2011.12.17 Sat
2011年12月14日、1992年1月8日、当時の宮沢総理の韓国訪問を契機に始まったソウル日本大使館前水曜日デモに参加した。
多くの参加者を予想して、10時半にホテルから歩いて大使館に向かった。ソウルの寒さ厳しい冬のさなか、大使館前の路上でじっと立ち続けることを考え、防寒対策を万全にしていたため、到着したときには汗だくだった。
デモに向かう途中も、水曜日デモ第1000回目のためにソウル行きを決めてからずっと悩んでいたことを考えていた。この1000回という数字をどう考えたらいいのか、ということだ。一緒にデモに参加した韓国人の友人が、「1,000日じゃなくて、1,000回なんですよね」とつぶやいた。ちょうど、日本で政権交代があった2009年9月、日本から大学生たちと参加した883回目の水曜日デモで、ハルモニの一人が鳩山新首相に向けて、「これ以上、デモをしなくていいようにしてください」と声明文を読み上げたことを思い出した。
水曜日デモほど、継続は力なり、という言葉が皮肉に響く事例はない。ハルモニたちも座り込みを始めた頃は、まさか1,000回もデモを続けることになるとは思っていなかったに違いない。
11時半から始まった第1000回デモは、多くの報道陣でごった返し、今回特別に設営された舞台にまでカメラやビデオカメラをもったメディア関係者がハルモニたちを撮影しようと入り乱れていた。報道陣以外の参加者は、ハルモニたちとともに、路上に座り込み、千人以上は集まったかと思われる参加者すべてが舞台を見られるように工夫がされていた。
韓国伝統芸能のプンムル隊の演奏でオープニング。日本では『冬のソナタ』キム次長役で有名な俳優のクォン・ヘヒョさんが舞台上で司会を務めた。歴史の証人であり、二度と自分たちが受けたような被害を繰り返さないように訴え続けるハルモニたちへの敬意を表明するかれの発言にあわせた拍手で、参加者たちの一体感が高まった。
クォン・ヘヒョさんもまた、わたしたちに向かって、「みなさん、今日の気持ちはいかがですか?」と尋ねられた。そして、「この1,000回目の日をどう迎えたらいいのか、分かりません。うれしいのか、悲しいのか分かりません。ただはっきりしているのは、今日は、20年間こうして自らの被害を訴え続けてきたハルモニたちのための場なのです」と述べた。
その後、韓国挺身隊協議会代表のユン・ミヒャンさんが、「これが完成でも、終わりでもない。これからもあきらめないで、日本政府にハルモニたちと訴えていく」と発言された。また、水曜日デモは、平和に向けた国際連帯へと繋がっているのだと、ニューヨークでホロコースト生存者たちと二人のハルモニたちが会っていることが紹介された。
この日は、最前列に30人近く参加した国会議員たちも座り込んだ。ソウル大学時代から水曜日デモに参加していた、統合進歩党代表、イ・ジョンヒ議員、前国務総理で民主党のハン・ミョンスク議員、そして、現政権与党ハンナラ党から、チョン・モンジョン議員のあいさつが続いた。
8月30日に出された韓国憲法裁判所の判決で、解決のための外交努力を果たさないことを憲法違反と判断されたイ・ミョンパク政権の与党議員挨拶ということで、会場からは「降りろ!」というブーイングのなかの発言であった。
今回ハルモニは5人の参加であった。ナヌムの家からは、3人の参加で、他に二人が先ほどユン・ミヒャン代表の言葉にあったように、ニューヨークに行っている。前回わたしが参加したデモから考えると、ハルモニたちの不在は、とても重く、辛く、痛い。
さて、平和の碑の除幕式では、「戦争犯罪を認めよ」、「公式に謝罪せよ」、「法的に賠償せよ」、「責任者を処罰せよ」、「歴史教科書に記録せよ」、「資料館を建設せよ」など、ヘヒョンさんの声の掛け声とともに、参加者全員で訴えた。
少女の碑には、ハルモニたちに平和への希望を見いだしている市民たちの願いが込められている。彼女たちは、けっして「かわいそうな」おばあさんではなく、平和な未来を築くことへわたしたちを導いてくれる希望なのだ。
ハルモニを代表して、キム・ボクトンさんが発言された。遠いところから多くの人が集まったことに感謝の意を述べたあと、次のように述べられた。
みなさんのおかげで、平和が誕生しました。昔の諺にあるように、わたしたちが力を集めれば、できないことはありません。昔の韓国では、多くの青年たちが日本に徴兵され、外国で亡くなりました。この過去の事実をどれくらい若い人が知っているでしょうか。李明博大統領は、わたしたちの悲痛な叫び声を聞いていないとはいえません。日本政府に対して、過去の犯罪について公式に謝罪し、賠償しないといけないことは賠償するよう強く言ってほしい。わたしは、半島が統一されて、韓国が平和な国になるように祈っています。日本大使は、平和の道が開かれていると、日本政府に伝えてほしい。一日も早く解決してほしい。大使よ、聞いているか。
14日日本政府は、この日除幕式が行われた平和の碑の撤去を早速要請している。これが、1,000回にもわたって、謝罪――それは、真実究明、歴史教育の実施、法的な責任を認めることを含む――を求める、身を削るようなハルモニたちの訴えを無視し続けてきた日本政府の応答だ。
司会のクォン・ヘヒョさんも、故カン・ドッキョンさんの言葉、「死ぬまで闘います。一人が残るまで闘います」という言葉を紹介されたが、ここまで呼びかけられているにもかかわらず、沈黙するか、傍観するか、あるいは、その声をかき消そうと暴論・暴言を流し続ける日本社会は、過去の不正を正すことなくこのまま自閉していくのだろうか。
20年にもわたり1,000回もハルモニたちから未来を拓く希望のバトンを送られているにもかかわらず、拒み続けた日本社会と政府を動かすのは、日本に生きるわたしたちだ。
1,000回目のデモは大使館にむかって、「公式謝罪せよ」「法的賠償をせよ」という参加者全員のシュプレヒコールで2時に幕を閉じた。しかしまた、来週もハルモニたちは、より寒さの厳しくなった路上で、1時間のデモを継続する。
この記事を書くために、韓国憲法裁判所研究員のソ・ウニョンさんにご協力いただきました。
なお、ソウルでの1,000回デモの詳しい様子、日本で行われた同時デモの様子については、1月中にホットトピックで動画にて紹介する予定です。
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