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橋下大阪市長に「クレオ5館廃止案反対」の声を届けても、届かない・・・泰間妙子

2012.07.07 Sat

クレオ大阪(大阪市立男女共同参画センター)5館廃止案

橋下大阪市長に「クレオ5館廃止案反対」の声を届けても、届かない・・・

 6月19日、橋下大阪市長が誕生してから半年がたった。1期4年間で府市の事業統合、市政改革を果たすため人権、福祉、教育、文化事業を猛スピードで切り捨てようとしている。

大阪市は「市政改革プラン」の試案を4月5日に、素案を5月11日に発表しパブコメを実施、6月27日に最終案が発表された。7月6日から27日の市議会を経て予算とともに決定される。

クレオ大阪(男女共同参画センター)は5館。北部館(東淀川区/1993)、西部館(此花区/1994)、南部館(平野区/1996)、東部館(城東区/1998)、そして日本初の公立女性施設「大阪市立婦人会館」跡地に中央館(天王寺区/2001)。大阪市の概要は、24区、人口267万人、歳入3兆6千億円。クレオ大阪にかかる費用は5億8千万円。

★パブコメに28,399件の意見が集まった

 5月11日から29日の「市政改革プラン」素案へのパブコメには、大阪市で2002年度に制度が始まって以来、桁違いの28,399件の意見が殺到した。うちクレオに関する意見は2410件、3番目に多く、98%が反対意見。

予想以上に反響が大きかったせいか、締切前の24日の市長定例記者会見において「パブリックコメントは数が重要ではない。僕は市民260万人の代表。数だけで判断すれば本当に市民の多くが求めている声なのか見誤ってしまう。中身を慎重にみて判断したい」と。今までは事あるごとに「数だ」「民意だ」と行動の根拠にしてきた人の発言とは思えない。

すすめる会主催の素案に関する2回の勉強会では、パブコメには、クレオ大阪5館、男女共同参画センターの必要性を自分たちの声で訴えようと共有した。数、中身どちらから見ても「市民の多くが求めている声」以外の何ものでもないはずだ。

しかし、6月27日に発表された最終案では、「廃止・役割終了」に分類され、「5館廃止」に変更はなかった。パブコメに寄せられた意見は一切反映されず無視されたまま、「廃止・役割終了」の根拠も示されていない。

 

★「大阪の男女共同参画施策をすすめる会」

 試案では、1億円以上の事業のうち100を超える事業を廃止・削減するとしていた。地域社会における市民の活動拠点を根こそぎつぶすだけではなく、障がい者や子ども、高齢者など、困難を抱えた市民のための施策を大幅に後退させるものだ。廃止の対象になっているのは、クレオ5館ほかにも、無料敬老パス、障害者スポーツセンター、大阪人権博物館リバティ大阪の補助金、識字教室などが開かれている市民交流センター、困難な状況の子どもたちの居場所「子どもの家事業」…と、書ききれない。

とにかく黙ってはいられない、集まらなければという思いから「クレオ大阪5館廃止案に反対表明する」「男女共同参画施策の必要性を訴える」この2点を掲げ、ネット上で呼びかけたところ、4月29日、利用者、研究者、支援者などさまざまな立場の人が50人以上も集まった。

「問題を感じた人が集まり、男女共同参画を目指す理念にたった運動を自ら作り出す場であるセンターを破壊するのは暴力だ。自ら問題解決を図ろうとすることに対し、お金がかかるから必要ないという発想は相いれない」「売却して何が残るのか。失うものが大きすぎる」「被災地の支援に行くと、男女共同参画の視点がまったくないだけではなく、例えばDV防止法の保護命令が精神的な暴力でもとれるといった制度についても行き渡っていない。都市部のセンターには地方の男女共同参画の意識の底上げのために応援していく役割があり、これからその役割の重要性は増していく」「予算全体の中で、クレオを削減することでどれほどの効果があるのか疑問。むしろ、わずかな予算で市民のためになっているのが男女共同参画センターであることをもっと言いたい」などたくさんの意見が出た。

