エッセイ

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【特集・装うことから考える・その3】おしゃれ?ファッション?~私たちは何を着るべきか~  森理恵

2009.12.24 Thu

①土曜の朝7時ごろ、駅に行く途中で、道端にやたらと乱雑に自転車がとめられているのに出くわした。買い物カゴとか幼児用シートなどがついた、いわゆる「ママチャリ」が多い。はて…? そうだった。近くの「ユニクロ」で、朝6時から定価千何百円の下着を600円で売り出すという話を昨夜家人がしていた。みんな6時前から並んだのか。②一ヶ月ほど前、丹後のちりめん屋の若旦那に出会った。着流しに羽織をばっちり決めたいい男。「日本人はプライドがなくなった」とおっしゃる。昔は安い服なんて馬鹿にして買わなかった、と。確かに最近は、お金のありそうな人に限って、自分が服をいかに安くゲットしたかを自慢していたりする。経済格差は広がっているのに、服の格差は縮まっているというか、混乱しているというか。服は着る人の社会的地位を表すものだと言われてきたが、そんな時代は終わったようだ。ユニクロのおかげ? 見た目だけでも平等なのは、いいことなのか、どうなのか。

③昨年の12月、「女工哀歌」という映画を見て、中国の衣料工場における労働問題について勉強するというイベントに参加した。そのとき販売ブースで勧められた本二冊。

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「あなたのTシャツはどこから来たのか?」と「放浪のデニム」。どちらも翻訳書で、グローバル時代の衣服が、原料から最終仕上げまで、いかにたくさんの国で、いかにたくさんの貿易規制をのりこえ、いかにたくさんの化学物質を使って、そしていかにたくさんの人々の、日本にいてはほとんど想像もつかない日々の生活から生み出されているかということを教えてくれる。繊維のグローバル化のおかげで近代化し軍事大国にのしあがった日本国の国籍を持ちながら、現在の状況にどう立ち向かうかを判断するのはむずかしい。

④田舎の親戚の家が火事にあった。必死で着物を取り出したと言う。笑うなかれ。いまどき着物に換金価値がないのは田舎も同じだが、着物の式服なしで田舎ライフは送れないし、持っている服の中で飛びぬけて高かったのが着物なのだ。

⑤それにしても現在、服は安すぎるのではないだろうか? 安ければいいのだろうか? これほど手作りで一点製作で、手間のかかる工業製品はちょっとないのでは、と思ってしまう。かつては繊維製品というのは貴重なもので、着回し、使い回しが原則、捨てたりするようなものではなかった。値段が安いせいで、ゴミにされる繊維製品のなんと多いことか。服がもう少し高ければ、途上国の女性たちの労働条件が上がる、なんて想像するのは馬鹿げているだろうか。

⑥で、今の私のとりあえずの選択。奇抜なデザインの高い服を少しだけ買って長く着る。みんなが奇抜な服を着たら、世の中もっとおもしろくなると思う。しかもその理由が「エコ」だったりすると、意外といけたりして(笑)。注:奇抜な服はいつ見ても奇抜なので、無難な服よりずっと、流行に関わりなく長く着られます。お試しください。あ、ウエストがゴムのものにすることだけはお忘れなく。








カテゴリー:ちょっとしたニュース

タグ:ファッション / ジェンダー / 森理恵