エッセイ

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中国の女子大学生の女性差別反対パフォーマンス  遠山日出也

2012.07.18 Wed

 先日、私は、中国の女子大学生が、今年2~3月に、公共トイレの男女の便器数の不公平さ(女性の方が用便に時間がかかることが考慮されていないことなど)をアピールするために、男性トイレを一時的に占拠して、女性に使ってもらうアクションを中国各地でおこなったことを紹介した記事をWANに掲載していただいた。この件に関して、「中国の女子大学生は、女性トイレの問題にばかり取り組んでいるのか?」「こうしたアクションは弾圧されないのか?」という疑問を持たれた方がいらっしゃる(私も最初そうだった)ので、お答えしたい。

  さまざまな女性差別に反対するパフォーマンス

  中国の女子大学生は、もちろん他のさまざまな女性差別に反対するアクションもおこなっている。4月以降、中国各地(武漢・西安・杭州・南京・鄭州など)でおこなわれたのは、就職における女性差別反対を訴えるパフォーマンスだ。その多くは、1人の女子大学生が、鎧・兜を付けて、花木蘭(ムーラン。男装して従軍した伝承中の女性)の扮装をし、「木蘭が現代にタイムトラベルした。鎧を脱いで仕事に就きたいのに、いかんせん仕事が見つからない」と書いたパネルを掲げて、仲間とともに、女性の権利を説くチラシを配布したり、「男子のみ」という条件を出している企業のブースに抗議したりするものだった(中国での報道[写真あり])。

  他にも、今年は、以下のような女性差別を告発するパフォーマンスがおこなわれてきた。
 ・DV反対――北京では、バレンタインデーに、3人の女子大学生が血痕の色が付いたウェディングドレスを着て、DV反対を訴えるプラカードを掲げて歩いた。バレンタインデーは、カップル文化の圧力が強まる日なので、彼女たちは、親密な関係の中に暴力が隠されていることを訴えるためにこの活動をしたという(ニュース写真)。
 ・ミスコン反対――西安では、数名の女子大学生が、「ミスコンを拒否する。花瓶(飾り物としての女性の象徴)にはならない。自分自身にしかならない」というパネルを掲げて、花瓶を金づちで叩き壊すパフォーマンスをおこなった。その参加者は、「ミスコンがあるかぎり、女性は他人の消費と娯楽という落とし穴に落とされる」と語っている(中国での報道[写真あり])。

  当局の妨害を避けつつ、メディアにアピール

  上の「男性トイレ占拠」と「血染めのウェディングドレス」のパフォーマンスをした1人は、アクションの際には、以下のような点に注意した/すべきだと述べている*1。
 ・アクションの場所を決める際は、警備人員の数や厳しさに注意する。
 ・事前にアクションの練習をする場合は、当日おこなう場所ではやらない。また、突発的事故に備えて、予備のプランを1つか2つ準備する。
 ・干渉されないうちに、速やかにアクションをおこない、終了したら直ちに解散するという「フラッシュモブ」のやり方をする。
 ・新聞やテレビに取り上げてもらうために、事前に記者に連絡する(その際に、アクションを支持する学者・弁護士も紹介する)。そのために、どのメディア・どの記者がこうした活動に興味を持つかを知っておく。ただし、記者に対しても、アクションの時刻は前日まで教えず、場所は直前まで教えない。

   中国では、屋外の公共の場での集会には警察の許可が必要だが、文化娯楽活動の場合は不必要である。そのためか、上記のようなアクションは「パフォーマンスアート」としておこなわれてきた。けれど、それでも北京での「男性トイレ占拠」は当初予定していた場所では警察に阻止されたため、予備の場所でおこなった。また、先日発行された公安当局の雑誌には、パフォーマンスアートが政治活動になることを警戒する論文が掲載されており*2、今後、どこまで継続できるかは不透明だ。

   しかし、市民運動に対する制約が強い中国においても、周到な準備と工夫によって、何の権力も持っていない若い女性たちが社会に向けたアピールをなしえていることには感嘆させられる。

   *1 王曼「如何有效開展街頭公益行為芸術―以”受傷的新娘”及”占領男厠所”活動為例(街頭の公益的パフォーマンスアートをどのように有効に展開するか―『傷を負った新婦』『男性トイレ占拠』アクションを例に)」『中国発展簡報』2012年春季刊。
  *2 趙陽「浅析“快閃”等街頭行為芸術対社会治安秩序之影響(『フラッシュモブ』などの街頭のパフォーマンスアートの社会の治安秩序に対する影響の分析)」『公安研究』2012年第5期。

カテゴリー:投稿エッセイ

タグ:パフォーマンス / 中国 / 女性差別 / 遠山日出也