2012.03.25 Sun
カメラマン大津幸四郎氏にインタビューして
映画祭“1968”に参加して
Japan Women’s University students made comments about Film Festival 1968 (Jan. 28 to Feb. 3, 2012) organized by Nihon University, College of Art students.
学生運動をテーマにした映画祭“1968”が、2012年1月28日~2月3日、東京・渋谷の映画館で開催された。日本大学芸術学部映画学科理論・評論コースの学生たちによる、手作りの企画だ。
2011年冬に公開された『マイ・バック・ページ』(監督:山下敦弘、製作年:2011年)やDVD未発表の『パルチザン前史』(監督:土本典明、製作年:1969年)など、学生らが探し、選んだ12作品が上映された。
足を運び、熱い時代の姿を見た今の学生たちは、作品をどのように受け取ったのだろうか。日本女子大学映画研究会の学生が、感想を寄せた。
※映画祭“1968”の公式HPはコチラ
●『日大闘争』『続日大闘争』(製作:日大全共闘映画班、製作年:1968年)
自治への憧れ
被逮捕者1608名、死者2名、負傷者多数を出した日大闘争。だが、とても楽しそうだ。夜のキャンパスで火を囲み踊る。車をひっくり返しバリケードにする。道路の敷石を剥がし、投石。機動隊に追われる。ビラが舞う中の、ごろ寝。ここには非日常の興奮がある。
日大闘争は、使途不明金や裏口入学の不正告発といった具体性を伴った運動だった。日常から発した要求だからこそ、多くの共感を得た。運動のいのちは、枠を壊すスリルと解放感だ。そして、枠の向こうにある自由への渇望だ。その熱を捉えた、魅力的な作品だった。
(文学部2年 是恒香琳)
●『緋牡丹博徒』 (監督:山下耕作、製作年:1968年)
『お竜』になれなかった彼らたち
博徒として生きることを決めたお竜(藤純子)は、何度も「女だから」と軽んじられる。ところが彼女の「私、もう決めたんです」とその生き方しか知らないかのような純粋さが、次々と相手を射抜いていく。
公開当時、なぜ学生たちからこの映画は支持されたのか? それはお竜のその純粋さに憧れ、そして自らの純粋さを重ねていたからかもしれない。
ただしこの映画は彼らに甘い夢を見させるだけではなかった。自分を貫き生きること。それは同時に孤高であり続ける厳しさと辛さを背負わねばならないのだ。そして結局だれ一人としてお竜にはなれなかったのである。
(文学部3年 粂原奈々子)
●『絞死刑』(監督: 大島渚 、製作年:1968年)
笑えない風刺
ブラックユーモア満載である。だが、私はどの場面でも笑えなかった。
死刑制度や、(在日外国人の象徴としての)在日朝鮮人、貧困などの社会問題そのものだけを触れたならば、私も思いっきり笑えたはず。
しかし私には、監督の意図は分かり切れないが、その奥底にある、内面的で根本的な問題が見えた。例えば〈当然のように思われている価値観に対しての再検討〉、〈考え続けることの大事さ〉などだ。これは、21世紀の若者として生きている私にとって、笑うことのできないあまりにも切実で、真剣な悩みだ。
このように、自分にとって笑えないぐらい真剣なものが見えてきたので、まさにブラックユーモアというより、ブラック、つまり笑えない風刺そのものの映画だったわけだ
(文学部3年 姜錫正[カン・ソクジョン]、留学生)
●『東風』(監督:ジャン=リュック・ゴダール、製作年:1969年)
ゴダールの「意図」だらけの作品
もしかしたら、この映画は難解ではないのかもしれないが、やはり今時の一映画好きとしては、「難解」だと言わざるを得ない。我々にとって、本作で叫ばれる思想が、もはや過去の産物のように思えることが問題なのではなく、ゴダールが「映画人として」の実験を行っているために、難解なのである。ゴダールの意思はナレーションによって観客の前に露わになる。しかし言葉だけでは、観念の域をでない。ゴダールは商業主義的な映画を批判しているが、自己中心的で観念的な映画には、説得力がない。その点において、私は商業主義的な映画以下だと思う。
(文学部3年 森本真由)
●『ドリーマーズ』( 監督:ベルナルド・ベルトルッチ 製作年:2003年)
守り叶えるモノ
“1968”のテーマのもと鑑賞し、主人公3人に“社会”というものへの様々な関わり方をみた。忌避や静観、模索、あらゆる様相を呈する実行などだ。個人の空間の中にたゆたい、空論としての“社会”にそれぞれ関わり方を持つ3人。しかし映画の終盤に窓を突き破った石により、空論でしかなかった“社会”は、草の根の現実となる。もう既に私たちの窓も破られているのかもしれない。形は詩にせよ署名にせよ、夢や理想のため何らかの意思表示が必要なこともあるだろう。
(文学部2年 若林朋)
●『69 sixty nine』(監督 :李相日、製作年:2004年)
69 sixty nineを観て
テンポ良く、笑い満載で楽しい映画でした。それでいて独特な抑圧感のある空気が感じられ、大満足でした。モテたいヤりたいのヤンチャな男子高生の青春、男の子に生まれたかったなぁなんて思いました。ただそこにそれがあった。それだけなのだと思います。実際、そんなものであったのだと思います。そこを理屈を捏ねずにそのまま描かれていたので、嘘くさくなく、また受け入れ易かったのではないかと思いました。
(文学部3年 浅見里咲)
編集・写真:是恒香琳(これつねかりん・日本女子大学文学部2年)
Edited by Karin Koretsune
カテゴリー:新作映画評・エッセイ / イベント