エッセイ

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ヘンな旅程を組んだばかりに(旅は道草・28) やぎ みね

2012.05.20 Sun

 南回りで関空~シンガポール~ドヴァイ~イスタンブール~マルタ~シシリー往復15日間の旅。ヘンな旅程を組んだばっかりに、航空運賃は格安だけど、長いトランジットと夜中の出発、到着は早朝、時間のロスとハプニングは絶えない。

  朝、関空で持参のおにぎりを急いで食べたら喉に詰まった。「空港で、おにぎりを喉に詰まらせ、老女、窒息死」なんて三面記事に載ったら、ほんと、みっともない。

チャンギ空港

 チャンギ空港でトランジット8時間、外気に比べて冷房が効きすぎて寒い。夏カゼを引いたまま旅立ったのでセキがどうにも止まらない。

 広いフロアを右へ左へ外国の老女が一人、トランクをひきずって歩いてゆく。どこへ旅するのかな。私もあんなふうに見えるのかしら。

ドヴァイ空港

 ドヴァイ着、現地時間で深夜3時。聞きしにまさるドヴァイの蒸し暑さにびっくり。夜中でも室温40度近い。広いトイレはシャワーつきだった。

 乗り換え便の隣席に太ったおじさんが座る。離陸するや、フライトアテンダントに「ダブルウィスキー、ダブルウィスキー」と注文する。何杯、ウィスキーを飲んだことか。それもトマスジュース割りで。乗務員が「パスポートをドヴァイで落とされましたのでイスタンブールの空港でお受け取りください」といっても知らん顔。ハードドリンカーだけど、憎めないおじさんだった。

 機内の空いたスペースで男性が一人、メッカに向かってイスラームの礼拝を繰り返していた。

 イスタンブール・アタチュルク空港着。メトロとトラムヴァイを乗り継いで宿を探す。トラムヴァイのレールの上を車が平気で走る。信号もない。ブーブー鳴らす車の隙をぬって道を渡る。やっと見つけた宿でシャワーを浴びる。蛇口は天井に固定のまま、海水浴場のシャワーみたい。お湯が急に出てきて頭からびしょ濡れになった。

 ガラタ塔の展望台へ。イエニージャーミーをボーッと眺めていたら、ボスポラス海峡の潮風に吹かれて、またセキ込んでしまった。

  マルタ航空の深夜便に乗るため、夜中の3時に宿の若い男に送ってもらう。スピードを出して走ると向こうから逆走してきた車とぶつかりそうになった。なんで逆走なんかしてくるの?

マルタ

 マルタは観光立国。入国審査に時間がかかる。ワーキングビザのアフリカンが楽器を抱えて待っている。何人もイミグレーションコーナーでペンディングになっていた。

 タルシーン神殿は豊穣を願う巨石が並ぶ紀元前3000~2500年の遺跡。紀元後、突如どこかに消え去った謎の民族がいたらしい。争いを好まなかった民族なのか、戦闘で陥没した頭蓋骨が見つからなかったことからもわかるという。シエスタで人っこ一人いない町をバスが走る。

 そしてシシリー島のカターニャへ。到着後、荷物の表示がどこにもない。係員は4番といい、放送は3番。そのたびに右へ左へと移動する。「この荷物はマルタから?」「メイビー、わからないよ」。やっと2時間後、5番に荷物が出てきた。

エトナ山

 カターニャからイタリア国鉄でタオルミーナへ。イオニア海とヨーロッパ最大の火山エトナ山をバックにガラ空きの列車でゆく。映画「グラン・ブルー」の撮影地イソラ・ベッラを真下に、バスで山頂まで登る。

 シラクサへはバスでゆく。塩野七生が「ここなら結婚式をあげてもいいわ」といった大聖堂。木製の天井、バロック様式の祭壇が3つ。アテネ神殿の円柱が、がっしりと支えている大きな教会だ。

 帰りの飛行機も、のんびり荷物を積み込んで出発が遅れた。マルタも終バスが早いので夜の便は空港で待ち時間が長くなる。地中海の真ん中。戸外に出ると気持ちがいい。夜空に花火も上がっていた。連れとつれづれなる話をしていたら、時を忘れてしまった。

 旅に出れば責任は私自身に。エンジントラブルで乗り換える時も、ひと昔前、リコンファームをした時も、乗り継ぎでゲートからゲートまで脱兎のごとく走って「ああ、間に合った」と安堵する時も、みんな私の責任だ。
 旅は体力がいる。まだこの歳でも大丈夫かな?

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