エッセイ

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<京暮らしつれづれ 1>京都のお正月    中西豊子

2010.01.25 Mon

 お正月が来たと思ったら早くも小正月(15日)ですね。この日は小豆粥を炊いて祝う日です。実は私のパソコンでコショウガツと打ってみたら、「胡椒月」としか変換ができないのです。ということは「小正月」すら、もう死語なのか?!とちょっとびっくり。

 成人式も15日ではなくなって、何だか寂しい気がします。お正月の伝統行事も一般家庭から急速に消えようとしているようです。私の家でも20年前はまだ三が日の間は、塗のお膳を出して祝っていましたが(写真)、最近は何もかも随分簡素化してしまったのです。

 京都には平安朝から続くお公家さんの家や神社仏閣が多いので、様々なお正月行事が、あちらこちらで華やかに催されます。そして、茶道三千家のお初釜だとか、華道家元の初活けだのと話題も多いのです。スピードが一段と速くなった社会、環境も変化が激しい中、伝統文化を継承するのはさぞかし努力が要ることだろうと思います。藤原定家から続く冷泉家では、今も十二単衣を着て伝承の行事が催されるといいます。それらの伝統を守る人たちの努力とエネルギーはすごいです。敬服してしまいます。 京都のお正月は八坂神社の「をけら参り」から始まります。境内の吊燈籠に炊かれているご神火を、火縄に移して、それをぐるぐる回しながら家に持ち帰り、火種に移して若水でお雑煮を炊くのです。私が結婚した頃は、まだ庶民の家々でも残っていた風習です。

 火縄からガスコンロに火を移すのは至難の業なので、私は火縄の火をマッチにいったん移してガスに火をつけていました。これって何だかヘン、神様の火もマッチじゃねなどと思い、クックッと一人で笑いながら。それでもその火で雑煮を炊かないと何か悪いことが起こりそうな気がして、何年かは続けていました。習わしとはおかしなものです。えっ、おかしいのは私の方ですって!

 毎年のようにテレビのニュースで流されるのが、北野天満宮の書初祭(2日)、八坂神社のかるた初め(3日)、下鴨神社の蹴鞠始め(4日)などでしょうか。こんなニュースばかりが流されるので、京都は何と悠長なところかと思われがちですが、新しいもの好きの気風も昔からで、世界的ゲーム機や先端技術を走る会社も京都発なのです。
女のポータルサイトWANまたしかりです。(ちょっと手前みそすぎますか?!)

 伝統行事には、男が主役で女が支えるみたいな図式が多いのですが、女性の力なくしては実際にはどんな行事も成り立たないのです。そのことをよく知っている京男たちは、総じて女性には低姿勢。「おおきに」「すんまへん」などという言葉を男性もよく口にします。威張っている男はもてませんしなあ。

 余談ですが、戦時中、赤紙1枚で戦場に駆り出された京男に、戦病死者が多かったと聞いたことがあります。義兄もやはり戦病死でした。「やさおとこ」が多かったのでしょうね。京都は、応仁の乱の後も何度か戦禍にあっていますが、この街には平和こそがよく似合うとつくづく思うのです。お正月からいろんな処へ思いが飛んで、えらく脱線してしまいました。

カテゴリー:京暮らしつれづれ

タグ: / 京都 / 中西豊子

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