2009.07.17 Fri
「女の貧困」が見えなくされてきたのはなぜか? 派遣切りの男たちの出現で、ようやく見えてきたかに見える女の貧困。
7月11日(土)、つながる/ひろがる/ふぇみん 泊まってシンポジウム in あざみ野に参加した。シンポジストは6人。多彩な立場からの発言が相次いだ。 自由、フリーター、ニートなど本来の意味を奪われてきた言葉を、もう一度奪い返そうと雑誌『フリーターズフリー』を発行する有限責任事業組合フリーターズフリー組合員の栗田隆子さん。
男の多いホームレスの中にあって女であることの意味。お金にとらわれず、明るく生きていくそのままの状態が路上生活という、いちむらみさこさんは、ホームレス女性たちの手づくり布ナプキンブランド「ノラ」を立ち上げた。
夫のギャンブルにより離婚。低賃金で余裕のない暮らしだが、「子どもたちに貧困を背負わしてはいけない」と言う日本人シングルマザー。ケニア出身シングルマザーのZEEさんは、女であること外国籍であることの二重のプレッシャーから離婚。オーバーステイで収監された入管での1年。孤独の中で自らのとらわれから解放され、やがて同じ立場の女たちとつながっていく。元夫の家族から強制された度重なる中絶、病気を乗り超えたZEEさんの底抜けの明るさにホッとする思いがする。
摂食障害自助グループNABAの鶴田桃エさんは、お金にならない相談業務の日々に、支え、支えられ、生き延びることの大切さを思う。「自立とは依存することを否定するのではなく、たくさんの人に助けをもらって生きること」を、障害者運動から学んだと言う。
自らの苛酷なフリーター経験から抜け出し、「自立生活サポートセンターもやい」の扉を叩いて今はスタッフとなった富樫匡孝さん。8年の相談業務の中で若者たちの自傷、依存の増加、母子家庭、外国籍、日雇い等々、貧困に陥らざるをえない人々を受け止めるセーフティネットの不在と、それが議論にさえのぼらない施策の貧しさに怒る。その実態を明らかにしていくことが重要だと。
コメンテーターの屋嘉比ふみ子さん(ペイ・エクイティ・コンサルティング・オフィス(PECO)代表)は、女の貧困の歴史的・構造的仕組みを3点と指摘した。1985年、①男女雇用機会均等法が女の間接差別を合理化したこと。②今の派遣切りにつながる労働者派遣法は、そもそも女性労働政策であったこと。③年金3号被保険者新制度による主婦層のパート化の増大。景気調節弁としての女性労働・女の貧困を生み出した家父長制・性別役割分業に基づく家庭基盤充実政策はもとより、それを見て見ぬふりをしてきた男たちの労働運動の責任を厳しく問う。
コーディネーターの赤石千衣子さん(ふぇみん編集部)は「それぞれの生きづらさ、困難と貧困は表裏一体。しかもそれが性別役割分業構造と無縁ではないことがわかった。今日はたくさんのいい言葉があった」と参加者の気持ちを代弁してくれた。
言葉を探し、探し、語る言葉の一つひとつに共感する想像力を豊かに持ちたいと思う。そしてこの生きにくさを強要する社会経済構造に抗するために女たちは何をすべきか。
「自分を見つめ、心を自由にすることから初めて他の女たちとつながることができた。それがうれしい」とZEEさん。みんなに共通する、この不思議な明るさはどこから来るのか。きっとみんなが、つながる/ひろがる、語り合う場を持つことから自然に生まれてきたのだと思う。
見えなくされてきた「女の貧困」が、ようやく見えてきた。さあ、「これから」が、反撃の始まりだ。
(詳しくは『ふぇみん』8月5日号をごらんください。http://www.jca.apc.org/femin/
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