2010.05.18 Tue
旧『日本のフェミニズム』(全8巻)は新米社員として、そして今回の『新編日本のフェミニズム』(全12巻)は、産休育休あけの最初の仕事として、実務を担当させていただいた。そうした個人的な経験の背景もあってか、インターバル約15年の間の社会・政治・運動・研究分野の変容を本当にリアルに感じた――再収録させていただいた文献のひとつひとつ、新たに編んだ巻や増補篇として収録した文献の選定の議論のひとつひとつに、である。フェミニズムやジェンダーをめぐる大きな社会変容については、各巻の編集委員解説をお読みいただくとして、ここでお伝えしたいのはもっと別のことである。(編集委員も前回の4人から8人に倍増! 加えて先生方のご多忙さも超UP、これも実感)。
版元の宣伝文でアピールするポイントではないのだが、この場をお借りしてぜひ強調したい。このシリーズに収録したのは、既発表の文献(その一部抜粋)である。いったん書き手を離れ、個人発行・非商業・商業出版を問わず、編集と製作の目と手を経由して、ひとりひとりの読者に送り届けられた文章。これらに編集委員もひとりの読み手として出会い、時を経てこれを編んでいること。そのあいだにいる「最初の編集」の存在を今回ほど重く感じたことは無かった。決して儲かる類ではない――こんなことを強調するつもりはないのだが――文章群を、私たちに届くようにと送り出した最初のひとたちが無くては、このシリーズは生まれていない。
あっというまに書店から消える「地味な」本たち、「マイナー」な出版物、それらの本を手にとって確認ために、今回も青山の東京ウィメンズプラザ図書資料室(旧版のころは飯田橋のビルのこじんまりしたワンフロアでした・・・)に足しげく通わせていただいた。本を手にとりながら、編集者たちの仕事にあれこれ思いを馳せずにはおれなかった。発行者の熱い心が伝わるぼろぼろのムック、もう存在しない版元の丁寧なつくりのページ、低予算のやや不恰好な本たち、さらには、いまでも活き活きと流通している本たちの心臓から、その美味しい命のところを、編集委員という目利きが選び取り、別の出版社の刊行物として、仕立てさせていただいたのがこのシリーズである。発信されたもとの形から切り離してつなぎ合わせることで、もうひとつ立ち現れる形があると、編集委員ともども信じたからである。最初の本たちに心から感謝しつつ――手渡され、手渡すことが、できただろうか。(版元・岩波書店の担当編集者 十時由紀子)
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