女の本屋

views

2697

演劇評:『ヴァギナモノローグス』の御開帳      杵渕里果   

2009.09.30 Wed

 8月、『ヴァギナモノローグス』が俳優座にかかりました。
 キャッチコピーは〈それぞれのヴァギナのものがたり〉。ニューヨーク発のフェミニズム演劇です。初演1996年。

 ヴァギナがしゃべる、政治的に正しいことを。なんでいまさら。
 作者イヴ・エンスラーは1953年生まれ。更年期にさしかかり、友人が女性器を汚らわしく語ったことに違和感をおぼえ、このモノローグ採集を思いついたんですって。実際、離婚や出産の経験者、独身で70代の人、弁護士から転職した人の物語なので、モノローグから推定される平均年齢は50歳前後。 しかし演出家平松れい子ほか出演者、30代…。いまいち青くさい気が。
 けど、妥当よ。だって日本で2006年の上演って、東ちづる・野沢直子・内田春菊、3人呼んで、宮本亜門演出よ! オトコよオトコ。作者イブ・エンスラー、それでよかったのかしら。謎。

 今回ふしぎなのは、〈手話×朗読〉。手話? 一体なんなのでしょう。
 行ってみてわかりました。
 出演者、かつ主催のサインアートプロジェクト代表、手話パフォーマー大橋ひろえは、アメリカへダンス留学し、「性問題のカミングアウト」の芝居に感動したので「そのパワーを追求したくて、私は今回この作品を選んだ」そうです。

 同じ劇場配布リーフに、演出家平松れい子はこう書くの。
 「女らしさとはなにかを知るのに、自分に向うのがおっくうで、ネットで調べたものをうのみにし、外にでかける。そんな、のれんを手を使わずくぐるような情緒のない私が、このお芝居をどう演出できるのか」

 観るほうも不安になるわよねー。
 でもね、意外とよかったの。
 3人芝居を、手話女優、朗読の女優、計6人、2人組で各パートを演じたのだけど、手話があると日本語がきもちゆっくりめ、また手話のパントマイム的な要素が顔の表情をおおげさにして、えぐいモノローグが絵空ごとのように、ふんわりムードになったのね。

 きっと平松れい子は、「女らしさとはなにか」、フェミニンにきれいに仕上げることだと考えたのよ。で、『アンアン』セックス特集以降のエステティックなカント感覚がにじむキレイな上演になったんだと思うわ。
 
 舞台芸術のレビューマガジン・ワンダーランドに、長い論考をのせてもらってます。よければこちらも見てください。
 http://www.wonderlands.jp/index.php?itemid=1104&catid=3

——————————-
「ヴァギナモノローグス」についてのその他の情報です。

男性による批評
http://blog.so-net.ne.jp/haru_kangeki-sake/2006-06-30-2

平松れい子演出の The Vagina Monologues/穏やかである政治性
http://d.hatena.ne.jp/yanoz/20090818/p1

読売新聞 
観客の反応を楽しみにする(左から)東ちづる、野沢直子、内田春菊
http://transnews.exblog.jp/3291736/

「V.M~ヴァギナ・モノローグス~」東ちづる&内田春菊からのメッセージ[演劇]45秒目
http://mv-theatrix.eplus2.jp/article/42562778.html

ブログ:ホリプロ「ヴァギナ・モノローグス」 青山スパイラル
http://blog.so-net.ne.jp/haru_kangeki-sake/2006-06-30-2

(きねふち・りか 演劇ライター)

タグ:舞台 / 杵渕里果