2010.01.07 Thu
昨年(2009年)10月26日、第173回国会において、鳩山由紀夫内閣総理大臣は、所信表明演説を行った。この模様は現在も「政府インターネットテレビ」で視聴することができるが(http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2833.html)、この演説のうち、ジェンダー平等(男女共同参画)にかかわる部分を抜粋しておこう。
そしてこの演説に対して、両院の本会議において質疑が行われているが、続いて、ジェンダー平等(男女共同参画)にかかわるものについて、答弁とともに掲げておこう。「男女共同参画」という語をもちいて行われた質疑は、参議院のみであったことも、記しておく。
第173回国会における鳩山内閣総理大臣所信表明演説
http://www.kantei.go.jp/jp/hatoyama/statement/200910/26syosin.html
2009年10月26日
(前略)
二 いのちを守り、国民生活を第一とした政治
(友愛政治の原点)
私もまた、この夏の選挙戦では、日本列島を北から南まで訪ね、多くの国民の皆さまの期待と悲痛な叫びを耳にしてきました。
青森県に遊説に参った際、大勢の方々と握手させていただいた中で、私の手を離そうとしない、一人のおばあさんがいらっしゃいました。息子さんが職に就けず、自らのいのちを断つしか途がなかった、その哀しみを、そのおばあさんは私に対して切々と訴えられたのです。毎年三万人以上の方々のいのちが、絶望の中で断たれているのに、私も含め、政治にはその実感が乏しかったのではないか。おばあさんのその手の感触。その眼の中の悲しみ。私には忘れることができませんし、断じて忘れてはならない。社会の中に自らのささやかな「居場所」すら見つけることができず、いのちを断つ人が後を絶たない、しかも政治も行政もそのことに全く鈍感になっている、そのことの異常を正し、支え合いという日本の伝統を現代にふさわしいかたちで立て直すことが、私の第一の任務です。
かつて、多くの政治家は、「政治は弱者のためにある」と断言してまいりました。大きな政府とか小さな政府とか申し上げるその前に、政治には弱い立場の人々、少数の人々の視点が尊重されなければならない。そのことだけは、私の友愛政治の原点として、ここに宣言させていただきます。今回の選挙の結果は、このような「もっとも大切なこと」をおろそかにし続けてきた政治と行政に対する痛烈な批判であり、私どもはその声に謙虚に耳を傾け、真摯に取り組まなければならないと、決意を新たにしております。
(国民のいのちと生活を守る政治)
本当の意味での「国民主権」の国づくりをするために必要なのは、まず、何よりも、人のいのちを大切にし、国民の生活を守る政治です。
かつて、高度経済成長の原動力となったのは、貧困から抜けだし、自らの生活や家族を守り、より安定した暮らしを実現したいという、国民の切実な思いでした。ところが、国民皆年金や国民皆保険の導入から約五十年が経った今、生活の安心、そして将来への安心が再び大きく揺らいでいます。これを早急に正さなければなりません。
年金については、今後二年間、「国家プロジェクト」として、年金記録問題について集中的な取組を行い、一日も早く国民の信頼を取り戻せるよう、最大限の努力を行ってまいります。そして、公平・透明で、かつ、将来にわたって安心できる新たな年金制度の創設に向けて、着実に取り組んでまいります。もとより、制度としての正確性を求めることは重要ですが、国民の生活様式の多様化に基づいた、柔軟性のある、ミスが起こってもそれを隠さずに改めていける、新しい時代の制度改革を目指します。
医療、介護についても必死に取り組みます。新型インフルエンザ対策について万全の準備と対応を尽くすことはもちろん、財政のみの視点から医療費や介護費をひたすら抑制してきたこれまでの方針を転換し、質の高い医療・介護サービスを効率的かつ安定的に供給できる体制づくりに着手します。優れた人材を確保するとともに、地域医療や、救急、産科、小児科などの医療提供体制を再建していかなければなりません。高齢者の方々を年齢で差別する後期高齢者医療制度については、廃止に向けて新たな制度の検討を進めてまいります。
子育てや教育は、もはや個人の問題ではなく、未来への投資として、社会全体が助け合い負担するという発想が必要です。人間らしい社会とは、本来、子どもやお年寄りなどの弱い立場の方々を社会全体で支え合うものであるはずです。子どもを産み育てることを経済的な理由であきらめることのない国、[color=red]子育てや介護のために仕事をあきらめなくてもよい国[/color]、そして、すべての意志ある人が質の高い教育を受けられる国を目指していこうではありませんか。このために、財源をきちんと確保しながら、子ども手当の創設、高校の実質無償化、奨学金の大幅な拡充などを進めていきたいと思っております。
