エッセイ

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【特集:セミナー「竹中恵美子に学ぶ」レポート①】  堀あきこ

2010.06.12 Sat

 女性労働研究の先駆者、竹内恵美子さんのセミナー(「竹中恵美子に学ぶ~労働・社会政策・ジェンダー~」)が大阪ドーンセンターで始まりました。2010年5月~2011年4月という長期間にわたるもので、WANではこのセミナーを複数のレポーターで報告しようと企画しました。働くこと、女の貧困……といった、今、考えたい問題であり、“申し込みがあっという間に定員を上回った”人気セミナーの様子をお伝えできれば、と考えています。

 第一回は5月21日に開催されました。スタートの6時半前に着いたのですが、会場はすでに満席の状態。仕事帰りと思われる方も多く、様々な年代の女性が熱心に参加されているな、という印象を受けました。
今回のテーマは「講義をはじめるにあたって」、「なぜジェンダー分析が必要か/フェミニスト経済学の登場とその意義」。 「講義をはじめるにあたって」では『竹中恵美子が語る労働とジェンダー』のテキストを抜粋しながら、どういうスタンスに立っての講義であるのか、ということをご説明されたのですが、なかでも、「ジェンダー分析に必要な3つの視点」として、a:有償労働と無償労働をトータルにとらえること b:女性の経験を理論化すること c:それぞれの国の労使関係を、具体的に分析すること、とあげられ、このセミナーでは幅広い射程を持った内容が展開されるのだ、と理解できました。

 続いて、「フェミニスト経済学の登場とその意義」では、フェミニスト経済学が学派を越えて登場したものであり、それまで労働概念に含まれていなかった“家事労働を発見(アンペイド・ワークとして概念化)”し、効率の理論と相反する“ケア役割の重要性を強調”したことを、その功績としてあげられました。この2つの発見・功績が、ジェンダー平等社会実現のための戦略的道筋・理論を開くことになった、ということです。

 その後、経済のグローバル化、労働力の女性化、国連などへの運動、日本の政策的対応と続き、最後に「今後日本のフェミニスト経済学がめざすべき課題」として、以下のように述べられました。

[i] 20世紀的福祉国家の前提である性別役割分業を含む「男性稼ぎ手モデル」が崩壊しつつあるいま、21世紀福祉国家の新しいグローバル・スタン ダードとして、男女それぞれがケアを共有する個人単位を基礎として、経 済的資源(時間・貨幣)の社会的再配分政策が課題とならざるとえない。

 具体的に目指されなければならないのは
①ケアと両立する労働組織の再編
②労働時間の短縮
③それを支える社会保障制度の確立[/i]

 これらの課題について、今後、セミナーで講義が行われる、とのことでした。

 私は労働問題についてしっかりと勉強したことがなく、先生の勢いある語り口に圧倒され、ノートをとるのが精一杯という状態。それでも澱みのない、ストレートなお話のおかげで、「男女が個として自立し、ともにケアを共有するシステム」をどのように考えていくのか、というテーマを理解できたように思えます。参加者の方が「家事が労働問題と関係あるのはなんとなく感じてたけど、すっきりした」と話されているのを聞くことも多かったです。

 参加者の自己紹介時間では、本当に様々な年代、様々な職業、立場の方がセミナーに来られていることを知り、その熱気にも圧倒されました。
 セミナー企画委員の伊田久美子さんが、労働問題の中で、女性労働問題はゲットー化されているが、むしろ逆で、市場外を含む幅広い領域を見るものである、とおっしゃっていたことも印象的でした。
 セミナーは、バックラッシュの流れも大きい今だからこそ理論武装が必要なのだ、「あきらめないで理論を好きになりましょう!」という竹中先生の言葉で終了。初回から、内容の濃い、そして、熱い(先生も参加者も)講義でした。(堀あきこ)

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*テキストは『竹中恵美子が語る労働とジェンダー』『竹中恵美子の女性労働研究50年―理論と運動の交流はどう紡がれたか』








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タグ:労働 / 堀あきこ / 竹中恵美子