2009.09.27 Sun
2002年10月03日 参議院決算委員会質疑より
[001/001] 154 – 参 – 決算委員会 – 閉9号
2002年10月03日
質問者、答弁者(役職はいずれも当時)
川橋幸子(参議院議員・民主党・新緑風会)
森山眞弓(法務大臣)
中山隆夫(最高裁判所事務総局総務局長)[b]川橋幸子君[/b] 批准するためには国内法の整備を検討しなければいけない、その検討には関係省庁と一緒に着手してくださるという、こういう大臣の御見解でいらっしゃいますね。是非検討をよろしくお願いいたします。
私の持ち時間は実はこれで終わり──そうですよね。同僚の神本議員の質問時間に食い込んで大変恐縮なんですが、あと是非一点だけ私は森山大臣が答弁席にいらっしゃるところでお伺いしたい問題があります。
国家と個人の関係というのは実はこれに始まったことではなくて、以前から、また違う条約でございますけれども、人権B規約ですとか女子差別撤廃条約の選択議定書とか個人通報制度というものが規定されている条約の批准に対して日本は大変後ろ向きであるということに対して、女性たちが何とか批准してほしいという、こういう声を上げているところでございます。
こちらの方の個人通報制度は個人が国連のしかるべき機関に通報することができると、こういう制度を規定するのが個人通報制度でございますけれども、人権B規約は一九七六年の発効で、既に百二か国が批准、百二か国です。それから、女子差別撤廃条約の方でございますと、この選択議定書は四十二か国が批准。こちらの発効はまあ割合近いといいますか、それでも一九九九年の発効でございますので、もう三年たつのでございます。
森山大臣、特にお願いしたいと申し上げましたのは、女子差別撤廃条約のときの森山大臣の活躍ぶりは私が非常に強く印象深く思っておるからでございます。女子差別撤廃条約のときも、男女雇用機会均等法という国内法ができない限り批准できない。あのぎりぎりのときに、八五年のケニアの会議でしたでしょうか、当時、外務政務次官でおいででいらっしゃいました大臣が行かれまして、それをプッシュするためにそこの演壇でスピーチされたことは、たしか、山が動く日来るでしょうか、与謝野晶子さんの詩を引かれて言っている。その数年後に選挙があったときに、非常に、言葉は悪いですけれども、マドンナ、私はこの言葉は適切じゃないと思いますが、分かりやすく言うとそういう選挙結果があって、そのときに土井たか子現社民党党首は山が動いたとおっしゃったんですけれども、実は、その山が動くをキーワードになさったのは森山大臣だったわけでございます。
当時も非常に政府の壁、厚かった、自民党の壁も厚かった。そういう中で批准にこぎ着けて、男女雇用機会均等法、まあ、ざる法と言われましたけれども、とにかくできまして、ついこの間、ようやく先進国並みという水準まで改正されたというところでございます。長い歴史があるわけでございます。
そこの女子差別撤廃条約の実効性を担保するのがこのプロトコルであるわけでございますが、この個人通報制度につきましては、長年、国内司法制度の独立性から問題があるので批准を検討していきたいと、もう十年以上続いていると思います、人権B規約を含めればですね。十年間、検討しています検討していますの答弁を聞いているのでございますけれども、一体十年間何を検討して、いつ検討が終わるのか、その検討事項をどうやって公表してくださらないのか、これ非常に素朴な疑問を持っております。是非、森山大臣からこの点についての御答弁を伺いたいと思います。国内司法制度の独立性から何が問題で何を検討しておられるのか、お伺いしたいと思います。
[b]国務大臣(森山眞弓君)[/b] おっしゃるとおり、女子差別撤廃条約だけではなくて、人権のB規約その他、個人通報制度と大いにかかわりのあるものがたくさんございまして、これらの条約の実施の効果的な担保を図るという趣旨からこの条約は注目すべきものであるというふうに考えておりますが、他方で、お言葉にもありましたように、司法権の独立ということは大変また別の意味で重要なことでございます。
個人が直接国連その他に通報をするというやり方、それはそれで一つのアピールの仕方としては私も理解できるんでございますけれども、しかもこれは法的な強制力はないのだからそういうことがあってもいいじゃないかというお気持ちも分からないではございませんが、特に日本の司法制度につきましては大変きちょうめんで厳正に物を考える傾向がございまして、仮に国連というような大きな影響力のあるものを背景にそのような個人通報制度が行われ、それが何らかの結論をその場で得るということになりますと、同時に行われているかもしれない法廷における裁判官の判断に何らかの影響を与えるのではないかということが具体的に心配されるわけでございまして、そのようなことがないようにどうすればできるかということを検討していると言えば言えるわけでございます。