さらに、生活保護の母子加算を年内に復活させるとともに、障害者自立支援法については早期の廃止に向け検討を進めます。また、[color=red]職場や子育てなど、あらゆる面での男女共同参画を進め、すべての人々が偏見から解放され、分け隔てなく参加できる社会[/color]、先住民族であるアイヌの方々の歴史や文化を尊重するなど、多文化が共生し、誰もが尊厳をもって、生き生きと暮らせる社会を実現することが、私の進める友愛政治の目標となります。
(後略)
2009年10月29日 衆議院本会議
○志位和夫君 私は、日本共産党を代表して、鳩山総理に質問します。(拍手)
(中略)
次に、来年度予算案の編成にかかわって質問いたします。
さきに発表された来年度予算案の概算要求は、九十五兆円を超える史上最大の規模となっています。もちろん、この中には国民要求にかなった内容も盛られています。
同時に、一体、財源は大丈夫なのかという大きな不安が国民の中で広がっています。来年度予算案がどうなるかはこれからの予算編成作業にかかっていますが、私は、現時点で根本的見直しを求めたい問題点を、三点に絞って提起するものです。
(中略)
第二は、財源を庶民増税に求めるべきではないということです。
子ども手当の拡充は当然ですが、その財源として扶養控除と配偶者控除の廃止を抱き合わせることに、私たちは、くみするわけにはいきません。
私たちのもとには、子供を持ちたくとも持てない御家庭、健康上の理由で働きに出たくとも出られない御家庭などから、立場の弱い、少数者を切り捨てる心ないやり方ではないかという、強い不安と批判が寄せられています。庶民の一部を犠牲にして一部に回すというやり方では、決して国民の理解を得られないのではないでしょうか。こうしたやり方では、子ども手当が給付された御家庭も心から喜べないのではないでしょうか。
さらに、人的控除の廃止は、生計費非課税という税制の民主主義の大原則を侵すという大問題がありますが、どうお考えでしょうか。
加えて、子育て支援というなら、手当の増額だけでなく、認可保育園の大幅拡充で待機児童をゼロにする、子育てと仕事が両立できる雇用のルールをつくるなど、総合的な支援策が必要であります。
以上についての総理の見解を求めます。
(後略)
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 志位委員長の御質問にお答えいたします。
(中略)
子ども手当の財源についての御質問でございます。
次代を担う子供たちのために、その一人一人の育ちを社会でしっかり応援していこうじゃないか、これが子ども手当を創設する意味でございます。
その際、所得税の控除の見直しにつきましては、政府税調を立ち上げたところでございまして、そこで本格的に検討を行って、年末に向けて結論を出します。今後、予算編成の過程を通じて、財源の確保方策を含めて、政府全体で制度の具体的な内容を決めてまいります。
また、少子化対策における人的控除の廃止についてもお尋ねがありました。
先般、政府税調を立ち上げて、そこで、支え合う社会の実現に必要な財源を確保し、我が国の構造変化に適応した税制を構築していく観点から、所得税の控除のあり方を根本から見直すなど、個人所得課税のあり方について検討する旨を諮問いたしたところでございまして、この所得税の控除の見直しについて、今、政府税調で真剣に検討が始まったところでございます。年末に向けて結論を得ることにいたしたいと考えております。
総合的な子育て支援策についての御質問でございます。
子育ては、未来への投資でございます。今申し上げましたように、社会全体がまさに支え合い、助け合って負担をするという発想が非常に大事だと思っております。
子供を産み育てることを経済的な理由であきらめるような御家庭がないようにしたい、また、子育てのために仕事をあきらめる、そんな御家庭がないようにしたい、こんな思いのもとで、財源をきちんと確保しながら施策を推進してまいりますが、子ども手当の創設に加えて、保育所の増設など、待機児童の解消に向けて努力をいたしますし、また、多様な保育サービスの量の確保もしてまいらなければなりません。仕事と子育ての両立のための支援もいたすなど、総合的な子育て支援策の充実に努めてまいることをお約束いたします。
(後略)
○重野安正君 私は、社会民主党・市民連合を代表して、鳩山総理の所信表明演説並びに新政権の基本政策についてお伺いいたします。(拍手)