 クレオ大阪をつぶしてはならない、男女共同参画施策を後退させてはならないという思いを共有し、廃止案に反対する声明文を発表し賛同者を募る、反対署名を集めているグループと連携する、パブリックコメントにたくさんの意見を提出することなど運動方針を取り決め、「大阪の男女共同参画施策をすすめる会」の結成に至った。

5月1日深夜、立ちあげたばかりのブログに発表した声明文には、9日の締め切りだったにもかかわらず、571人の個人賛同、43団体の団体賛同(最終617人、50団体)が全国から集まった。10日、市政改革室に声明文と賛同人一同を届け思いを伝えた。が、担当者は「優先されるべきは予算削減」と答えるだけだった。

11日、「市政改革プラン ー新しい住民自治の実現に向けて」の素案が発表された。「大阪にふさわしい新しい自治の仕組みづくりをめざす」、「持続可能」「再構築」「身近な区役所」「みんなで支える地域を」などの文言が並べられていたが、クレオ5館廃止を含む計106事業の廃止・削減はほぼ試案通りだった。

★地方自治体が自らその存在意義を否定する行為に他ならない

試案、素案、最終案と段階を踏んでもクレオに関しては一環して「女性問題に関する相談への対応や情報提供は、地域により身近な場所で行うことが効果的である、また、事業内容についても、男女共同参画に寄与する事業に重点化し、効率化を図る」として、「5館とも廃止し、現在、実施している相談事業、情報提供事業及び啓発事業については、より区民に身近な区役所・区民センターで実施する」と検討した形跡のないまま、指定管理者の財団との契約が終わる2年後の廃止が掲げられている。

しかし、「相談や情報提供」は男女共同参画の視点をもった多機能なセンターで行われていることが重要なのだ。センターは、恒常的に女性の人権に配慮した、情報が発信され、講座や講演会が実施され、専門職員がいる。だからこそ、さまざまな困難や、ジェンダーの視点がなければ“取るに足りない”と一笑に付されるかもしれない悩みを抱えた女性たちは行くことができるのだ。

そして、相談や講座だけがエンパワメントにつながるわけではない。同じような立場にいる女性たちとの出会いや、活動をしている女性たちとの出会いは場を共有するからこそ生まれるものであり、むしろセンターの機能はそのためにあると言っても過言ではない。さまざまな選択肢が提供されていることが必要なのだ。その機能を果たすには、場所、建物は必要不可欠である。

また、DVや性暴力の被害者にとって、区役所や区民センターという身近な場所は、加害者と繋がる可能性のある危険な場所であり、個人が特定されやすくプライバシーが守られない可能性が高い。

繰り返しになるが、この改革プランの目的は大阪市の解体と予算削減である。クレオに関しても根拠を示すことなく、廃止により「4億7千万円の削減」としか書かれていない。「相談事業、情報提供事業及び啓発事業のみ継続する」としているが、これまでクレオで行なわれてきた事業はすべて大阪市男女共同参画推進条例、大阪市男女共同参画基本計画に基づき、男女共同参画に寄与するものである。クレオ5館廃止は大阪市の施策そのものの否定である。また国の男女共同参画社会基本法、第三次行動計画を無視することにもなる。

これほど女性の状況を認識していないプランが出てくること自体、男女共同参画施策が理解されていない、すすんでいない証拠ではないだろうか。

 そもそも地方自治体は「住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担う」(地方自治法第一条の二)ためにある。にもかかわらず、福祉増進のための施設を廃止し、総合的な施策を縮小するのは、地方自治体が自らその存在意義を否定する行為に他ならない。

 

★男女共同参画センターにある問題

規模や運営形態が異なるので一括りにはできないが、男女共同参画センターも他の組織と同様に問題はある。センターに男女共同参画施策を集約しゲットー化したことで全庁的な取り組みにならなかったのではないかという問題は今後も抱え続けるのだろう。

