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ママの得がたい経験    マダム・ルーズ

2009.10.22 Thu

 いまどき、学生運動で逮捕される息子をもつ母親って、本当に希少価値だと思う。
 差し入れを送ったり、弁護士さんに連絡したり、東京拘置所まで面会に行ったりして、得がたい経験をさせてもらっているわけだが、取調べの話を聞くのもまた、得がたい経験。 学生運動で逮捕されているわけなので、いわゆる「政治犯」(??)であり、「公安警察」ってのが取り調べることになる。某H大学の中で集会をしたのが「建造物侵入」にあたるとか、大学の外の公園で演説していたのが「威力業務妨害」にあたるとか、立ち入り禁止や処分者の名前の書いてある掲示物をはずしたのが「器物破損」になるとか。微罪だけど、とりあえず学生運動をさせないように逮捕しちゃう、みたいな感じ。

 まあ、分別のある大人としては、「相手(大学当局)が嫌がっているところに何も入らんでもええやん」とも思う部分もあるわけで、息子のやっていることに全面的に賛同しているわけじゃないんだけれど・・・。

 とりあえず、取調べの話。
 取調べに対して、学生運動で逮捕されたときの対応としての定石は、完全黙秘することになっている。らしい。すると、公安警察の皆さんは、あれこれ言って反応させようとする。らしい。たとえば。「お前がこんなことをしていると、家族はばらばらになっちゃうぞ」とか、「お母さんがかわいそうだとは思わないのか」とか。

 いや、たしかにお母さん=私はかわいそうなんです! とっても心配しているんです。冷暖房完備とはいえ、運動不足になっちゃうし、ストレスもあるだろうから、息子が将来なにかしらの病気にならないだろうかとか、心配することは満載なんです。

 耳元で罵倒し続けるという公安警察のやり方にも不安を覚えるし。鼓膜破けたらどうするのよ?? 密室状態で殴られたりしないんだろうか、とか。刑事ドラマでも暴力的に迫っているものねえ・・・。お母さんとしては、取調べはすべて映像にとっておいてほしいです! それが取り調べの暴力抑止力になると思う。それから、勝手に調書を作って暴力的に拇印を押させられたりしないだろうか、とか。あるいは、「蟹工船」も流行っていることだし、小林多喜二みたいに虐殺されたらどうしようとか。本当に本当に心配なんです。こんなに心配かけてかわいそうです。
 
 でも、私の心配の元は学生運動自体にあるんじゃなくて、公安の取調べへの不信にあるんですよ、公安刑事の皆さん。そこんとこ、間違えないでね。
「妹がいるんやなあ。お前がこんなことしていると妹は嫁にもいけないよ」、「ずっとお前に付きまとってやるからな。妹の結婚式にもついていくぞ」とかも言われたとか。

 公安警察の皆さんが妹の結婚の心配をするっていうのも、かなり変だよね。そもそも結婚しない人が増えているんだよ。2009年でも、「結婚できない」というのが脅し文句になるご時勢なのでしょうか? うわさの妹いわく、「公安の人たちってかわいそう。自分は結婚式で歓迎されない存在だって思っているんでしょ。」お祝いの席で、そこにいるだけで嫌われる存在として自覚している公安警察。確かにお気の毒なお仕事です・・・。

 公安警察の「暴言」はまだまだあります。息子と同じころに逮捕された女子学生に対しては、「売春婦!」「男をたぶらかしているんだろう」と言ったとか・・・。

 めったにいないとはいえ、学生運動で逮捕されて公安警察の取調べを受けた人たちの証言はよく似ているんですよね。暴力的で脅迫的だけど、それだけじゃなくって、女性差別的。

 「売春婦!」って、なんじゃそれ? どうして、学生運動している女子学生が「売春婦」なの?? 罵倒の言葉として使っているんだろうなあ・・・。でも、すごいボキャ貧じゃないだろうか。彼女のスピーチをちゃんと聴いたことがあるんだろうか? 彼女の主張と「売春婦」とどう関連しているんだろうか? よく分からないなあ。

 そもそも「売春婦」って罵倒のことばになるんだろうか? やりたくないのにさせられている売春女性は性奴隷的な被害者だろうから、そういう人のことを指すのであれば、罵倒のことばとしてはおかしい。

 やりたくてやっている売春女性に対してだって、罵倒する必要があるのかなあ? 職業差別ってものじゃない? 売春婦が罵倒語なら、性的サービスを買う人=買春夫(?)も罵倒される存在ってことになるよねえ。でも、息子は「買春夫」とは言われなかったという。

 ということは、たぶん、彼らはそのことばは女性が聞けば傷つくことばであろうと思っているんでしょうね。いや、その判断、すごーく女性差別的だって。もうちっと、ジェンダー論とか勉強した方がいいと思うよ、公安の皆さん。

タグ:ジェンダー / 学生運動