(中略)
次に、少子化対策について伺います。
少子化対策担当である福島大臣に聞きますが、我が国の少子高齢化は政府が行っている将来人口の見通しより厳しく、喫緊の対応が迫られております。その中で、子ども手当への国民の期待は大きくなっています。
私は、子育て支援策には、現金給付とあわせて、親の就労を保障し、保育所、学童保育所、子育て施設の充実も欠かせないと考えますが、いかがでしょう。
また、保育所は、子供たちが安全、安心して生活ができるように国が最低基準を定めています。残念ながら、その水準は先進諸国中最低ランクです。この設置基準の権限を地方に移譲する方向との報道がありましたが、今でも先進国中最低の基準が一層低下するのではないかとの危惧、地域間の格差が生まれるのではないかという懸念が各方面から聞こえてまいります。
待機児童の問題を解決するためには、量とともに質の確保も必要です。この点について大臣の見解をお聞かせください。
鳩山総理は、所信表明演説で、新しい共同体のあり方だとして子育てを挙げられました。
私は、保育の現場がその一つの核になり得ると考えます。行政と密接に連絡をとり合いながら、子供の貧困予防、保護の機能を持つ地域の保育所が必要です。地域の保育所が中核となって家庭での子育ても支援していく、子育ての問題なら何でもワンストップで保育所に相談できる体制をつくっていくべきだと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
(後略)
○国務大臣(福島みずほ君) 保育所や学童クラブ等の充実についてお尋ねがありました。
経済的支援の充実から、子ども手当の創設、これは必要です。そしてまた、現物給付、保育所や学童クラブの充実、これも仕事と家庭の両立支援から大変大事です。総合的でバランスのとれた対策が不可欠だと考えています。
今後の子育て支援策の充実については、出産や保育サービスを含めた総合的なビジョンである子ども・子育て支援ビジョンを来年一月末までに作成いたします。保育サービスや学童クラブなどを中心とする新たな数値目標を提示し、子育てをしっかり支援していくということをこの内閣でやってまいります。
次に、保育所の最低基準の地方への権限移譲について御質問がありました。
地方分権の趣旨や基本的方向性については、それは理解をしております。また、保育所の待機児童の解消、これももちろん必要です。しかし、保護者や保育関係者の皆さんから、保育の質をどう保つのかという懸念の声もあります。子供の保育環境や保育サービスの質の確保は、未来の、本当に未来の子供たち、これはまさに重要なことです。
ですから、地方分権の推進という観点からのみ早急に結論を出すのではなく、保育所待機児童の解消、保育の質の確保、財源の確保、そして地方分権、この四つの項目についてしっかり検討を行い、知恵を絞ってまいります。
賃貸物件を活用した分園方式の活用や少人数の保育所の認可、保育ママの拡充、学校の空き教室の利用など、既存の社会資源の有効活用や多様な保育サービスを拡充するよう工夫をしてまいります。
保育所を活用した子育て支援の取り組みについてお尋ねがありました。
保育に関する悩みは、大変皆さん持っていらっしゃいます。子供を預けて働いていらっしゃる方も、そして家庭の中で子供を育てていらっしゃる方も保育所を利用して、もっと利用して、一時的にでも相談ができる、預けることができるように、これについては進めてまいります。
また、身近な地域において子育てに関する相談ができる環境を整えてまいります。そして、保育所を地域の社会資源として活用していく視点も重要であり、地域の保育所が子育てに関する中核部隊となるよう体制をしっかりつくってまいります。
この内閣が、子供そして子育てを応援する内閣と、しっかり責務を尽くし、後の時代から、あのときに子育て、本当に変わったよね、子育て支援が変わったのよねという政策をやってまいります。(拍手)
2009年10月30日 参議院本会議
○円より子君 民主党・新緑風会・国民新・日本の円より子です。二十六日の鳩山由紀夫総理の所信表明演説に対し、会派を代表して質問いたします。
私は今、本会議場のこの席に立ち、民主党が政権交代を実現し、与党議員となったことに深い感慨を覚えています。同時に、私たちが果たさなければならない役割を考えると、非常に重い責任を感じてもいます。
私が本院に議席を得たのは一九九三年七月のことでした。その直後に、当時私が所属していた日本新党の細川護熙代表を首班とした非自民の連立政権が誕生し、自民党一党支配の終えんと政権交代の可能性を示すことができたのです。
