2013.04.01 Mon
脱原発 岩手から発信せよ! NO.5 約18800名の尊い命を奪った津波の地震と被害がでた東日本大震災から2年がたちました。3月11日には、各地で追悼式が行われ、改めて犠牲者のご冥福と、復興への決意を表明しました。震災直後にしばらく放射能被曝を恐れて、関西地方に逃げていた小沢一郎氏も、達増知事と共に、大槌町の追悼式に出席しました。 「復興」とは、破壊されたインフラを整え、道路を作り、流された建物を立て直し、住民の仕事を再開させて、普段の暮らしを取り戻すこと。今、岩手の求人票は、「土木土建業」が多いです。復興景気到来です。その業界に強い政治家もさぞ忙しいことでしょう。 しかし、地盤が沈んでしまった所や、以前の住居が浸水地域であった人たちは、またそこに建物を建てるわけにはいきません。職場を失った人は、戻ってきても暮らしていけません。沿岸被災地は、漁業関係の生業の多い地域で、過疎化も進んでいます。第一次産業の廃業や、人口流出は免れません。 その中で、漁場の復興ができる地域では、ワカメや、ホタテ、ホヤ、ウニ、カキなどの養殖場を再建し動き出しています。 先日大槌町に行きましたら、おかみさんたちが、「津波でヘドロが陸に打ち上げられたので、海の底がきれいになって、ホタテもワカメも発育がいい」と喜んでいました。早速、初物のワカメを買ってきました。プリプリで美味しいワカメでした。 これをたくさん買って、首都圏の知人に贈ろうかな?そうすれば、復興のPRにも、支援にもなるからと考えたのですが、大手旅館経営の知人が、「三陸産は放射能汚染が怪しいので、いやがる方もいるからねえ。福島と岩手が離れているって説明しても、海は繋がって、流れているからなかなか厳しいよ」と忠告してくれました。 海洋汚染の調査では さて、福島第一原発事故で放出された大量の放射能は、大気によって移動し、雨になって山林や大地に降り注ぎ、川に集まり、海へと流れてきました。まだ、それは、今も、続いています。各地の「除染作業」もまだまだ手間取っている現実です。 環境省HPには、海洋汚染のモニタリング調査結果資料があります。 仙台沖海水の表層0.5mで0.08ベクレル/kg(放射性セシウム合計)、海底21mで0.087ベクレル/kg(放射性セシウム合計)、海底土では1740ベクレル/kg(放射性セシウム合計、23m)もあります。ストロンチウム90も仙台湾で海底土から0.16ベクレル/kgも計測されています。(環境省 被災地の海洋環境の第3次モニタリング調査結果 2012年4月13日 データ参照) 陸に落ちた放射性物質が阿武隈川、名取川によって、仙台湾へと運ばれ、沿岸流によって三陸の海まで汚染されています。HPの第1次モニタリング調査(2011年6月3日~10日)と比べると、第3次モニタリング調査(2011年12月6日~12月26日)につれて、汚染が深刻になってきているのがわかります。 半減期が30年と言われる放射性セシウムや放射性ストロンチウムによる残留放射能が海底に降り積もり、魚介類が基準を遥かに超える放射能汚染に晒されていることは明確です。また、海洋生物の食物連鎖により、生態系における放射線物質による濃縮※は深刻な状況に益々進んでいきます。 出荷制限線引きに疑問
「定置漁船の水揚げで活気づいてきた大船渡市の大船渡魚市場では、陸前高田市の広田湾漁協のスズキだけが取り除かれている。宮城県沖に採れたマダラ、スズキ、クロダイから基準値を超える放射性セシウムが検出されたことで、出荷制限の水域区分ラインがちょうど広田湾のものも停止になった。 ところが、岩手県漁連が行うウニ、アワビ、養殖ワカメ、カキ等からは、不検出だった。 同じ三陸南部でも、広田湾漁協漁獲のマダラからは、基準超過はなかった。 出荷制限の影響は大きく、機械的な地図上の線引きだけで、現状を見ない制限に、漁民は納得できない。 一方、大船渡の水産加工会社では、震災前は、ロシアとエジプトにそれぞれサンマ約2000トン、サバ約1000トン以上を輸出していたが現在は皆無。両国政府が三陸産の魚介貝類に厳しい放射性物質規制を掛け、輸入禁止をしているためである。風評被害である。」 (岩手日報2012年11月22日記事による)
