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子どもの健康被害は、まずは大丈夫って本当? 桜川ちはや

2013.03.01 Fri

                            脱原発 岩手から発信せよ! NO.4

福島の子どもの3人から甲状腺ガンが見つかり、すでに手術されていると今月(2013年2月)国会で話題になりました。事故から2年経て病状が出てくると言うのは、チェルノブイリでも分かっていますから、ガンまで進行していなくても、甲状腺にしこりのある子どもたちの数がかなりのものだと言うのは確信できます。ただ、放射線ヨウ素は半減期が8日と短く、事故後の実測データがほとんどありません。そのため、甲状腺被ばくの実態ははっきりせず、推測の域をでず、汚染は広範囲にわたっているため、地域や、個人差もあり、測定できるセシウムとヨウ素の比率を基準にして、推計するしかありません。

岩手でも原発事故の影響を受けた奥州、一関、平泉の3市町は、幼児から中学生を対象にして内部被ばく検査を実施しています。2012年12月17日~受付を開始し、県が2011年度から行っている継続検査とは別に希望者を募り、調査対象を拡充することで保護者の不安を払拭することが目的。約3700人の子どもたちを想定し、検査は原則1回で、検査内容は、2日間かけて2リットルの採尿し、セシウム濃度を測ると言うもの。

おむつやトレーニングパンツをまだしているかもしれない幼児の採尿には、かなりの手間がかかる。しかも2リットル!  3700名とは対象地域の子どもの数でしょうが、果たしてもどれだけの保護者が希望するでしょうか?

一方、先に県が始めていた2011年度の調査対象者(当時3歳から15歳の子ども132人)の内、86人の分析結果が出ました。岩手県の県庁が公表しているHP によれば、

採集した尿を、県の研究機関で保有しているゲルマニウム半導体検出器を利用し、1検体あたり30分~1時間以上の時間をかけて計測。 その結果、セシウム134及び137、ヨウ素131、カリウム40(自然放射線)を、1リットルあたり1.0ベクレル以下という微量レベルまで検出。 調査は、一関市(60人)、奥州市(36人)、宮古市・金ヶ崎町・平泉町(各12人)。 尿中の放射性物質の測定は、県の研究機関では1日に6検体程度しか行えず、食品や土壌の検査と並行して行っているので、今回の調査は平成23年12月始めからから平成24年2月末までかかった。

尿中の放射性物質量の測定後、子どもの1日の尿量、年齢等の条件から、健康影響(預託実効線量※で評価します)を〇〇ミリシーベルトという単位で算出し、専門家に評価を依頼。その結果、2013年1月25日に開催した有識者会議(第2回)において「放射性セシウムによる健康影響は極めて小さいと考えられる。」などの評価が得られた。

①放射性ヨウ素:全員不検出(検出限界0.3~0.9Bq/ℓ程度)

②放射性セシウム:ほとんどの子どもが減少(多くは1.0Bq/日未満)前回調査時以降の預託実効線量追加分は全員0.01mSv未満

③放射性カリウム:多少の増減があるものの前回調査時とほぼ同様

1回目は、セシウムが0.03ミリシーベルトの子どもがいたが、今回の検査結果は、全員が0.01ミリシーベルト未満。だから、おおむね減少とみて、「甲状腺超音波検査は現時点では必要ない」とする見解を岩手県放射線内部被ばく健康影響調査有識者会議の7名は出した。と言うことです。

iwatesenryou子どもはセシウムの排出が早く、約30~40日(大人は約70~100日)で半分が体外に排出されていきます(生物学的半減期)。そのあと摂取していなければ、1ヵ月経てば半分が減り、また1ヵ月経って半分が減りというようにだんだんなくなっていくというのが理屈です。でも、慢性的に摂取していれば、体内に残る分が減らずに、増えていくはず。

2011年よりも低い数値になったものの、空間線量の高い地域での呼吸、地表面のセシウム沈着量が高い地域での、農産物、酪農飼料、飲料水などからの内部被ばくへの不安をぬぐえません。原発事故現場からはまだ、放射線は出続けているし、放射性物質を含んだ冷却水も海に流れ出ます。燃料棒も取り出せずにいますから、地下水への汚染も考えられます。

 

「チェルノブイリ事故による長期低レベル放射線被曝がもたらす膀胱ガン」

については、すでに尿中セシウムとの関連性が確認されています。

空間線量の高い地域では、検査を継続的に行っていく必要があるように思いませんか?

 

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排出された放射性物質はどこへ行くのでしょうか?下水処理されて川や海へ?

すぐに空気中へ自然消滅していくものではないので、循環しているわけです。

日本各地で除染され集められた汚染土は、コンクリートで固めて、処分場に捨てるのですが、その場所からは、放射性物質が出るので、どこにするかが問題です。どこの市町村もいやがります。岩手県内でも、未だ決着がついていません。

「除染」じゃなくて「移染」するだけ。

これとは別に、被災者4万人の健康調査を「いわて東北メディカル・メガバンク機構」が今春から実施し、震災ストレスと発病の関連性を分析し、その結果を踏まえて、沿岸被災地へ医師の派遣や、被災者の健康指導に当たり、地域医療の復興の一助をになうといいます。この場合、放射能の問題と震災の問題を切り離して考えることになるでしょうが、瓦礫焼却や復興工事に伴う大気汚染、三陸沿岸海洋水の汚染などの問題もあり、線引きは非常にあいまいで、難しい気がします。

加えて、このような、調査や検査実施には、かなりの費用がかかるものです。それも東電が保証するのでしょうか?少なくとも県の検査や処理にかかる費用は、税金が使われます。

汚染物、汚染土、汚染水の処理、被爆地の農家や産業への賠償、被爆者の健康被害の対応などなどこう言った費用も含めれば、かなりの税金が費やされることになります。

一見クリーンで安全とイメージされていた原子力発電。岩手県には原発はありませんが、福島県での事故がこの状態です。岩手にもっと近い青森県には、原発の他に、高濃度の放射能を含む核燃料サイクル施設があります。そこでは原発1年分の放射能を1日で出すと言われ、大量の放射能が環境中に放出しています。三陸の被災地沿岸に直接つながる海にも排水は流されます。

低レベルの放射線を受け続けていると、流産や出生異常、白血病の発病などを招くと言われます。検査結果に安心することなく、これからどういう症状や変化が出てくるのか、しっかりと注目して、問題提起をしていかなければなりませんね。

 

※預託実効線量とは・・・内部被ばくの場合、「預託実効線量」という用語を使用します。これを単に「実効線量」と言うこともあります。外部被ばく線量を考える場合、放射線にさらされた期間だけを考えればよいのですが、内部被ばくの場合は、放射性物質が体内に取り込まれてから排泄される、もしくは、減衰する(例えば、ヨウ素131の場合は8日で初期の半分になります。)まで臓器が放射線にさらされるので、その期間の線量を計算する必要があります。放射性物質によっては数年間、体に留まり続け、放射線を出し続けるものもありますので、成人の場合は摂取してから50年間に受ける線量を積算します。しかし、それを、「最初の1年間ですべての線量を受けた」として○mSv/年と表します。これが「預託」(貯蓄:一度に預けた)ということです。

 (2013年2月25日 記)

カテゴリー:岩手から発信せよ / 特派員 / 連続エッセイ

タグ:脱原発 / 原発 / 放射能汚染 / 桜川ちはや / 岩手県