2013.06.20 Thu
娘が結婚17年目の40歳をすぎて思いがけず子どもを授かり、その1年後に離婚、シングルマザーとなった。そうして天からやってきた孫娘は、もうすぐ3歳。第一反抗期の真っ最中だ。
子どもは7歳までは天の世界と地の世界を行ったり来たりするという。
その境界を軽々と超え、またこの世に戻ってくる。こころと身体の成長とともに、やがて大人になれば、向こうの世界を忘れて現実世界にしか生きられなくなる。ちょっと残念だけど。
彼女をみていると「ああ今、想像の世界にいるんだな」と思うことがある。彼女にとってはそれがほんとうの世界。そして覚えたばかりの言葉をつないで向こうのできごとを語ってくれる。
「あのね、ママと雲に乗って、ねんねの国へいってきたよ」「そう、よかったわね。何をして遊んだの?」「うんとね、お日さまに『こんにちは』をして、お花とお話してきたの」
ちょっと聞いてみたくなって「ゆいちゃん、ママのおなかの中にいるとき、どんな感じだった?」「うん、おなかの中で音楽が聞こえてた。ママの声も聞こえたよ」と、しばらく考えてからニコッと笑って答えてくれた。
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大村祐子著『子どもが変わる 魔法のおはなし(ペタゴジカル・ストーリー)』(ほんの木)は、そんな子どもたちと大人とのかかわりを見事に描いている。子どもたちへのお話の大切さを込めて。
著者は米国カリフォルニア州サクラメントにある、ルドルフ・シュタイナー・カレッジとゲーテの科学・芸術コースで学び、現在、北海道伊達市でシュタイナー思想を実践する「ひびきの村」代表を務めている。
子どもたちにお話をするとき、本を読んであげるとき、音楽を聴くとき、自然のなかにいるとき、子どもは、じっと耳をすませ、目を輝かせ、空想の世界に生きている。
眠くてぐずっているとき、もっと遊びたくて帰りたくないとき、あれがほしいとダダをこねるとき、ママがストレスフルになるのは、よくわかる。よくまあ、これだけ言うことを聞いてくれないと、子どもが怪獣のようにみえてくることもある。私だって40年前、そうだった。
ダダをこねると、「となりのトトロ」のメイちゃんになりきって「お姉ちゃんのバカあ」と泣いてみたり。遊び足りなくて帰らないときは、「時計の長い針がここまできたら帰ろうね」とカウントダウンして、ようやく説得。いろいろ作戦が必要になる。
そんなとき、ちょっと子どもの気持ちになって想像してみよう。この子は何をいいたいのかなと、立場を変えてみる。そしてしっかりと目を見てお話しすると、不思議なことに、「ママは、わたしのことわかってくれたんだ」と、きっと納得してくれるはず。
40年前の育児と今の子育てと、時代はずいぶん変わったけれど、親と子の関係はそんなに変わらないと思う。ただ、今の親たちは若いとき、自由に活躍してきた分、思うにまかせぬ子どもを目の前にして、戸惑い、しんどい思いを募らせてしまうのだろう。ママ友たちとの交流やネットのしゃべり場で、少しはストレスを発散しているのだろうけれど。
晩婚化が進み、高齢出産が増えているからといって、国が進めようとしていた「女性手帳」配布なんて、とんでもない。女性たちの反対に押し切られ、内閣府「少子化危機突破タスクフォース」の提言には盛り込まれなかったものの、まったくもう、「いらぬおせっかい。ほっといて」といいたくなる。
6月はじめ、九州からやってきた90歳になる私の母と3歳の孫をつれて、和歌山・白浜の温泉とアドベンチャーワールドに出かけた。
梅雨の晴れ間、孫娘は白良浜の真っ白い砂浜を裸足で駆け回り、サファリツアーで、ライオンやトラ、シマウマやゾウを間近にみて、キリンやサイにユリイカの葉を手で食べさせ、キリンの舌にペロッとなめられてキャッキャッと笑って喜んでいた。パンダやイルカショーにも大興奮。動物たちとの1日を満喫したようだった。
そして母もまた楽しそうに過ごしてくれていたのに、翌日、日記を書こうとして、「昨日、どこへ行ったのかしら?」と聞く。「ああ、もう忘れてしまったんだ」とハッとする。それも自然な老いの道のり。私もいずれいく道だ。「母にとって、そのときどきが楽しければいい」と思うことにした。
記憶を忘れていく人と、知恵を覚えていく子と。これからも二人にとって、いい関係をもち続けていきたい。それが私と娘の責任と義務なのかなと思いつつ、少々くたびれたけれど、小さな旅を無事に終え、「くろしお」に乗って京都への帰途についた。
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