2011年の被災地当時、漁港の加工工場が破壊され、冷凍された、何千トンものサンマやサバやサメなどが街中にばらまかれ、それが腐って悪臭を放ち、その回収だけに何百人ものボランティア隊が結成され、ウジ虫のわいた魚の回収が人海戦術でなされました。参加した友人によれば、全身がメタンガスで覆われたようになり、移動のバスも、宿泊施設も、銭湯もすさまじい悪臭で、体調不良で嘔吐や貧血などで、倒れてしまった人もいたと言います。 筆者も被災地へ入った時に、ヘドロのような悪臭が鼻をつき、養殖棚の網に結わえられた大量のホタテや、ワカメが建物に引っかかったまま腐り、ハエがたかって、街中がヘドロとメタンガスの臭いが立ち込め、足元には瓦礫に混じって、死んだ魚があちこちに散らばっていたのを見ました。 それらが片づけられ、ようやく工場も立て直され、再開したのにも関わらず、放射能汚染で出荷制限、輸出禁止とは・・・。 汚染の広がり危険視を 環境省は、HPで公表しているといいますが、その数値から、この海域の底魚が高い濃度に汚染されていて、海洋の放射能汚染が広がっている事実をしっかりと公表し、放射能汚染された魚を摂取することによる内部被ばくの危険性を国民に正しく伝え、特に漁民とその子どもたちの健康被害についてきちんと対処する必要があります。その上で、港湾施設や、漁船、養殖、加工施設の復旧を行っていくべきです。 「せっかく魚を採る喜びを取り戻したのに、水を差すようなもの」「風評被害に油を注ぐようなもの」「三陸産が売れなくなる」という懸念もあるでしょうが、「一番大切なのは、命だ」と今回の震災で学んだはずです。 原子力発電は、なぜ海の近くに作るのでしょうか?それは、冷却水を大量に必要とするからです。発電所から排出される冷却水は、微量の放射性物質を含みます。それが、恒常的に海に何トンという単位で、流されるのです。しかも、冷却した水ですから、温度が何度か上がっているわけです。原発周辺の海の温度を温暖化するわけですから、自然界の生態に何らかの影響を与えていることは確かです。 老朽化や、点検で一時稼動停止している原発からも、大量の冷却水は流れ出ています。 スイッチを止めたからと言って、すぐに止まらないのが原子力発電だからです。事故にあった福島原発だけと言うのではなく、日本列島に50数基もある原子力発電所周辺ですべての場所に繋がる問題です。 かねてから、原発近くでは、巨大化したり、背骨が曲がったり、ヒレが縮んだり、なかったり、目が飛び出ている魚など奇形魚たちが釣れることはたびたびうわさされていました。 そこで思い出したのが、筆者が、大学生だった1986年頃(ちょうどチェルノブイリ原発事故のあった年の周辺)、週末だけ安く売り出すスーパーマーケットでアルバイトをしていた時の事です。冷凍食品の中に、シシャモが何匹もブロックになったものがありました。アルバイト仲間の一人が、安かったので、買って帰って解凍してみたら、全部頭が二つに分かれた奇形魚ばかりで、びっくりしたそうです。確か、ロシア産でした。筆者も見ました。気持ち悪いので、捨てましたが、これが、魚肉のミートボールにされて売られていたら、気付かずになんの疑いもなく食べてしまうことでしょう。 このシシャモが放射能汚染されたものだったかは、今となっては、分かりませんが、皆さんご存知のビキニ湾水爆実験で被ばくした第五福竜丸事故。あれからのちも、何度も水爆実験は行われています。だから、被爆した魚たちはたくさんいるわけで、未だそれを禁止する大国政府の動きはありません。 除染は、「移染」でしかありませんから、汚染物は水に流せばすっきりなくなることなどありません。除染作業で流している洗浄のための水は、側溝を通って、川に運ばれ、海に注いでいきそして、どんどん蓄積されていきます。 汚染魚介を食べることで、内部被ばくがおこり、DNAの構造を断ち切って様々な健康被害をもたらしていくことは危険視すべきです。また、人類よりもはるか昔から生息している何の罪もない海洋生物たちが、人間のせいで犠牲になっていくという問題も大きいです。ただでさえ、地球温暖化や、有害物質を含んだ工場廃水などにより、絶滅していく海の生き物たちが増えているというのに。 このままでは、近い将来、人間も「絶滅(自滅)危惧動物」になっていきます。 まずは、海の放射能汚染の事実を伝え、計画的な対策をし、漁業と漁民の暮らしを保護していくことです。また、われわれ消費者も安易に「三陸の魚介は危険だから食べない」と決めつけてしまうことなく、危険はどこの海でもあることを知り、その根本の問題に注目し、考えや、意見を投げかけて行きたいです。 (2013.3.20記) —————————————————————————————————– シリーズ「脱原発 岩手から発信せよ」は、毎月月初めにアップ予定です。 シリーズをまとめて読まれる方はこちらからどうぞ。