しかし、非自民政権は短命に終わり、その後の自民党が中心となった政権は、国民の政治不信を強めただけでした。以来、雌伏十五年を経たのです。鳩山総理にとっても、同じく長い長い政権交代までの道のりだったと思います。
私は、三十歳を過ぎたころから、物書きをなりわいとしながら、離婚に悩む人たちや母子家庭を支援するボランティア活動を続けてまいりました。そして、三万人近い人々の話を聞き、社会の安定した経済的基盤、安定した雇用と住まいがどれほど個々の家族にとって重要かを痛感いたしました。また、離婚して再就職した女性たちの中には、どんなに働いても正社員でないため低収入で、ふろのないアパートにしか住めず、子供たちを高校に進学させられない人もたくさんいました。
私は、女性が出産後も働き続けられる社会、年齢制限で再就職を阻まれない社会、子供たちの世代に貧困を連鎖させない社会をつくりたいと強く思ったものでした。そして、私は、経済成長ばかりを追求し、人々に家族や地域での生活を犠牲にさせてきた政治の在り方にずっと疑問を持ち続けてきました。
私が日本新党の結党に参加し、政治の世界に入ったのは、人々が幸福を感じられる社会を実現したいと思ったからでした。しかし、この十五年、所得格差ばかりか教育格差、そして健康格差も広がって、母子家庭の貧困率は五九%にも達しています。
自公政権が撤廃した生活保護世帯の母子加算は、鳩山政権でようやく復活することになりました。しかし、実は母子家庭の母の八割は働いているのです。働いているにもかかわらず、生活保護以下の収入しか得られていない人がその八〇%に達しています。第一子の出産後、退職をする女性は今でも七割に上り、無年金や低年金の貧困にあえぐ高齢女性も増え続けています。男女を問わず、非正規社員、ワーキングプアの増加は言わずもがなです。
しかし今、この国には鳩山政権が誕生したのです。政権交代によって政治が鮮やかに変化することをこの一か月半国民の皆様は目の当たりにしておられます。官僚に依存した政治を断ち切るため、百二十三年間続いてきた事務次官会議は廃止され、政策の決定は内閣に一元されました。税金の無駄遣いを徹底的に洗い出し、補正予算を三兆円近く削減しました。官僚に頼らず、大臣、副大臣、政務官の政務三役を軸にして来年度の予算編成作業も始まりました。かつての自民党政治では見られなかったシーンが続いております。幸い、鳩山内閣への支持率も発足以来七〇%台の高さを維持しておりますが、これは、何よりも政治が変わることへの国民の期待の表れではないでしょうか。
こうした国民の熱い支持にこたえるべく、鳩山総理は初めての所信を力強く表明されました。持論である友愛の政治哲学をベースにされ、命と生活を守る政治を力説されたことに私は感動しております。
そこで、まず総理にお尋ねいたします。
(中略)
貧困についても伺います。
先ごろ長妻厚生労働大臣が初めて発表なさった相対的貧困率の数字に衝撃を受けた方も多いでしょう。これは、全国民の中で生活に苦しむ人の割合を相対的に示したものです。それによると、二〇〇七年の貧困率は一五・七%でした。先ほど話したように、母子家庭の貧困率は五九%です。
厚労省はこれまで相対的貧困率を公表していなかったのですが、我が国の貧困率が先進国では最悪のレベルであることが政権交代によってようやく公にされました。
貧困増大の背景には、非正規労働者の増加などによる格差の拡大があるのは否定できません。自民党政権による累次にわたる場当たり的な景気対策が古い産業構造を温存し、競争力を失った産業の雇用が海外に流出する一方で、新たな産業を創出できず、我が国経済の活力を取り戻すことができずにいるのが現状です。
抜本的な雇用対策など充実したセーフティーネットの整備を欠いたまま市場万能主義、効率至上主義を推し進めたことは、安定した雇用を破壊し、貧困の世代間連鎖を引き起こしました。その結果、多くの国民が、私たちの友人や家族が、子供たちが、最低限の生活水準も維持できず貧困に苦しんでいるのです。そして、これまでの自民党を中心とした政治は、そうした苦しい状況にある国民を置き去りにしてきたのです。
国民が安心して暮らせる人間のための経済を唱えておられる鳩山総理は、日本の貧困率をどう見ておられるのか、伺います。
自民党から民主党への政権交代、特に選挙による政権交代は、実に一九四七年以来、六十二年ぶりの歴史的な出来事でした。世界を見渡して言えるのは、今、私たちは大きな時代の転換点にいるということです。もはやこれまでの経済や社会のシステムを維持し続けることは不可能になりつつあります。では、どのようにこの状態を打開していけばいいのでしょうか。
