2009.06.25 Thu
憲法施行から62年。『女性情報』でも毎年6月号では「憲法特集」を組んでいるが、今年ほど国民の生活と直結した記事が多かったことはないように思える。今年、憲法に関する社説や記事で特に目立ったのは25条である。「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」と、生存権の高い志をうたった憲法25条。だが、昨年末の「年越し派遣村」のニュースに象徴されるように、仕事を失い、住むところを失った人々は、憲法で約束されている生存権さえ脅かされている。
「世界第2位の国内総生産を誇る国で”貧困ライン”以下の所得しかない人が15%に及ぶ。先進国の中では米国に次いで高い」(中国新聞)というのが、今の日本の実情である。4月の失業率は5%に上り、非正規雇用の失職者数も昨年10月から今年6月迄で20万人に上るという。しかも、非正規労働者の約7割は女性で、年収200万円以下で暮らす人の約7割も女性であるというから、一般社会の中での格差と、男女格差という二重構造の格差社会の中で、一番底辺にいるのが女性ということになる。
衆議院議員選挙を控えて、支持率の下がった麻生政権下では改憲論議を前面に出すことに慎重な姿勢を見せている。だが一方で、ソマリア沖での海賊対策を名目にした海上自衛隊の派遣、元航空自衛隊制服組トップの田母神俊雄航空幕僚長の「日本の中国大陸侵略や朝鮮半島の植民地支配の正当化」発言、北朝鮮のミサイル発射を理由にした安倍元首相の「敵基地攻撃能力の保有」提唱など、戦争を正当化するような動きも進んでおり、私たち国民を不安にする。
来年5月には、国民投票法施行で制度上は改正が可能になる。憲法9条については、今年の世論調査でも「変えない方が良い」が64%と、「変える方が良い」26%(朝日新聞)を大きく上回っている。”平和と人間の尊厳を守る”憲法について真剣に考える時がきている。(『女性情報』6月号、扉記事より。6月号(6/23発行)の特集は「憲法を骨抜きにしてよいですか?」)
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