2013.02.01 Fri
WAN的脱原発 岩手から発信せよ!NO.3
「○○○は、セシウムの基準値を超えたので、出荷停止になった」とニュースが原発事故以来目立つようになっています。少し前に、岩手純情米ひとめぼれを景品にした東海テレビがテロップに「怪しいお米セシウムさん」と出して謝罪した事件がありました。実際の今の岩手の農家の困窮困惑を慮れば、それがどれほどの誹謗中傷侮辱なのかわかるはずなのに。都会のマスコミ関係者の問題意識のなさに、腹ただしさを通り越して、情けなくなりました。
さて、セシウム汚染された食品を食べると、どのようなことが起こるのでしょうか。
著者/訳者:矢ヶ崎 克馬 守田 敏也
出版社:岩波書店( 2012-03-07 )
定価:¥ 626
Amazon価格:¥ 604
単行本(ソフトカバー) ( ページ )
ISBN-10 : 4002708322
ISBN-13 : 9784002708324
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『内部被曝』(岩波ブックレットNO.832)によると、
体内に入った放射性物質は、放射線を出し続けながら血液やリンパ液に乗って体中に運ばれます。さまざまながんとともに、一般的なあらゆる病気がでる可能性があります。がんだけに限定して被害を過小評価するのは、誤りです。
チェルノブイリ事故による放射能汚染地帯にあるベラルーシのゴメリ医科大学で、1997年に死亡した成人と子どもの臓器のセシウム汚染が調べられましたが、心筋、脳、肝臓、甲状腺、腎臓、脾臓、骨格筋、小腸などあらゆる臓器にセシウム137の蓄積が認められています。しかも心血管系疾患で死亡した患者の心筋には、他の原因の死亡者より多くのセシウムが蓄積しているなど、それぞれの臓器へのセシウムの蓄積量と、その部位出の疾患に相関関係が見られます。さらに調査結果は、放射性原子は放射性微粒子のまま体内に存在することを示唆しています。(P19~20)
セシウムは、全身に蓄積されるわけですね。
では、体内に入ってから、どれくらいで排出されるのでしょうか?
「物理学的半減期」とは、放射性物質が崩壊を起こして半分以上が安定的な原子になるまでの期間のことです。
でも、体内に摂取された放射性物質は、汗や尿や便など代謝により体外に排出されます。
代謝によって量が半分になる時間が「生物学的半減期」です。
代謝を考慮した実行半減期を考えるのが、私達には必要です。
例えば、放射性ヨウ素131は不安定な核種で、自らを壊して安定した状態になりたがります。この自らを「壊す」ときに、β線を放出するので「β崩壊」と言います。
身体の内側から放射線を出し続けるので、その出し続ける間に、臓器は、蝕まれていくわけです。
原発事故直後は、「急いでヨウ素剤を飲め!」「もしもの時のためにヨウ素剤を各家庭に供えるべし!」「わかめや昆布、海藻類をたくさん食べろ!」と言っていたのは、原発事故で人工的な、ヨウ素131が甲状腺に取り付いて悪さをするからなのね。
また、原発事故直後に日本国中に大気に乗って降り注いだ放射性物質の内、セシウムについては、政府の基準は、1キログラムあたり、500ベクレルを超えると出荷停止にしました。
それから、時間が立ったので、2012年からは、出荷基準が、厳しくなって100ベクレルに変わりました。
「昨年はよかったのにねえ。消費者を第一に考えた基準を厳格化するのはいいけど、じゃあ、作年食っちゃたモノはまずいものもあったんじゃないか?って考えるよね。米も、収穫直後、精米後、洗米後じゃあ、数値が全然違ってくるから、どの地点で調べてるんだかよくわからんものもあるねー。」
といって、今年出荷停止になったものを泣く泣く廃棄処分したそうです。昨年なら食べられたのにって。
✔?昨年食べたものって、今年は危険になったもの?
私たちの代謝能力は1年で変わるわけ?
