隠れた最大の争点、ジェンダー政策/その中の「毒まんじゅう」を見極めよう
ジャーナリスト・和光大教員 竹信三恵子

今回の選挙では、原発や消費税が大きな争点とされています。でも、その陰で、政党間をくっきり分ける争点があります。それがジェンダー政策です。ジェン ダー政策についての政党アンケート結果は、女性の人権と選択を尊重する政策に賛意を表した政党と、ノーを言った政党とに、ある意味、二分されたからです。

たとえば、アンケート結果を円グラフにしたものを見ると、自民など、円に空白が多い政党があります。こうした党は、「女性の活用」やワークライフバランス には賛成なのですが、選択的夫婦別姓や性教育、性的マイノリティの人権にはノーを表明しています。ノーと言われた選択的夫婦別姓は、女性が自らの生きやす さに合わせて結婚前の姓を続けることを選べる制度です。また、性教育は、望まない出産などを避けて安心した生活を送れるための必須条件です。性的マイノリ ティの人権も、性の区分にかかわりなく人としての生存権を守る社会には必須のものです。言ってみれば、これらは女性の自己決定権や生存権、つまり、権利に かかわるテーマであり、空白の多い政党は、女性の権利には消極的だが、「女性の活用」など女性をお国のために利用することは推進、という姿勢が強いことを 意味しているといえそうです。

 しかし、女性が真に活躍するには、生存権の尊重を基盤に、女性自身が生きやすい、働きやすい条件へ向けて自己決定し、そうした仕組みを求めていくことが 不可欠です。そうでなければ、当事者が活躍のために必要とする条件を整えることが難しく、有効な政策にはならないからです。

自己決定権と「活用」を切り離し、自己決定は認めないとする政策では、女性を家庭内の無償の労働として「活用」するばかりで、生きやすい条件作りからは目 をそむけてきたこれまでの日本のあり方と変わりません。これでは、経済界が期待する「少子高齢化時代を補う女性労働力の活用」も、女性が働くことによる消 費の活性化と国内総生産の引き上げも、難しいでしょう。女性の自己決定権は、日本の経済問題の解決の基本とも言えるテーマなのです。

 これまで私たちは、一見、「女性に優しい政策」に、いくどもだまされてきました。その典型例が、第3号被保険者制度です。夫の扶養に入れば保険料はタダ にするという言葉に誘われて、多くの主婦パートが就労調整を自主的に行い、おかげでパートの賃金は上がらず、女性の経済力は低迷を続けたままです。そうし た政策が、働いても賃金が増えない社会をもたらし、デフレの泥沼も招きました。日本の戦後の女性政策には、このような、「おいしそうだが食べたらあたる毒 まんじゅう」が、たくさん仕込まれてきました。そんな「毒まんじゅう」で体をこわさないようにするために、今回のアンケートを生かしてほしいと思います。