エッセイ アクション

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ちぐはぐな賠償問題だべ 桜川ちはや

2013.06.07 Fri

                                      岩手から発信せよ!7

先回お話を伺った農家の方から、御手紙が届きました。

「農業問題とは、関わりのない方々が農家を応援、支えて下さること、とてもありがたく思います。先ごろ東電の担当者が、我が家に来ました。麦藁の問題、肉牛の賠償問題等々話し合いましたが、あの人達には、結局生産するものの、苦労や思いは分かるはずもなく、時間がもったいないので、帰ってもらいました。また来るとの事。

息子たちは農業を継いでくれましたが、孫たちには、絶対やめなさいと言いたいです。生きてきた50数年、農業、農家にとって、良いこと等なかったような気がします。政権に振り回されて、原発放射能汚染にあい、自分たちに、関係のないものに足元をすくわれ、どれほどの人たちが、首をつったんでしょう。こういうことは、東電の人たちにも話しましたが、わからないでしょうね」

岩手県によると、県内有人産直277施設中、3月現在で、47施設が、原発事故に伴う出荷制限や、風評で、販売額減少のなど被害を受けた。内、10施設が賠償請求し、請求額は1700万円。賠償金を受けたのは3施設の600万円のみ。山菜類の賠償請求は、放射能国基準値を超え、出荷停止となった品目の逸失利益や検査費等が対象です。

一言で、賠償請求と言いますが、この請求書作成の負担がかなりあるのです。だって、一袋100円前後の産直野菜たちが、何種類もあるわけです。しかも産直に卸している農家は数あるわけです。ところが、販売できなかった山菜などの販売手数料は、他の加工食品などの売り上げでカバーした場合は、請求対象外とされるなど厳しい対応に産直側は苦慮しています。

そもそも、売り上げを確保できたのは、被害者側の努力です。また、風評被害解消のために行った、野菜や土などの検査費用分は、認められないのです。そういうことも無視して、売上数字の上だけで判断しようとするのは、合点がいきませんよね。

東電側は、「個別の案件については答えられないが、説明会などで相談に応じ賠償手続きが迅速に進むように努める」としている(2013年5月15日付 岩手日報新聞)

その説明会ですが、出席した知人によると、最初は双方の言い分を聞いているのですが、そのうちほとんど喧嘩になってしまって、らちがあかなかったらしいです。東電は、「山菜や、きのこを採らなくても、食べなくても暮らせるでしょう」って言うのですよ。まるで、マリーアントワネット。「パンが食べられなければ、おかし食べればいいじゃないの」ですよ。「まったぐ ちぐはぐだべ」。

ヤマミツバ岩手は、春になれば、ウルイ、ミズ、フキノトウ、ギョウジャニンニク、バッケ、タラノメ、ウコギ、ウド、ハワサビ、ヒメタケノコ、クレソン、セリ、ボウナ、ヤマミツバなどなど豊富な山菜が店先にあふれ、ようやく訪れた春をめで、味わいます。秋になれば、形も香も色とりどりのきのこです。高価なマツタケだってとれますから、それらで暮らしている人はたくさんいるのです。

季節感のない都会で暮らすエリートサラリーマンにはわかるはずもない暮らしです。

岩手県の風評被害の賠償問題は、一向に進まぬようです。

 

さて、よく「町の活性化」の議題に、「安全安心な食材の提供」「地産地消の素晴らしさのPR」と言いますが、それが、根本からくつがえされてしまうのが、放射能被害です。

わんこ兄弟よく町おこしで使われる「ご当地ゆるキャラ」では、その町の特徴ある地産農産物がモチーフに成りますよね。例えば、岩手では、「わんこ兄弟」。生産量日本一を誇る漆を使った、岩手の「漆器」をかけあわせた「そばっち」。また、県内を5つのエリアに分け、それぞれのエリアを代表する食材を盛り付けたキャラクター「こくっち」「とふっち」「おもっち」「うにっち」の、全部で5人兄弟。

そのほか、県内の市町村では、独自に、米、雑穀、肉牛、かぼちゃ、鮭、花、などがキャラクター化されています。

そこで、地元に就職希望する学生たちに、「岩手の良さは何?」と聞くと、「豊かな自然と、豊富な食材、伝統郷土芸能、暖かい人情など」と口をそろえて言います。じゃあ、農業従事者になって、それをもっと盛り上げたいと思うかと聞けば、みんな「農家はやだなあ」と口を濁してしまいます。

震災から3年目の今、東京より西の地域では、巷に物があふれ、夜も煌々と電気がついて、町の飲食店街は賑やかです。まるで震災なんかなかったかのように。

少なからず、岩手に住んで、こういう事実を見聞きし、日々考えている私には、どうもそれがアラビアンナイトの幻の国のように思えてならないのです。千夜が一夜で消えてします危機感を内在している国。

メーデー盛岡1

(2013.5.1メーデー行進 岩手県庁前)

 原発再稼働や、原発輸出で景気回復を狙うのは、どうも魔法にかけられていくようで不安になりませんか? 私たち国民の多くは、3.11以前は、原発に対して、あまり危機感を持っていなかったのですが、今は、違うはずです。あのとき国土の上に確実に、放射能は降り注がれたのですから。

(2013.5.30記)

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シリーズ「脱原発 岩手から発信せよ」は、毎月月初めにアップ予定です。 シリーズをまとめて読まれる方はこちらからどうぞ。

カテゴリー:岩手から発信せよ / 特派員 / 連続エッセイ

タグ:脱原発 / 原発 / 桜川ちはや / 岩手県