鳩山総理は、今回の政権交代を無血の平成維新と表現し、国の形の変革への試みは今なら間に合うと説いておられます。同じ考えを持つ私は、ヒューマン・ニューディール政策をこれまで提唱してまいりました。これは、個々の人たちのライフスタイルを重視し、人間中心に経済や社会の在り方を考える政策です。
具体的には、既存の就業形態を大幅に変えて在宅就業システムを社会に導入することで、省エネで環境に優しい人間中心型のライフスタイルをつくります。次いで、官による非効率な公共サービスのみに依存せず、民間のNPOにも公益を担ってもらうために、NPOに対し大胆な寄附金控除を行います。さらに、地域コミュニティーやインターネット上のバーチャルコミュニティーなど、共同体の活性化を支援するのです。
公共投資についても、都市部の集合住宅に老人介護施設や保育園を併設して、職住近接と世代を超えた共生が可能な住環境を実現したり、自転車専用道や低床の路面電車など、どのような世代の人たちでも安全で快適に移動できる交通機関、そして環境に配慮した都市空間をつくるためなら、私は公共投資にも予算を振り向けることが必要ではないかと思います。
実は私は既にこの六年間、NPOを通じて、母子家庭の母親千人近くが参加するITを使った在宅就労支援を行っております。こうした時間と場所にとらわれない働き方は、母子家庭のみならず、より人間的なライフスタイルを求めるすべての人たちが利用することができるのです。そして、在宅就業システムを社会に導入することで、省エネで環境に優しい人間中心型のライフスタイルが実現します。
こうした考え方は、総理の示された国の形の変革への試みにも共通すると思います。日本は今、高度経済成長時代が終えんし、額に汗して働けば豊かになると信じられた「三丁目の夕日」の時代の神話と自信を失っているとも言われます。しかし、人間中心型にライフスタイルを変えることで、日本はもう一度活力と自信を取り戻すことができるのではないでしょうか。
総理は、緊急雇用対策本部を設置し、雇用対策を進めておられますが、このヒューマン・ニューディール政策による在宅就業システムも雇用の確保に資することになると思います。在宅就業支援並びにNPOへの税制面での支援について、総理のお考えをお聞かせください。
雇用対策については、緊急雇用対策本部の本部長を代行される菅副総理にも今後の方針をお伺いいたします。
活力と自信の喪失は将来への不安を生み、少子化につながっています。我が国の人口は、二〇五〇年には現在の約七割の九千万人程度になるという予測もあります。人口が減って繁栄した国はありません。古代ギリシャのアリストファネスに、戦いに明け暮れている男たちに対して女たちが反乱を起こす「女の平和」という作品がございますが、今の少子化は、これまでの政治が女性や生活者の視点を無視したことに対する女たちの反乱だと多くの女性たちは思っております。
老若男女のバランスが取れた活力ある社会を維持するためにも、子供を望む人が将来への不安を持たずに子供を安心して産み育てできる社会をつくるためにも、鳩山政権は、子ども手当、そして高校の授業料無償化等、子供を社会で育てるという画期的な政策を掲げておられますが、それにプラスして、生活者の視点に立ったヒューマン・ニューディール政策を役立ててほしいと考えますが、いかがでしょうか。少子化問題に対する総理の御見解を伺います。
次に、女性を取り巻く日本の状況について伺います。
衆議院ではさきの総選挙で五十四名の女性議員が当選し、その割合がようやく一割を超えました。しかし、国連開発計画が発表している女性の政治参画や経済界での活躍を国際比較した指数では、日本は百九か国中五十七位、同様に世界経済フォーラムが男女間の格差をランク付けした指数では、日本は百三十四か国中七十五位で、多くの開発途上国に負けております。
世界経済フォーラムがこうした指数を算出しているのは、女性の能力を活用することが経済活動において不可欠であるという問題意識があるからです。女性が女性であり、母親であるということだけで政治や経済活動に参加できないという状況は改善する必要があります。政治や経済活動における女性の能力活用について、総理の御見解を伺います。
(後略)
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 円議員からの御質問にお答えをいたします。
円議員から、御自身の経験に基づきました様々な御提言を賜りました。新しい政権の中で生かし切ってまいりたい、そのようにまず申し上げておきます。
(中略)
また、日本の貧困率に対する見解いかにという御質問がございました。
