エッセイ 原発ゼロの道 アクション

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壊れて汚してその果ては 桜川ちはや

2013.09.01 Sun

                          岩手から発信せよ。 No.10

 放射能除染をどうするか。その作業をする人の健康、処理施設の安全性、残灰の適切な処理などどれもまだ明確な解決には及んでいません。

そんな中、幼い子どもを持つ母親たちでつくる盛岡市の団体「子供達の放射線被ばく低減化を推進する盛岡の会」が、学校や幼稚園などの敷地内で、空間放射線量の高い場所の除染基準の見直などを求める要望書を谷藤裕明市長宛てに提出し、市議会で取り上げられ、3月に採決されました。県によれば国より厳しい独自の基準を設定したのは県内の自治体では初めてです。

「盛岡市は空間の放射線量の除染基準を引き下げ、従来の「日常の生活空間毎時0・23マイクロシーベルト以下」、「雨どいの下など局所的に高い空間同1マイクロシーベルト以下」をいずれも「毎時0・19マイクロシーベルト以下」とした。県内市町村では最も厳しく、全国でもトップ級の厳しさ。大幅引き下げとなる局所的空間では基準超えが相次ぎ、今後多数の施設を除染することになる。

 市環境企画課によると、市内の小中学校、保育所、公園、学童保育クラブなど878施設を昨年測定したところ、従来基準を上回った施設はなかったが、新基準に照らすと局所的空間では164施設が上回った。

 基準引き下げに伴い、市は今年6月から、廃止した1施設を除く163施設を再測定。これまで測定を終えた約70施設の約7割に当たる約50施設が局所的空間で0・19マイクロシーベルトを超え、同課は「相当数の施設が新基準を超える」とみている。土壌調査は今月から学校や公園約270施設で行い、数値を公表する。

 市は5月に基準を引き下げたが公表していなかった。市環境企画課の桜正伸課長は「従来の基準でも健康に悪影響を及ぼすことはないが、不安に思う市民のためより安心感を高めようという措置」と語り、公表しなかったことについては「測定の途中であり、除染の規模や方法を見定めた上で公表したいと考えていた」と説明する。

(岩手日報2013/07/26)

 盛岡市は9月中に調査を終えて基準を上回った施設については今年度中に除染を終えたいとしています。一方、基準を引き下げるのは市が管理する施設に限られ、私立の保育園や学校については、要望があれば放射線量の測定は行うものの、市は除染を行わないということです。

 すこし、安心感が増した気持ちになりますが、ここで、気になるのが、除染です。

 まず、目の前の放射線量は、減るでしょうが、それは、移動するだけでどこへ行くのかということ。

 盛岡市小鳥沢にある「盛岡市クリーンセンター」では、「岩手県災害廃棄物処理詳細計画」に基づき,宮古地区(宮古市,山田町,田野畑村,岩泉町)の可燃系混合物の焼却処理を行っています。
 2011年11月から2012年1月までにかけ,岩泉町で手選別された木片などを3回に分けて受け入れしたほか,2012年2月から2013年7月まで,宮古市および山田町に設置された破砕・選別施設で処理された木くずなどを受け入れし,焼却処理を行いました。そこでは、放射染料のモニタリングも行っています。

ごみ処理場このように岩手県内一般のごみ処理施設での焼却灰のセシウム濃度が測定されています。http://www.env.go.jp/jishin/attach/waste-radioCs-16pref-result20110829.pdf

(以下要約表を参照)

岩手県放射線量

環境省は、1万㏃/㎏以上の汚染物質を扱う場合、「放射線障害防止法」適用するとしていますが、表でみれば、胆沢、一関地区はそれに値する数値がでています。恒常的に放射線物質を扱う施設ではないので、施設自体に特別な処置がされているわけではないでしょう。そうなれば、そこで働く労働者の被ばく対策はされているかどうか。

また、これらの施設から出る残灰土、排煙、排水、などのゆくへは、他のごみの物と区別されているとはとうてい思えません。セシウムは300年の管理が必要とされるのに。雨水や、地下水への影響もあるはずです。

 特に、処理施設の周辺にある小中学校、保育所、公園、学童保育クラブなどは、再び低濃度の被ばくを長期にわたって受けて行く危険にさらされるわけです。それが、私立の施設だった場合、徹底して、除染調査、処理が出来るのでしょうか?

 除染基準を厳格化したのはいいですが、その結果をどう処理していくのか。

これらの点について、前出の「子供達の放射線被ばく低減化を推進する盛岡の会」の方から回答を頂きました。

「盛岡市は他市よりも詳細に一校一校線量調査しておりましたので、除染基準を引き下げた場合に、どの学校のどの箇所が該当するのかすぐ把握出来ました。
その調査結果から、大規模な除染の必要性はないこと、しかし、学校敷地内に高濃度土壌があることは教育環境上好ましくないことを説明し、
国際的な考え方(ALARAの原則)からも、「出来うる範囲で可能な限りの被ばく低減化をめざす」という考え方を基本とすべきと主張しました。
現在の盛岡の線量ならば、少しの努力で0.19に引き下げる事は十分可能であり、また、徐々に引き下げていくのが基本的な対応だと説明しました。
そのように、詳細な調査と根拠に基づいております。
盛岡市としても、理論的根拠の無いものは受け入れ難いはずです。

