2009.11.19 Thu
国連の女性差別撤廃委員会が日本の対応に対して厳しい勧告を行ってから間もなく、新政権が誕生し、法相が「選択議定書」批准への前向きな発言をしました。その時は久しぶりに雲間から光が射し込んだような気がしたのですが、それもつかの間、またしても“元気がなくなる話”ではありませんか。行政刷新会議による事業仕分け作業で、国立女性教育会館が「予算縮減」と評価され、しかも縮減率は半額とか3分の1というような案が出されています。独立行政法人であること自体が厳しい状況なのに、さらに半減?!
身近なところでもここ数年、財政難のため、滋賀県立男女共同参画センターの土台が揺らぎ続けています。8月21日には、行政経営改革委員会が「現有施設の廃止・移転」(5年の猶予があるとはいえ)を提言したばかり。機能は存続ですが、設立当初に考えられた現在の立地には意味があり、それは今も変わらないどころか、地域間格差の是正のためにもいっそう意味があると思うのですが…。これだけでも充分気落ちする話でしたので、追い討ちをかけるような今回の仕分け結果は、とても納得できません。
県も国も、仕分けを担当した人は施設の目的・性格・歴史的背景を切り捨てて、ただ数字の中立性?を根拠にバッサリと判定を下したようです。私は常々、最近流行のこのような評価の仕方は、対象によっては致命的な後退につながると危惧してきました。「ヌエック」もそれに該当すると思っています。
WGの評価コメントを読むと、仕分け委員にとっては「女性教育」の重要性も、そのための中枢施設の意義も、ほとんど眼中になかったのでしょう。たった1時間の議論では、とも思いました。いわく「国民生活への波及効果、定量的に説明を」「受益者負担増へ」「運営はNPOへ」「女性教育の振興は自治体で行うべき」・・・。もう、何をかいわんやという感じです。
最近の自治体関係のニュースは、「財政難」一色と言ってよいほど。重要度ランクを落とされるのは文化・芸術分野ですが、同時に「男女共同参画」が入ってきているように思います。「推進計画」もある、「条例」もできた、で、行政の担当セクションは縮小し、でも自らの問題として関心を持つ市民はいっこうに増えないまま、次世代へのバトンタッチができていない。これが大方の現状ではないでしょうか。
「女性教育の振興は自治体で」は、もちろんですが、10年、20年で明確に答えが出るものではないと腰を据えて取り組もうとする時、必要なのは揺るがぬ土台と、多くの人に確かなエネルギーを放射し続ける拠点の存在です。
私自身が日常的にそこを利用するわけではなくても、先輩女性たちの長く険しい歴史から私たちが受け取ったものを次世代へとつなぎ、多様な人たちが共に学びあう場として、「ヌエック」の公的施設としての存在価値はいっそう重要になると思います。
地位向上の国際指標となるような場にいる女性の数は、思い切った制度改革によって増やすことは可能かもしれません。けれど、それだけではほんとうの進展とは言えない。「向上」は多くの女性に共有されるべきものであり、そのために誰にでも開かれている学習・教育の拠点が不可欠と考えます。
カテゴリー:ちょっとしたニュース / 男女共同参画
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