これは先ほどもお答え申し上げましたけれども、先般、厚生労働省において初めて貧困率というものを公表をいたしました。余りうれしくない数字というものが出てまいったわけでありまして、OECDの中で高い、貧困率が高いというのは決してうれしい話ではありませんが、高いグループの中に属しているのは事実でございます。
この貧困率をいかにして低くさせるか。数字というものよりも国民の皆様方の暮らしというものをどのようにしてしっかりとつくり上げていくか。お困りの方々に対して、例えば住居政策などを充実をさせていただくことなどによって、仕事がない方にも十分にお暮らしがいただけるような、そんな日本にしてまいりたい。
かつて私も、北アイルランドに参ったときにその失業率が三三%と聞いてびっくりいたしましたが、皆さん立派な住宅に住んでおられました。まず、住宅政策から進めるんだという話でございました。行き過ぎというものも様々問題はあろうかとも思いますが、ある意味で、しかし最低限の暮らしというものをつくり出していくために、保障するための住宅政策というものはもっと拡充していかなければならないと考えております。
私どもは、そのような意味で、国民の命と生活を守るために、雇用対策あるいは家計を直接支援するような政策の推進など、貧困問題にも積極的に取り組んでまいることをお約束を申し上げます。
[color=red]住宅就労支援とNPOへの税制面での支援についての御質問がございました。
私たちは、まさに先ほどからお話がございましたように、人と人とを支え合う社会をつくり上げてまいりたい、そして、お互いに役に立っているね、お互いにお互いを幸せに導いていけるような、そんな社会にしていくための新しい公共という概念の下で頑張っていきたいと思います。
もう既に、在宅就業については様々、仕事と生活の調和の実現を目指した働き方の一つとして、政府としてその普及を推進しているところでございますが、実際に在宅就労支援のことで一生懸命御努力されて携わってこられた長年の円議員の様々なお考えを是非参考にさせていただきたいと思っております。
NPOに関して申し上げれば、新しい公共の当然ある意味での中心的な担い手だと、そのように考えております。したがいまして、NPOの公益性とのバランスを当然考える必要はあろうかと思いますが、認定NPOの寄附税制、これはまだ貧弱なものだという認識は私も感じておりまして、これをもっと積極的に拡充していく、こういう税制面での支援を私どもとして実現してまいりたいと思います。
子供を産み育てやすい社会についての質問でございましたが、円議員のおっしゃるヒューマン・ニューディールの考え方は、私どもが目指している国民の命と暮らしを大切にする、まさにそういう政治のど真ん中のお考えだと、そのように思っておりまして、是非ヒューマン・ニューディールの様々な政策を役立たせていただきたいと考えております。
こういった観点から、国民の皆さん方が子供を産み育てることを様々な理由であきらめてしまうようなことがないような社会にしていくために、私どもは子ども手当の創設を考えてまいりたいと思っております。少子化という問題が、私は、日本にこれから、もう既に生まれている大変、いや、一番大きな問題だと、解決をさせていかなければならないテーマだと思っておりまして、その一つがやはり家計の支援という意味で財政的な支援の子ども手当でありますが、それだけにとどまらない様々な手当ても施してまいらなければならない、そのように感じているところでございます。
女性の能力活用についての御質問でございましたが、あらゆる面におきまして男女共同参画社会というものの実現に向けて頑張ってまいらなければなりません。それがある意味で私の進めたい友愛政治だと、そのようにも感じておるわけでございます。
この目標の早期達成のために、ワーク・ライフ・バランスという問題、あるいは女性の能力開発に対する様々な支援、そして、しばしばありますトップの意識改革というものも大変大事だと思っておりますが、是非、今お話がございましたように、今回の選挙で衆議院は五十四名女性議員がおられます。参議院も四十二名おられます。合わせて九十六名、百名になんなんとする女性国会議員がおられるわけでございまして、これからの日本を支えていくのは是非女性議員だと、そのように御認識をいただいて、是非、皆様方の御活躍を大いに期待を申し上げたいと思いますし、女性の視点から立った様々な施策をつくり出していきたい、そのように感じているところでございます。[/color]
(後略)
○近藤正道君 社民党・護憲連合の近藤正道です。会派を代表して、鳩山政権の基本政策について質問をいたします。
