの安全保障はまさに人権の確保。性差、障害の有無に加えて、年代としてのダイバーシティ(多様性)に対応した政策と、誰をも排除しないインクルージョン(包摂)に向かう地域づくりが大切」と結ばれた。
「人ごとではないなあ」と思いつつ、ふと「大阪のおばちゃん」は悪徳業者にとって、なかなか手ごわい相手というのを思い出した。私も「大阪のおばちゃん」を見習って、しっかり自衛して、気をつけようと思った。
カテゴリー:高齢社会をよくする女性の会・京都