シネマラウンジ 原発ゼロの道

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『イエロー・ケーキ』監督インタビュー 山秋真

2012.03.11 Sun

『イエロー・ケーキ』監督インタビュー  山秋 真

Japanese writer Shin Yamaaki interviews Joachim Tschirner, German director of Yellow Cake–The Dirt Behind Uranium

 

原発の原料、ウラン産出現場の被爆と破壊を描く

 「ウランを使う、それだけで犯罪に加担していると同じ」

天然ウランを精錬してできる粉末・イエロー・ケーキは核兵器と原発のウラン燃料の材料。世界各地の採掘現場を取材し、その実態を描いたドキュメンタリー『イエロー・ケーキ~クリーンなエネルギーという嘘』が公開中だ。「ウランを使う、それだけで犯罪に加担していると同じ」と語るヨアヒム・チルナー監督に話を聞いた。

――なぜウラン採掘を映画にしようとしたのですか。

「旧東ドイツのウラン採掘会社ヴィスムートのあるチューリンゲン州で10年働いていたのでウラン採掘を薄々知っており、語りたいというのがあった」

――ヴィスムートの廃鉱(1990年)にチェルノブイリ原発事故の影響はありますか。

「間接的な影響はあったと思う。明確な環境運動のなかった旧東独で、事故を契機に人々の不安や批判が形を成し、指導部に問いただすような姿勢が具体化するとか。ただ廃鉱はドイツ再統一にともなう国からの動きで、鉱員や地域住民は40年間ウランを採掘してきた事実もウラン採掘の危険性も知らなかった」

――ウラン採掘をめぐる多様な人が映画に登場します。危険性を知らぬまま、放射性粉塵の舞うなかで食事するナミビアの鉱員。「汚れた粉塵のせいで毎月何人も病気になる」と自宅でつぶやく女性鉱員もいました。「あなたの身体がどの程度被曝してるか知ってる?」と問われ「よく知らない」と応えた彼女の表情と沈黙は雄弁です。映画で伝えたかったのは何ですか。

「核問題は全体を見る必要があるのに、兵器、原発、再処理、処分など個別部分で考える傾向がある。また、なぜか採掘については語られず、私たちは騙されてきた。そういう情報に注意せよ、ということです」

――鉱山の操業を認め、のちに危険に気づき、専門家らの支援も得て別の鉱山の操業は中止させた豪州の先住民アボリジニを見れば、まさに「無知こそが嘘のはびこる土壌を作る」のです。ではウラン鉱山のCEO(最高経営責任者)らは無知か、虚偽か、確信犯か。どう考えますか。

「ウラン鉱山は多少の問題はあっても何とかなる、それを補って余りある経済効果や雇用を提供していると、彼らは本気で思っていると思う。株主の配当や企業の利益のために働くCEOとして職務に忠実。ただ間違いなく企業は情報操作をしています。ヴィスムートのカナダ版、ウラニウム・シティ出身のジャーナリストが『必要な情報が得られず、得られても理解できず、結局私たちは原子力推進者による情報ばかりを好んで受けいれる』といっていた言葉が、企業の姿勢を如実に物語ります」

――東京電力の福島第一原発事故がおきた今、新たなメッセージはありますか。

「廃炉解体はどうするのかという問題がでてきた。ドイツ北部のルブミンで20年前から初期型原発を解体しているが、先はまったく見えないまま費用は毎年かさむ。日本でもいつか原発を解体する費用を誰が払うのか。最後の部分・廃炉解体もあらためて直視しなければ。これが最後の私のメッセージです」

『イエロー・ケーキ~クリーンなエネルギーという嘘』2005~2010年/ドイツ/108分。監督:ヨアヒム・チルナー。配給:パンドラ■東京・渋谷アップリンクにて公開中(10:15/12:30/14:30/18:40)。以降、2月18日~大阪シネ・ヌーヴォを皮切りに順次、全国各地で上映予定。

  写真:C2010 Um Welt Film Produktionsgesellschaft

ヨアヒム・チルナー(Joachim Tschirner)

1946年、旧東ドイツのヴィッテンベルグ生まれ。70~74年、ベルリンのフンボルト大学で美学と文化理論を学び、75年から映画編集者として、80年からは監督としてDEFA(映画製作会社)に勤務。90~91年、映画・テレビ連盟代表。91年、自主製作プロダクションUM WELT FILM設立(撮影/筆者)

この記事は、『週刊金曜日』2012年2月10日(No. 882)号50頁より版元と著者の了解をえて、WANに転載したものです。掲載にあたり一部漢字をかなにあらためました。

現在の上映時間・期間については直接劇場までお問い合わせください。なお、東京以外の地域での上映はこちらから:

 著者プロフィール:

山秋 真(やまあき しん) ライター

原発計画にゆれた石川県珠洲(すず)市と関連裁判にかよい、『ためされた地方自治―原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年』(桂書房、2007年)を上梓。同書で、松井やよりジャーナリスト賞、平和協同ジャーナリスト基金荒井なみ子賞受賞。2010年9月から瀬戸内海の祝島(いわいしま)にのべ190日以上にわたり滞在、上関(かみのせき)原発計画をめぐる状況と、同計画に30年あらがいつづける祝島の人びとの声に耳をかたむけ、発信をつづけている。  ブログ「湘南ゆるガシ日和」更新中。

カテゴリー:新作映画評・エッセイ / 脱原発に向けた動き

タグ:脱原発 / 原発 / 山秋真 / ヨアヒム・チルナー

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