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【特集・いわさきちひろと私】もうひとつのなまえ 四宮千絵
2010.07.01 Thu
わたしの名前は「千絵」といいますが、母は「千紘(ちひろ)」にしたかったんだ、と言っていました。いわさきちひろのファンだったのです。なんで千絵になったかというと、当時「紘」という字を役所が受理しなかったので(さすが役所)、第二希望(たぶん)の千絵になりました。
個人的には千絵という名前は気に入っているので、結果オーライなのですが、あと何年かあとに生まれていたらわたしは「千紘(ちひろ)」だったのだなあ、とときどき思います。
こどもの名前にしたいくらいなので、母はよっぽどいわさきちひろがすきだったのでしょう。家中いたるところにちひろの本や絵がありました。ちっちゃい女の子が犬をだっこしていたり、赤い傘をさしてみずたまりを歩いていたり。
最初に「読んだ」のは、「ひさのほし」という絵本でした。ひさ、という無口なおんなのこが出てきて、じぶんよりちいさなこどもを助けるために、川に飛び込んで命を落とすはなし。ストーリーをはっきりおぼえているのは、このおはなしをわたしは覚えて、クラスの皆の前で発表し(小学2年生)、担任の教師に感銘をあたえてしまい、それがきっかけで、全校生徒の前でもっと長い話(かわいそうなぞう)を読むことになったからです。
わたしがいまでも「ちいさいもの」「よわいもの」「どうぶつ」に対して無条件に愛情を注げるのは、いわさきちひろを読んでこども時代を過ごしたからだとおもいます。ずいぶん時間がたったけど、「ひさのほし」はいまでもわたしのこころに輝いています。