はないから、原発事故初年度に、基準を厳しくしたら、出荷停止の物だらけで、食料不足になり、経済大混乱になりかねないっていう理由でしょう。
原木椎茸は、150ベクレル~50ベクレルに基準値が変わったため、大幅にこの秋は、出荷停止が相次ぎました。放射性物質を吸ってしまう天然きのこも。
農家へ被害の謝罪にきた東京電力社員が、「じゃあ、きのこ採らなきゃいいじゃないですか」っていって、住民の怒りをかった話があります。
都会の社員は、ほだ木を何千、何万本と大量に栽培している人は、生業だが、天然きのこは趣味の領域と見たようです。
岩手の山間部では、天然マツタケが出た日は、小学校の授業参観だって誰も来なくなるのです。マツタケ採集は翌日にしたら、傘が開いて商品価値が落ちてしまうから。ある村では、マツタケ採りは仕事の早退のちゃんとした理由になるそうです。
「だって、1日収穫したら、200万円にもなるからねー。大切な我が家の収入源だよ」
きのこの種類も、ボリタケ、カオリタケ、ヒラタケ、マイタケなどなどたくさんあって、こんなの美味しいの?っていうようなグロテスクなもののも、産直に並びます。
天然きのこは秘密の場所にあって、お爺さんがこっそり出かけて行って、遭難するというニュースが、岩手では、秋になると2.3件はあります。
案外おいしさを知る人は「おお!今年も出た出た」って嬉しそうに買っていきます。美味しく食べるために、水にさらしたり、アクを取ったり、干したりいろいろな知恵があり、山で暮らす民の伝統食文化があるのです。それが、放射能被害によって、この先何年間も失われてしまったのです。
きのこ類は食べないという人が増えたため、市場では、マイタケに検査済みのシールが、貼られるようになりました。また、骨にも溜まりやすいというので、小魚にも表示がつきました。正月のたつくりにも。
✔?でも、なんで、世間では、「セシウム」ばかりが注目されるんでしょうか?他の種類の放射線だってかなり危険なはずなのに。
それは、ガイガー・カウンターで計測できるのはγ線だけだからです。これまでヨウ素131、セシウム134、セシウム137が取り沙汰されてきたのは、ガイガー・カウンターで計測できるγ線を放出する核種だからなのです。
もっとも恐いプルトニウムやウランはα線しか出さないし、ストロンチウムはβ線しか出さない。これらの核種は、現実に「そこにあっても」検出されないことになっているのです。検出はされないとはいっても、それまで、しっかりとDNAは傷つけられています。
生物学的半減期が短いからといって、まったく喜ぶことはできません。
ヨウ素131のように、物理学的半減期が、生物学的半減期より短い場合は、しっかり体内で被曝してしまった後に、体外に排出されることになります。
「Bq(ベクレル)」というのは、すでにそこに蓄積・沈着されている放射能の量です。
暫定基準値は、主食の米、水、魚、肉など日本人が平均的に生涯食べる量から割り出します。
一生涯に人間が食べる量を100ミリシーベルト以内とした場合は・・・・という大雑把な計算になります。排出が間に合わないで、どんどん蓄積されていくということが重要で、生涯、どれだけ食べたかが問題なのではなく、呼吸や、飲食によって体内のどこに放射性原子が蓄積されていくかが問題なのです。
ちなみに、生物的半減期は、
ヨウ素131の場合⇒乳児11日、5歳児23日、成人80日
セシウム137の場合⇒1歳児 9日、9歳児 38日、~30歳 70日、~50歳 90日
と考えられています。避難した福島の子どもたちのかなり多くが、甲状腺検査の結果20ミリ以下の水泡、しこりが見つかったのは、心配する値ではないとはいわれるものの、心配に成らざるをえません。
毎日の食事や、吸う空気に、飲む水に、放射性物質が含まれていれば、それは、体内に蓄積されていきます。原発事故があった日本で、この先この年でもうチャラになって体内にゼロだと言うことにはなりえません。それだけ、ガンやさまざまな機能障害を起こす確率が高くなるというわけです。幼い子供ほどリスクも大きくなります。
福島の原発事故はまだ、完全に終焉しておらず、現在も10億ベクレルが流れ出ていると言います。
代謝により体外に排出するとはいいますが、放射性物質が含まれた糞尿は、下水処理されて行く中で濃縮されてきます。その先はどこへ行くのでしょう。下水施設が放射線を遮断する設備になっているわけではありません。除染された土も汚泥同様、そこからはどかすけれども「移動しただけ」で、地球上から消滅するわけではありません。
東京に出荷された岩手県産牛肉2個から暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超える最大1198ベクレルの基準超過があったと報告されました。飼料の稲わらが汚染されていたのです。
今まで、稲作農家から稲わらをもらい、牛フンを肥料に有機栽培をしてきた農家の人たちは、途方に暮れています。アメリカ産の飼料を買うお金もないし、遺伝子組み換えなどの安全性も不安だと。震災復興で、公共事業もいいけど、まずは、こういう被害を救済してほしいといいます。
岩手県県内のシカ、クマなどの野獣による農業被害は年間三億円に上ります。そのため、県では猟銃権を与え、駆除をしているのですが、2012年からは、岩手県産のクマ肉、シカ肉、ヤマ鳥肉から、暫定基準値を超えるセシウムが出たので、出荷制限を受けました。今までは、害獣駆除とはいうものの、ジビエ(野獣肉)として、珍重されて、アイヌのイヨマンテの祭りのように、神に感謝し、山と共に生きるマタギの歴史や知恵が息づいていたものですが、ここでもそれが途絶えて行きます。また、被爆野獣たちが、山で死ねば、その死骸が分解されて行く過程で、食物連鎖によって、放射性物質は、どんどん拡散されていきます。人間のエゴによって生み出されたもので、罪のない生きものたちが犠牲になっていくわけです。そして、私たちヒトもその連鎖の中に生きています。
セシウム高濃度指定廃棄物倍増
1キロ当たり8000ベクレルを超える焼却灰や汚泥等の量が、2日地点で88000トンになったと発表。(中略)地域も山形、静岡などが加わり、11都道県に増えた。環境省は既存の指定廃棄物を処理しきれない5県にそれぞれ1か所ずつ最終処分場を立てる計画を進めている。 (2012年11月17日付 朝日新聞)
この記事から、今、日本の国土に目に見える形である高濃度汚染物もが、とんでもない量と数値であることが分かります。一体どこに最終処分場を立てるのでしょうか?その作業員の被ばくの不安もあります。また、そこから放出される放射線物質は確実にありますから、近くに暮らす住民はどうなるのでしょうか?
匂いも、色も、形もみえないモノだけに不安も曖昧なものになりかねません。
現在の目先の我が身我が子の健康と安全のためだけに汚染回避を意識するのは、ヒステリックで自己中心的です。
少し、冷静に丁寧に考えていけば、原発による放射能汚染は、とてつもなく広範囲に及び、未来永劫までも危険にさらしかねないものであることがわかってきます。
2013.1.20
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