非常にそこのところが御説明しにくいんですけれども、具体的に、個別具体的な事案についてこのような場合にはどうするか、このような場合にはどうするかというようなことを具体的に検討しているというのが現在の状況でございまして、いつ結論が出るとか、詳しく内容を細かく御説明するということが残念ながらここではできませんけれども、そのような状況でありまして、更に検討を続けていきたいというふうに思っております。
[b]川橋幸子君[/b] 検討のための更なる十年が要ると思うと気が遠くなるような感じがいたしますが。
これは去年の新聞記事でございますが、日弁連の女子差別選択議定書プロジェクトチーム座長、寺沢さんとおっしゃる方が投稿しておられます。そこの一文を御紹介いたしますと、日本が個人通報制度を定めた選択議定書を批准しない背景には最高裁判所の反対があると言われているという、専らこういう、最高裁が反対している、大変お偉い最高裁というところが我が国司法制度の独立のために反対しておられると、これは世俗言われていることでございます。女性たちは、そのように、ああ最高裁が言っているんじゃ行政も突破できないのかしらと半ばあきらめているところでございますが、今日は最高裁も審査対象に入っていらっしゃいますので、あえて伺わせていただきます。
最高裁は、この件について法務省から連絡を受けたり、あるいは最高裁において何か検討されたり、何か意見をお述べになったというようなことがあるのでしょうか。最高裁がここまで悪者にされているという状況を御存じでしょうか、伺います。
[b]最高裁判所長官代理者(中山隆夫君)[/b] お答え申し上げます。
選択議定書、今おっしゃいました幾つかの選択議定書の署名、批准につきましては、政府ないし国会の政策的な判断に基づいて行われるべき事柄であり、最高裁判所はこの問題について意見を述べるべき立場にはないものと考えております。この問題につき法務省から正式に意見を求められたことも、したがってございません。
今御紹介のありました寺沢弁護士の論考、そのようなものが載ったということは承知しておりますが、率直に言って、どのような根拠に基づいてというものかが理解できないところでありますし、最高裁判所が言うのはおかしいことでありますが、[b][color=FF0000]冤罪というふうに言ってもよろしいかと思っております。[/color][/b]
最高裁判所が正式に意見を述べたことはないというのは今述べたとおりでございます。
[b]川橋幸子君[/b] 冤罪であるなら、是非冤罪を晴らす自助努力をしていただけると有り難いと思うのでございますが、要するに、これは政府の立法政策上の問題であって、個別事件を裁く裁判所の問題ではないというお答えなんだろうと思います。それならば、そのように法務省の方で御検討をいただけないものかと思うわけでございます。
現在、司法制度改革が進んでおりまして、国民のための司法と言われているわけでございます。ちょっと余分なことかも分かりません。司法制度改革には過去に三つの山があったということを私は学びました。どういう時期かというと、明治維新、それと現在、中間にあったのが例の大正ロマンと言われた時期だったそうです。そのころの議論を見ると、非常に、裁判制度を国民のためにしよう、自分たちのための裁判制度にしようということが声高らかに論じられていたわけでございます。しかし、残念ながら、第二次大戦を迎えて、相変わらず裁判制度のための裁判、裁判官のための裁判制度、こういう状況に置かれていると、これが現状だと思います。
是非、現在の司法制度改革の中の一環として、国民のための司法として、こうした我が国に司法制度の独立性の問題なんというのを理由にして批准をためらってくる国は一国もないと聞いていますし、百二か国の批准国の中からそれが問題になったという事例が出たということも一回も聞いたことがございません。
是非、第二次小泉内閣の目玉といたしましてこの件の解決を法務大臣に御要望いたしまして、私の質問、大分同僚議員に迷惑を掛けましたけれども、終わらせていただきます。また引き続き残りの質問、大変たくさんのものをお願いいたしましたが、この決算委員会で後日また機会をいただければさせていただきたいと思います。
ありがとうございました。
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