所信表明の中で総理は、人間のための経済への転換を提唱されました。市場経済の中にあって、弱者への配慮、セーフティーネット、共生思想に貫かれ、競争至上主義の対極と私は理解をいたしました。総選挙で私たちは、競争至上主義、小泉構造改革からの決別を訴えてまいりました。
改めて、総理の掲げる人間のための経済がどのようなものか、先ほど温かい資本主義という話がございましたけれども、人々の暮らしの点から見てどういうものなのか、分かりやすく説明をいただきたいと思います。
国民生活は豊かになるのでしょうか。競争至上主義は格差、貧困の拡大をもたらしました。厚労省の調査によれば、〇七年の相対的貧困率は一五・七%、国民の七人に一人が貧困状態です。OECD加盟国中最悪レベルであって、特に十八歳未満の子供の貧困率は深刻であります。
総理、旧政権の負の遺産、格差、貧困の是正にどのように取り組んでいかれますか。
福島大臣に伺います。
総理は、所信において、失業した息子さんを自殺で失ったお母さんの悲しみを紹介されました。九八年以来十年以上、一日百人近く、毎年三万人を超える人たちが自殺に追いやられております。命と生活を守る政治の中心課題として、自殺防止に向けてどのような方策を取っていくお考えでしょうか。
雇用問題について質問をいたします。
年末を控え、雇用情勢は一段と厳しさを増しております。社民党は、雇用の維持とセーフティーネットの強化、失業者に対する就職あっせんと職業訓練、住宅と生活支援、雇用創出などについて政府の取組の強化を求めてまいりました。
今回、政府の緊急雇用対策が示され、ハローワークを拠点としたワンストップサービスを主要都市で特定の日に開設することになりました。シェルターの確保についても取り組むことになりました。いまだ十分とは言えませんが、縦割りの弊害を乗り越え、広報を徹底し、利用者の立場に立って、一つでも多くのハローワークで、たくさんの時間、実効ある、愛のあるワンストップサービスが実施されるように強く要請をいたします。
派遣村は、雇用対策の誤りがもたらした政治災害であります。年末年始、再び派遣村が必要となるような事態は絶対に招かない、国民の暮らしを全力で支えるという総理の強い決意とメッセージが必要と考えますが、いかがでしょうか。
昨夜、東京日比谷野音で、労働者派遣法の抜本改正を求める大集会がありました。会場は、使い捨ては許さない、貧困と差別の温床、派遣法の抜本改正を直ちに行えの声であふれたわけであります。政治の責任が問われております。
現在、日雇い派遣の禁止、登録型派遣と製造業派遣の原則禁止、違法派遣の直接雇用みなし規定などを盛り込んだ改正案が労政審に諮問されております。三党合意で確認された改正案の内容を堅持し、後退を許さない、この派遣法の抜本改正案を次の通常国会で必ず成立させる、そういう総理の断固とした決意をお聞かせください。
格差、貧困に歯止めを掛けるために三党合意に盛り込まれた男女、正規、非正規の均等待遇の実現が極めて重要であります。均等待遇の実現に向けた検討のスケジュール、道筋を明らかにしていただきたいと存じます。
地域医療体制の再建については、この国会に提出が予定されております地域医療機構法案で社会保険病院などの存続が図られることになりますが、自治体病院、国立病院も人材難と経営難で大変な苦境に立たされております。国民の命のとりで、地域の生活基盤としてこれらの病院の存続も不可欠と考えますが、総理のお考えをお聞かせください。
また、命を大切にする鳩山内閣においてこそ、患者の皆さんの悲願である肝炎支援策の基本法を早期に制定すべきと考えますが、いかがでしょうか。
福島大臣にまたお伺いいたします。
母子、父子、一人親家庭の貧困、あるいは女性の貧困の解消は緊急の課題であります。また、国連女性差別撤廃委員会は、本年八月、女性差別解消に向けた日本政府の取組の遅れを厳しく指摘、勧告をいたしました。現在、政府は第三次男女共同参画基本計画を策定中とのことでありますが、この計画に、女性の貧困撲滅の問題、あるいは国連の勧告をどう反映させていくのか、お聞かせをいただきたいと存じます。
(後略)
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 近藤議員の御質問にお答えいたします。
国民の暮らしの豊かさに力点を置いた人間のための経済への転換の内容についてのお尋ねでございました。
一言で申し上げれば、経済のために人が犠牲になる、こういうような社会構造ではなくて、むしろ人の命、尊さというものをとことん大事にする新しい社会をつくり出していきたいと、その延長線上に経済が見えてくるということであろうと思います。連立政権は、したがいまして、家計に対する支援を通じて国民の可処分所得を増やして消費の拡大につなげることをそういった経済財政運営において最も重視をしてまいりたいと考えております。
