原発ゼロの道 エッセイ

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原発を問う その3 郡山市にて ③ 岡野八代

2012.06.03 Sun

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さて5月20日、郡山市にて、「原発を問う民衆法廷」が開催された(前回の第二回大阪での法廷については、こちらから映像が見れます)。

前日までの、二つのインタビューで随分といろいろと考えさせられ、初めて足を運んだ福島県でやはり、それまで漠然と感じていた現実とはずいぶんと異なることを実感した。震災後、そして原発事故後もわたしは、被害の様子を実際に目の当たりにすることを、意識するにせよしないにせよ、避けてきたように思う。その理由は、うまく説明できないのだが、一つには自分になにができるのか、自信がなかったからである(このあたり、少しだけ文章にしてみたので、こちらも参照されたい)。今もなお、何ができるのか分からない。それでも、やはり現実を知る、ということが第一歩なのだと、痛感した。

さて、法廷である。

今回の法廷は、第一回の東京での法廷で問われた、業務上過失致死罪という刑法上の罪に加えて、今回の原発事故と人道に対する罪との関連を問う試みでもあった。

人道に対する罪とは、「文民たる住民に対する攻撃であって広範又は組織的なものの一部として、そのような攻撃であると認識しつつ行う」行為であって、殺人や、絶滅させる行為、強姦ほか「住民の追放又は強制移送」と「特定の集団又は共同体に対する迫害」を掲げている。郡山市に到着し、そして、福島の今を生きている方々とお話するまでわたしは、故郷を離れなければならない状況を作ったこと、つまり、まさに移住を強制したことが、原発問題の大きな加害性の一つであると考えていた。

だが、立ち入り禁止区域となったため移住を余儀なくされた人、「自主」避難をした人だけでなく、放射能汚染の危険を察知しつつ、不安におびえつつ、土地を離れないことに自省しながらも、なお今も原発事故以前と同じ場所に生きざるを得ない人びとの苦悩もまた、今回の大きな加害性を表していることに思い至った。

アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.4人の方の意見陳述を伺いながら、原発事故に無関心な者でさえ何度も聞いた「自主」避難という言葉がいかに、政治不在、行政不在の無責任さを隠ぺいする用語なのだ。

申立人のお一人、南相馬市在住の詩人、若松丈太郎さんは、政府の根拠のない誘導に基づいて「自主」避難した結果、結局南相馬市よりも、放射線量が多かった福島市に、飯館村(南相馬市の約20倍の線量に襲われていた)を幾度も通って、何度も家族を送迎しているのだ。かれは、原発事故のことを、〈核災〉と呼ぶ。原子力発電という、日本語特有の婉曲語法によって、核への恐怖を忘れてしまうことに警告を発しているのだろう。

かれは、対話集会などの折りにつけ子どもたちが「今知りたいこと」として書き記している言葉を紹介してくれた。

雨でもサッカーができるようになりますか

水道水を飲んでもいいですか

30キロ以内に子どもがいていいの?

原発の状態をほんとうはどうなんですか?

東電と保安院がついたウソの数

子どもたちの多くの言葉を引用しながら、若松さんは、それを〈むごいこと〉と表現された。

「警戒区域」とか、「計画的避難区域」とか、「特定避難勧奨地点」とか、周知のように、SPEEDIの情報をひた隠しにした日本政府の、無責任さがよく表れている。まさに、これは棄民政策なのだ、と。

二人目の申立人は、前日にお話を伺った渡辺ミヨ子さん。

前日みなでお話をしている間、「固定資産税支払えなんてとんでもない、不払い運動しなきゃ」という方に対して、別の方が、「でも差し押さえとか、あるんじゃない」と発言されたのを受けて、「それじゃ、土地ごともっていてもらおう」と言って、大いに話を盛り上げてくれた方だ。

小さな村で育った自分自身の過去を思い出しながら、経済的な豊かさが、いかに子どもたちの心をむしばんでいったかを訴えられ、「嘘で作り上げられた安心安全の中で、か弱い人たちが生きていけるはずがありません」と、真実を訴えることの重要性を説かれた。

小さな町で、子どもたちの行動がおかしいことを訴え、それは大人の責任ではないのかと主張し、そのために、何度も周りから「黙れ」と言われたそうだ。

前日も、「なんだか本当におかしいよ、今」という発言に、「いやぁ、もともとおかしかったんじゃない」と切り返していた渡辺さん。自然を愛し、自然に生きている彼女のような方が、民主主義の本質を実感されているのでは、と思わされたのだった。

原発を問う その3 は、次回④まで続きます。

お楽しみに。








カテゴリー:脱原発に向けた動き / 震災

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