また、学校の除染で発生した汚染土壌は敷地外には持ち出しません。その場で天地返しが基本的な作業です。
盛岡市では剪定枝や落ち葉などは、除染作業の対象とはなっておりませんので、汚染の多少に関わらず、除染とは無関係に普通に処理されています。
なので、処理方法はあいまいではありませんし、除染物がクリーンセンターに持ち込まれるというのは事実ではないので誤解を招くと思います。
あくまでも、盛岡市の場合は、地表5cmで0.19μSVの箇所があった場合、その箇所のみを天地返しという対応になっております」

 とのことでした。

また、私立の教育等施設での除染については、

「各自で除染だとしても、線量調査は市から線量計を借りてくればよいので「タダ」です。また、土壌を調査したい場合も、市の機械で「タダ」で測定出来ます。
盛岡市の場合、私共が実現させた土壌調査により、校庭に関しては採取深度5cmで最高濃度でも400~500ベクレルです。地域的にも予測の範囲内でした。
その結果をどう受け止めるかは、個々人のものさし次第でしょう。
校庭で400~500ベクレルであれば、軒下や雨樋下では数万ベクレルだと考えられますが、そういう箇所は、地表5cmの空間線量で0.19以上ある場合が殆どですから、市の施設だと除染対象となっています。事故後すぐから自主的に対応している施設もありますが、幼稚園などの場合は敷地面積も広くないので、保護者と先生方が少し汗を流せば十分対応可能ではないでしょうか?
PTAの自主的環境整備活動で十分対応可能だし、除染マニュアルを作ればいいだけだと、「お金がかからない」ということは市にも説明してあります。」

ということでした。

関心を持って、注目し、問題意識を持ち続けることが、これからは、肝心です。

 福島原発で高濃度の漏えい汚染水発覚

 2011年3月の事故ばかりではなく、核を扱う施設や、原子力発電所周辺でも、放射能漏れは、恒常的に起こっていると考えられます。事実、原発施設の冷却水や、地下水には低濃度の放射性物質が含まれていて、放流される周辺の海では、たびたび基準値を超えた魚が水揚げされて、出荷規制になっています。

 2013年8月になって、漸く明るみにでた、福島原発からの漏えい汚染水300トンには、8000㏃/㎏という高濃度の放射性物質が含まれていました。そこにはストロンチウム90というβ線をだすものがあり、それは、半減期は29年、体内に入ると骨に蓄積して、放射線を出し続け、ガンや白血病をひきおこす恐ろしいものです。漏えい汚染水タンクの周辺では、みずたまりがあちこちにでき、無造作に土嚢が積まれている状態。そこで作業員が作業している様子が、視察した調査員から指摘されました。

 これだけの量が、一気に流れでるわけがなく、じわじわと被災時から漏れ出ていたはずです。隠し続けていたことがばれるところまで、はっきりしてしまい、遂に公表したようにも思えます。いままで、東京電力が、謝ったり、努力するといったり、対策していると言ったのは嘘だったことになり、海洋汚染は、深刻さを増し、全漁連が東京電力に対し、重大な裏切り行為と抗議し、漁業者の怒りと不信感を増幅したわけです。

 今後は、汚染された海底を液体ガラスで覆う、凍結土にするなどしていくらしいですが、ゼネコン各社に300億円から400億円の予算で検討が持ちこまれていると言います。そんなこと到底すぐに実現するとは思えません。海洋生物たちは被ばくしたうえで、皆殺しですか?そして、私たちも病気になって死んでいくのを待たれているようでなりません。

 海から、空から、地面から、拡散された放射性物質が、地球を蝕んでいきます。それを生み出すものを根だやしにするしか方法はないでしょう。でも、私達には、その方法は未だに見当たらないのです。

 日本は、原発の輸出を考え始めています。それならば、事故処理や、安全対策を万全にしたうえで、海外に売り込むべきです。自国の問題はうやむやにしたまま、無責任な提案といえます。

 先日、私が、岩手県沿岸に被災地支援にいった帰りの電車の中でしゃべっていた男性は、大阪からの震災がれき処理業者でした。聞くともなしに耳に入ってしまったその会話、

「遠くからきてたいへんですなあ」

「忙しゅうて忙しゅうてかなわんですわ。せやけど仕事やさかい」

「でもこのご時世でも、はぶりいいと違いますか?儲かりますでしょ」

「いやいや」とニヤッ。

原発の廃炉や、事故の処理、放射性物質の処理には莫大な費用と時間がかかります。そのお金はどこから出て、どこへ流れるのでしょうか。税金から出て、原発開発に携わった大手ゼネコンへまた?

「じぇじぇじぇ!だば、壊して儲ける軍事産業とおんなじでねがあ!」(2013.8.29記)

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シリーズ「脱原発 岩手から発信せよ」は、毎月月初めにアップ予定です。 シリーズをまとめて読まれる方はこちらからどうぞ。

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タグ:脱原発 / 原発 / 放射能汚染 / 桜川ちはや