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映画評『パリ20区、僕たちのクラス』  濱野千尋

2010.09.15 Wed

『パリ20区、僕たちのクラス』

手に汗握る緊迫感。戦争映画でもないのに。なんせテーマは単なる中学校だ。生意気な生徒たちと、熱血教師フランソワの格闘の1年を描いている。“平 凡”をここまで緻密に再現すると、こんなに怖いのか。安らぐ隙が一瞬もない。教室での言葉の応酬はまるで爆弾の投げ合いだ。

パリ20区は移民の多い地域で、学生の人種もさまざま。面倒くさい思春期に突入中の生徒たちは、彼ら以外の人間ならば看過す些細な一点をつまみ上げ ては、過剰に反抗する。反抗の理由はたいていくだらないが、ときに本質をつく深刻な内容もあるので気が抜けない。フランソワは立派な教師で、同時に欠点も 多い。生徒たちは全然かわいくない。つまり皆、すごく人間らしい。まったく、反論の余地もないリアルさだ。

誰が悪いわけでもないのに出来上がる対立構造。その居心地の悪さ。無視したくなる学校風景は社会への隠喩だ。知的作為に満ちて刺激的だが、疲労感が 抜けない。

あらすじ

パリ20区のとある中学校には様々な人種の生徒たちが通う。国語教師フランソワの奮闘と、生徒たちのリアルな姿を描く。ドキュメンタリータッチの フィクション。2008年のカンヌ映画祭で最高賞のパルムドールを受賞した。

(『新潮45』2010年6月号初出)

映画公式サイト http://class.eiga.com/story.html

カテゴリー:新作映画評・エッセイ

タグ:子育て・教育 / 映画 / フランス映画 / 濱野千尋 / 女と映画 / 映画祭受賞作