エッセイ

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あと何回? asukaの育児休業日記(9)

2011.12.10 Sat

 あっという間にもう一年も終わり!年末年始は実家で過ごす方も多いのでは?そこで質問です。
 『あなたはあと何回、親に会うことができますか?』

 約五年前、私に二つの大きな出来事が起こりました。

 妊娠発覚!

 一つ目は、初めての妊娠出産。

 妊娠が発覚した瞬間、「妊娠直後に・・・キャニオニング(体を使って川を滑り降りたり、滝つぼに飛び込むスポーツ)してた!」と無謀だった自分に青ざめたり、
 子どもが女の子だとわかった途端「次は男の子がいいね」とか言い出す夫にイラっとしたり(第二子も娘でした。いい気味だ!)、
 体重管理の鬼コーチと化した夫が出張に出た隙を狙って友達と外食三昧し、帰ってきた夫に「たった一週間でこんなに顔も体も丸くなるなんて」と大笑いされたり、
 妊婦だというのに深夜まで仕事にのめり込んだり、
 小さなアレコレはありましたが、お腹の子は順調に育っていきました。

ロールモデル=母

 二つ目は私の母のことです。

 母は、一言で言えば「エネルギッシュ」。常にパワフルで明るく楽しく、自分のやりたい事には猪突猛進。私が小学生の頃、子ども四人を友人に預けて一ヶ月間ベトナムでボランティア活動をしてきたことも。

  子ども達に対しては超放任主義。自己責任がモットーです。

 「朝起きれない?遅刻するのは自分の責任」。中学時代、友達が迎えに来たチャイムで目覚めたことは数知れず。
 「部活の朝練のために早朝に弁当が必要?それなら自分で作りなさい」。
 「受験だから夏休みの家族旅行に行けない?じゃあ家で勉強してればいいじゃない」。そして私を置いて家族は皆旅立って行った・・・

  逆に何かを押し付けられたこともありません。子ども達自身に道を選ばせ、かつその選択は確実にバックアップしてくれました。
 働きながら、やりたいことをして輝いている。そんな母が大好きでした。働き続けるのは当然だという意識も、やりたいことはやるべきだという考え方も、母の背中から学びました。

  そんな母を、ガンが襲った。

  さすがの母も弱気になり「妊娠を手伝えなくてごめん」と涙ぐんでいました。しかし同時に、「孫が生まれたら私が世話をしてあげないと!」「この絵本、生まれたら私が読んであげるんだから!」などと、赤ちゃんの存在が回復への気力となっていました。

出産、そして隠されていた事実

 予定日直後、陣痛が始まりました。丸三日間苦しんで、無事長女を出産。
 母にメールで連絡したら、すぐに「おめでとう!」との返事。
 出産直前は病院から離れるのが恐くて、一週間程前にお見舞いに行ったきり。「でも無事生まれたからこれからはいくらでも会える」。
 そう、思っていた。

  出産当日には父が私のお見舞いに来てくれて、赤ちゃんの写真を撮っていきました。

  翌々日には、弟達がやってきました。
 「おめでとう!」
 「ありがとう!ところで、お母さんの具合どう?」
 ・・・沈黙の後、事実が伝えられました。

  「お母さん、昨日亡くなったんだ」
 「お姉ちゃんは初めての出産だったから負担をかけたくなくて、みんなで黙っていた」
 「ここ数日のメールもお父さんが返信していた」
 「赤ちゃんの写真をお母さんに見せたら、意識はないけど笑ったみたいだったよ」

  私は、ただ涙するだけで、何も言えませんでした。

  それからはずっと、心の中で後悔が大嵐を起こしていました。
 「なぜもっと会いにいかなかったんだ」「もっとできることはなかったのか」「どうして病状の悪化に気付けなかったのだろう」「なぜ・・・出産と一緒じゃなければ、せめて、最期には会えたのに」

  しかし、お葬式の最中、妹がつぶやきました。
 「お姉ちゃんは最大の親孝行したよ。赤ちゃんを見せてあげることができたんだから。私は見せられなかった」
 その言葉で「後悔しているのは私だけではない」、そう思いました。

伝えたい気持ち

 今、私は母親となっている。

 子ども達といると、言葉・表情・ぬくもり・匂い・・・ふとした成長の瞬間に、とんでもない愛しさを感じる。そして、まだ五年間しか経験がないのに大変さも日々実感している。

 その瞬間、翻って、どれだけ母が自分のことを愛していてくれたか、どれだけ子育てが大変だったか、「超放任主義」を貫くというのはどれほど強い気持ちが必要だったのか、そんな稲妻のような思いが心を突き抜ける。

 ようやく分かったのに。この気持ちを伝えたい母はもういない。

 『あなたはあと何回、親に会うことができますか?』

 これは、ある雑誌記事の言葉です。親はあと数十年元気でいてくれるかもしれません。でも、実際に何回、何日間、何時間、会うことができるのでしょうか。

  年末年始、親とゆっくり話してみませんか?
 心がけて作った親との時間が、自分と親の両方にとって、時々思い出しては心がほっこりするような大切な宝物となるかもしれません。

  私も父とゆっくり話したいと思います。
 まずは親父ギャグに耐える心の準備をしなくてはいけませんね!

 (宇宙マメ知識は今回はお休みです。)

カテゴリー:asukaの育児休業日記

タグ:子育て・教育 / 育児休業