税金で運営されている以上、世の中の財政状況とも直結している。「男女共同参画センターの現状に関する調査」(内閣府/2010)によると、前年比 の2009年度の予算増減は、都道府県、政令指定都市、市区町村を合わせた結果では、「増えている」20.7%、「増減ない」27.8%、「減っている」47.4%(都道府県73.9%、政令指定都市52.9%)。減っている理由は施設の設置者の「財政事情の悪化」。大きな組織ほど予算減にあることがわかる。

また、女性の自立を謳う施設であるのに短時間勤務の女性職員比率が高い。直営、委託に関係なく正規職員と非正規職員の格差は非常に大きい。センターの根幹を担う仕事をしている低収入の非正規職員。格差は単に収入面だけに留まらず、当然、情報量などを含めた待遇すべてに及ぶ。また一方では「ディセントワーク」の資料が並ぶ横で、単純作業以外には求められず、寝た切り賃金のまま、将来の展望とはまったく無関係のスタッフがいるという現実がある。低収入・非正規雇用の問題は多くの働く女性共通の問題であるにもかかわらず、女性運動の中における非正規問題とは一線を引かれているようにも感じる。無償の活動を仕事にしたのだから、低収入は当然という視線があるのか。いまだに「食う困らない女の職業」という言われ方さえもする。

そのほかにも指定管理者の問題がある。任意の民間団体が指定管理者の場合、そもそも民間活用という名の経費削減が目的の制度なのだから、経済的に自立できているスタッフがどの程度いるのかは疑問だし、クレオを運営している大阪市女性協会のような財団でも指定管理契約は大抵3~5年の期限付きである。府が作った財団が「市」の施設の指定管理を、市が作った財団が「他市」の施設の指定管理を、生残りをかけて取りに行く状況はすでに始まっている。

結局、足元の“女性問題”は解決できずにいるのだ。

★維新の会以外は「クレオ大阪存続」に一致している大阪市会

人口267万人、3兆円を超える歳入のある大阪市の「大阪市会」は大阪維新の会、公明党、自民党、共産党、OSAKAみらい(民主党)の5会派86人の議員で構成されている。人口比でみると議員数はかなり少ない上に、既成政党に属さない、いわゆる市民派は皆無だ。

6月5日、それぞれの会派を回り、クレオ5館廃止の撤回を訴えた。温度差はあるものの、維新の会以外は「クレオ大阪存続」に関しては一致していた。共産党「5館でも少ない。みなさんは引き続き廃止反対の運動を」。公明党「クレオは自分たちこそがすすめてきた。パブコメに反対意見が集まるのはわかりきったこと、7月から始まる予算編成には間に合わず反映はされない」、自民党「会派では事業仕分けですでにクレオ1館のみ存続という結論を出している。が、基礎自治体が9個になるなら、自治体ごとに館が必要ということもできる」、OSAKAみらい「お金は考えないわけにはいかないが、残すようにいっていく」というのが主な意見だった。7月議会においてどのような発言をするのか、単なるリップサービスだったのかどうか、注目したい。

国際条約、基本法、行動計画、各自治体における計画、条例に基づいた施策の一環である以上、首長の考え方一つで男女共同参画センターをつぶしていいはずがない。橋下市長の勢いにのって、全国で男女共同参画センター廃止のドミノ倒しが始まらないとも限らない。クレオ大阪廃止は、日本の男女共同参画施策の危機に直結している。

2010年度のDV被害の認知件数3385件(警察庁)という数字に現れるように、男女共同参画社会の実現にはほど遠い状況の中、センターの存在意義は十分にある。

バックラッシュにより行政が自粛するという時代は終わり、行政の長によるバックラッシュが始まってしまったのだ。パブコメ、ロビーイング、署名など正攻法のすべてを無視する首長に、私たちはどんな有効な手段をもてるのか。独裁的な首長が圧倒的な支持をされているという現実の前に立ちすくんではいられないのだけれど。

 (「いこ☆るvol,32」掲載文を一部修正)

大阪の男女共同参画施策をすすめる会 泰間妙子

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カテゴリー:大阪の男女共同参画をすすめる会

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