2013.05.06 Mon
特集上映「憲法の話をしよう」――『ベアテの贈りもの The Gift from Beate』&『映画 日本国憲法』
是恒香琳
・東京・ポレポレ東中野にて、5月10日(金)まで限定ロードショー
・大阪・シアターセブンにて、5月10日(金)まで限定ロードショー
憲法はただの言葉だ。しかし、その言葉を拠り所にして、現実社会を闘って生きてきた人々がいる。『ベアテの贈りもの』は、そうした憲法の存在がよくわかるドキュメンタリー映画だ。
14条「すべての国民が、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係に置いて、差別されない」
24条「婚姻は両性の合意にのみ基づいて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」
という言葉を、ベアテ・シロタ・ゴードンさんは日本国憲法草案に加えた。ベアテさんはGHQスタッフとして、憲法草案作成に関わった女性である。
映画には、ベアテさんの家族の物語、憲法草案作成のいきさつ、そして、この言葉を実現するために闘った日本の女性たちが登場する。
住友電工男女賃金差別訴訟の原告の一人、西村かつみさんは
「差別を受け続けると、自分でも自分を貶める」
「外からも圧力があるっていうことで、結局自分の言いたいこと、人間の尊厳みたいなことに対して、言えなくなる」
と語る。
西村さんにとって、闘うことが、人間としての尊厳の回復だった。大臣や、博士、社長になるという出世だけが、女性の地位向上ではない。お前はダメな人間だという視線を跳ね返して、おかしいこととは闘い、自己実現をしていく力を、ベアテさんは贈ったのである。
今、私がこうして自由にものを言い、自分の人生を自由に生きようとすることが許されたのは、こうした女性たちのそれぞれの闘いがあったからである。こうした歴史の文脈を理解した上で、憲法の言葉を生きていきたい。
自民党は、憲法96条の「改定」を、7月に行われる参院選の公約に掲げる構えだ。憲法96条は、改憲発議に衆参で3分の2以上の賛成が必要と、定めている。それを自民党は、過半数に緩めたいと言う。
96条の改定に成功したあかつきには、現憲法は破棄され、昨年4月に発表された自民党の憲法草案に書き変わることが、現実味を帯びてくる。
ところが、今、書き変えられようとしている日本国憲法が、どういう歴史を背負い、どういう性質のもので、どのように現代社会を支えてきたのか、よく知らないまま、議論もされず、参院選を迎えようとしている。
同企画で『映画 日本国憲法』も上映されている。この作品では、ベアテさんが、鈴木安蔵をはじめとする市井の憲法研究会の草案を、運営委員会のメンバーが読み込んだと証言している。憲法が、長い時間と、たくさんの人々を経て、蓄積・濃縮されていった智慧だと実感する。ジョン・ダワー、C・ダグラス・ラミス、日高六郎、チャルマーズ・ジョンソン、ミシェール・キーロなど世界中の知識人が登場し、世界的視野のなかで、憲法の歴史的位置づけを語る。
ベアテさんは『ベアテの贈りもの』の中で「日本国憲法の本当の作者は、歴史の叡智」と語っていた。国内の政治的駆け引きではなく、広い視野を持って日本国憲法について考えたい。
・ドキュメンタリー映画
『ベアテの贈りもの』
(藤原智子監督/2004年/カラー/92分)
・記録映画
『映画 日本国憲法』
(ジャン・ユンカーマン監督/2005年/カラー/78分)
・特集上映「憲法の話をしよう」公式サイトはこちら
・東京・ポレポレ東中野のサイトはこちら
・大阪・シアターセブンのサイトはこちら
スチル:(C) 2005 SIGLO
写真:是恒香琳
(日本女子大学文学部4年 是恒香琳)
カテゴリー:新作映画評・エッセイ
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