エッセイ

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女性差別撤廃委員会で、日本政府批判される    古久保さくら

2009.07.26 Sun

 2009年7月23日、「女性差別撤廃条約」の実施状況を審査する国連の女性差別撤廃委員会が、日本の現状についての審議を6年ぶりに行いました。この委員会での議論のようすが、各メディアに流れています。メディアによって論調に違いがあり、まさにメディア・リテラシーのよい教材になりそうです。「女性差別撤廃条約」は、1979年12月、第34回国連総会において採択され、1981年9月に発効しました。2004年3月26日現在の締約国数は177カ国。日本は1980年7月に署名、1985年6月に批准しました。締約国は、条約の実施状況について、条約を批准してから1年以内に第1次報告を、その後は少なくとも4年ごとに報告を提出することが求められています。この女性差別撤廃条約関連の用語解説は、以下のページで読むことができます。
http://www.gender.go.jp/main_contents/category/yougo.htm#T

 さて、問題の委員会のようすですが、24日お昼に流れたNHKニュースはこちらから視聴できます。
http://www3.nhk.or.jp/news/t10014469871000.html

 この動画を見ると、政府代表団の南野団長が、「国際的に見て、遅れていることは残念ながら否めません」と発言しています。団長自ら遅れを認めざるをえない状況とは、たとえば日本のジェンダー・エンパワーメント指数(GEM)が、近年、世界のなかで順位を下げる凋落傾向にあるのを見てもよくわかります。GEMは、女性が政治および経済活動に参加し、意思決定に参加できるかどうかを測る指数で、具体的には、国会議員に占める女性割合、専門職・技術職に占める女性割合、管理職に占める女性割合、男女の推定所得を用いて算出しています。国連開発計画(UNDP)「人間開発報告書」の2008年のデータを見れば、日本はHDI(人間開発指数)が179カ国中8位という順位にあるのに対し、GEMは、108カ国中58位という状態です。

「女性差別、日本の対策なお不十分 国連委が6年ぶり審議」@共同通信
http://www.47news.jp/CN/200907/CN2009072401000242.html
の記事によれば、国連の女性差別撤廃委員会の「各委員から「日本は条約に拘束力があると理解しているか」「具体的対策を欠くのでは」などと厳しい意見が相次いだ」とのこと。

 「女性差別解消で国内法不備=慰安婦問題でも日本批判-国連委」 @時事ドットコム
http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2009072400166
の記事には、「委員からは「条約が単なる宣言とみなされ、国内法に十分組み込まれていない」と批判的意見が相次ぎ、従軍慰安婦問題での謝罪や性暴力を描写したゲーム対策を求める声も上がった」とあります。

 「国連委:女性差別撤廃で日本の対応非難」@毎日jp
http://mainichi.jp/select/world/europe/news/20090724k0000e030054000c.html
の記事によれば、「日本は85年に女性差別撤廃条約を批准しているが、条約の効力を高めるため、被害を受けた個人や団体が国連の委員会に通報できる制度などを盛り込んだ「選択議定書」(99年に国連総会で採択、97カ国が批准済み)は批准しておらず、国際社会から批判が集まっている」とのこと。

 「「女性差別、変わらず」 国連委、日本に苦言」@asahi.com
http://www.asahi.com/international/update/0724/TKY200907240216.html
の記事には、「日本は前回、03年に審査対象となった。この際、一般職と総合職といった「コース別雇用管理」などの形を取った「間接差別」や、民法で規定されている夫婦同姓や結婚可能年齢の男女差、婚外子への差別的な扱いなどを改善するよう注文が付いていた。
 このため今回は、女性問題に取り組むNGOが45団体84人からなる代表団を国連本部に派遣。「前回の委員会勧告がほとんど実行されていない」と政府への圧力強化を求めた」とあり、女性たちの活躍も報道されています。
 この具体的な活動については活動レポートで随時報告される予定です。

 他にも、「女性差別対応、日本の遅れ批判…国連撤廃委」@YOMIURI ONLINEがあります。
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20090724-OYT1T00805.htm

 なお、女性差別撤廃委員会における論点は、以下のページにまとめられています。
「女性差別撤廃委員会が日本政府の対策遅れを批判、積極的な男女平等政策を求める」@アジア女性資料センター
http://ajwrc.org/jp/modules/bulletin/index.php?page=article&storyid=477

 また、今回の女性差別撤廃委員会における論点を詳しく知りたい方は、以下のページ(英語)が参考になります。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cedaw/cedaws44.htm

 南野団長の公式ステートメントの全文(英語)は以下のサイトで読めます。
http://www2.ohchr.org/english/bodies/cedaw/docs/statement/Japan_ceda44_23.07.09.pdf

カテゴリー:ちょっとしたニュース

タグ:女性差別撤廃条約 / 古久保さくら

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