2010.02.18 Thu
アメリカは、中国を見ている。ノースカロライナ州、デューク大学アジア・太平洋地域研究所で、Steven Levine, UNC-Chapel Hill教授の“China fantasies”のお話を聴いたときも、Glenwood小学校で、バイリンガルで中国語を学ぶ子どもたちを見たときも、アメリカにおける中国の存在感の大きさを、今更のように感じさせられた。
2004年4月、ノースカロライナ大学・日本研究家のジャン・バーズレーさんのお誘いで、地球女倶楽部INANNAのメンバー数人とアメリカ南部ノースカロライナ州を訪ねた。デトロイトで飛行機のエンジントラブル、ニューアーク経路で現地に到着したのが夜中すぎ。翌日、デューク大学でセミナーの後、広大な日本庭園を見学。ノースカロライナ大学生とのティーチ・イン。Caroline Innでの賑やかなパーティを楽しんだ。 アメリカは、戦前、中国をミッショナリーの地として、改革開放後の中国には、消費文明を呼び覚まそうと、中国の「アメリカ化」を狙っているかに見える。アメリカに行く前の宿題だった、パール・バック著『大地』全4巻を読んでみると、著者の中国観は、アメリカのそれとは少し違うようだ。幼い頃、中国で育ったパール・バックは、かつての中国を単にミッショナリーの地としては見ていない。あたかも今の中国を予見するかのように、的確な視点で中国をとらえていた。そして中国の女性たちへの視線は、とりわけて、優しく。
学生とのディスカッションは、これも宿題だった吉本ばななの『キッチン』について。ばななの作品はアメリカの若い世代に人気があるらしい。主人公・みかげと、雄一と、そして、今はもういない「母」えり子さんは、日本の若者たちの優しさと重なって見えるのだろうか。そう言えば英訳も読みやすい文章だった。
Glenwood小学校は、広大な敷地に建つ、ゆったりとオープンな建物。少人数のクラス。2年生の子どもたちが、中国地図を見ながら、カーペットに座りこみ、熱心に中国語の授業を受けていた。
廊下には「Act out or use objects」「Make a picture or diagram」「Use or make a table」など、10の学習ポイントが張ってある。なんという、すばらしいヒントだろう。こんなの、日本の大学生にも、ぜひ学んでほしいメソッドではないか。ランチルームでは、お弁当持参の子、給食を選ぶ子、それぞれ自由に、みんな楽しそうに食べていた。
ひっそりとした白樺の林の中に、「Rape Crisis Center」があった。レイプ被害にあった人に、すぐ手を差し伸べられるよう、警察、病院、シェルター、福祉、カウンセラーなど、支援のネットワークシステムが、きちんと組まれている。ボランティアスタッフは常に研修を受けている。被害防止にはなにより教育が大事と、小学校へ年間、1000もの出前プログラムが準備されているとか。なんとも羨ましいプログラムではないか。
そしてみんなと別れて、初めてのニューヨーク・ニューヨーク。歩けば歩くほど元気になる街・ニューヨークを、もう、足が棒になるほど歩き回った。地図で下調べして、「あの角を曲がったら、きっとそこにあるはず」と、映画「恋に落ちて」でメール・ストリープとロバート・デ・ニーロが出会う本屋「リッツォーリ」。文人たちに愛された「ホテル・チェルシー」。ビート族で賑わった「カフェ・フィガロ」など見つけては、一人でうれしがった。
見上げれば首が痛くなるほどの高層ビル。早朝から忙しく働くビジネスマン。アップタウン~ダウンタウン、イースト~ウェストへ、碁盤の目を地下鉄を乗り継いで走り回る。市バスに乗ると「62歳以上は半額」とある。「私、半額よ」「ほんとうかい?」と、ブラックの運転手がニヤッと笑った。
アメリカと中国。この二つの大国は、その教育力と情報力を存分に駆使しつつ、必ず世界の地図を塗り替える時が来ると、この旅で予感した。そして今、それが現実になりつつある。
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