また、年金、医療、介護、こういったものを再建していかなければなりませんし、頑張っておられる中小企業に大いに支援をする、さらには農業、林業、漁業、こういった一次産業にも再生の力を与える、こういったことが大変大事だと。さらには環境を中心とした新産業を育成をする、そのことによって内需主導型の新たな産業構造への転換を政府が後押しをしていきたい、このように考えておりまして、新たな雇用の創出と安定した経済成長を実現する社会を目指してまいります。
格差、貧困の是正についての御質問がございました。
先般、我が国の抱える貧困の問題を直視するために貧困率というものを発表したところでございます。数値目標というものを示すことも一つの考え方だとは思っておりますが、まずは新政権として、弱い立場の方々の視点というものを尊重しながら、国民の命と暮らしを守るための雇用対策、そして家計への直接支援の政策、こういったものの推進を図って貧困問題などにも真摯に取り組んでまいりたいと考えております。
ワンストップサービスの提供についてのお尋ねがございました。
ワンストップサービスについては、十月二十三日に決定をいたしました緊急雇用対策の中で支援体制の強化を盛り込み、十一月下旬に東京、大阪、そして愛知などにおいてワンストップサービスデーを試行的に実施することにしております。この試行実験を行って、その結果を踏まえながら、定期開催あるいは年末年始の開催をすることを検討していきたいと思っております。
労働者派遣法の改正についての御質問でございました。
これは、先般も申し上げましたが、三党連立合意の中にしっかりと盛り込まれておりまして、労働者派遣法の具体的な改正内容については、その三党連立合意を踏まえて通常国会へ法案提出を目指していきたい。現在、厚生労働省の労働政策審議会で検討中でございます。
[color=red]均等待遇の実現についての御質問がございました。
新政権は弱い立場の方々の視点を尊重する、そして国民の命と暮らしを守っていく所存でございまして、この均等待遇に関して申し上げれば、性別を理由とする差別的な取扱いを禁止する男女雇用機会均等法、さらには男女同一賃金の原則を定めた労働基準法、均衡の取れた待遇の確保を求める改正パートタイム労働法、こういったものの着実な施行によって公正な待遇の確保を推進してまいります。
有期雇用で働いておられる方々につきましては、待遇の均衡も含めて、現在厚生労働省の研究会で検討しているさなかでございます。平成二十二年の夏ごろまでに報告書を取りまとめて、その成果を労働政策審議会における審議につなげて、必要となる施策を実施していくことといたしております。[/color]
(後略)
○国務大臣(福島みずほ君) 自殺対策についてお尋ねがありました。
自殺者は、平成十年以降、十一年連続して三万人を超える高い水準で推移しておりまして、誠に痛ましい事態です。自殺対策担当大臣として、関係省庁、地方公共団体及び民間団体等とも連携しながら、総合的な対策に全力で取り組みます。とりわけ、経済や雇用の厳しい情勢の中で、年末及び年度末に向けての緊急対策として、失業者の方々が集まるハローワークにおいて心の健康相談や生活支援相談等の生きる支援を総合的に実施してまいります。そのようにして、当事者の立場に立って、命を大切にする政治の実現を総合的に全力で実施してまいります。
[color=red]次に、第三次男女共同参画基本計画の策定についてお尋ねがありました。
本年八月、女性差別撤廃委員会の最終見解において多くの課題が指摘をされました。女性の貧困については、OECDが昨年公表した調査によると、母子家庭など我が国の一人親世帯の貧困率が五九%と、OECD三十か国中で最も高い水準、ワーストになっています。また、内閣府調査では、女性の貧困率はほとんどの年齢層で男性よりも高くなっています。
現在、男女共同参画会議の専門調査会において、生活上の困難を抱える男女について、その実態、背景、課題などについて調査を行っています。今後、女性の就業継続や再就職の支援、セーフティーネットの再構築、暴力被害者への支援など、問題解決のための提言をまとめる予定です。
第三次男女共同参画基本計画の策定に当たっては、第一に、女性差別撤廃委員会の最終見解の内容を十分に検討し、その結果を反映してまいります。第二に、生活困難を抱える男女についての提言などを踏まえ、女性、男性、子供の貧困など生活上の困難の問題もしっかり対応してまいります。(拍手)[/color]
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