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【新作映画案内】『ドストエフスキーと愛に生きる』  中村奈津子

2014.01.09 Thu

「ドストエフスキーの小説には美しい宝石がつまっているの」

84 歳の翻訳家スヴェトラーナ・ガイヤーが織り成す深く静かな言語の世界と、紡がれる美しい言葉たち。

 ドストエフスキー文学と共に歩んだ一人の女性の、数奇な運命を追うドキュメンタリーです。

彼女の文学と言葉への信頼に、静かな喜びが広がります。 

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dostevski_main|コピーライトなし

『罪と罰』『カラマーゾフの兄弟』『悪 霊』『未成年』『白痴』、言わずと知れたロシア文学の巨匠ドストエフスキーの長編作品。それらを“五頭の象”と呼び、生涯をかけてドイツ語に訳し た女性スヴェトラーナ。彼女は1923年ウクライナ・キエフで生まれ、スターリン政権下で少女時代を過ごし、ナチス占領下でドイツ軍の通訳として激動の時代を生き抜いた。彼女は、な ぜドストエフスキー文学の翻訳に半生を捧げたのだろうか? 高潔な知性と独自の哲学を持って真の言葉を探す横顔には、戦争の記憶が刻まれている。深く静謐な翻訳の世界、美しい言葉、丁寧な手仕事を繰り返す女性の日常を追う静謐な映像が、文学の力で高められる人の営みを描き出す。

■監督・脚本:ヴァディム・イェンドレイコ
■撮影:ニールス・ボルブリンカー、ステファン・クティー
■録音:パトリック・ベッカー
■編集:ギーゼラ・カストロナリ・イェンシュ
■出演: スヴェトラ-ナ・ガイヤー、アンナ・ゲッテ、ハンナ・ハーゲン、ユルゲン・クロット
■製作:ミラ・フィルム
(スイス、ドイツ/2009/ドイツ語、ロシア語/カラー、モノクロ/デジタル/93分)

★予告編はこちら
★公式HPはこちら

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【本を愛する方々からの絶賛のコメントもご紹介します!】

翻訳の営みそのものが、日常生活のなかでの
細やかな気配りと深くこだましあう。
一つ一つが世界とのふれあいであり、言葉との交感でもあるかのようだ。

亀山郁夫 ロシア文学者 翻訳家(罪と罰、カラマーゾフの兄弟、悪霊)
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翻訳された物語を読むということは、訳者の人生、かれらに関わった人々をも同時に受け継ぐことだ。本作を通してスヴェトラーナはそのことを、まざまざと私に 気づかせた。気づいてしまったことにおののきながら、同じ強度で、これはなんという喜びであるのかと思った。いま自分には、幸福しかありません。

木村綾子 作家・本屋B&B
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世 界中にたくさんのマフラーがある。温もりという用途は同じでも、編む人や編み方によって趣きは様々だ。世界中にたくさんの文学がある。翻訳家は言葉という 糸を検証し、編み目を見極め、模様をためつすがめつ眺める。趣きを変えぬよう、心を砕く。過酷な歴史を凛とした生き様と言葉の力でかいくぐった翻訳家ス ヴェトラーナの人生。この映像の編み物は、僕の心を静かに暖めてくれた。

野村雅夫 ラジオDJ 翻訳家
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青いガラスのような目が「キラツ」と光った時、口元がゆっくり開き「翻訳するのは憧れである」。と言い切った。
 その憧れの「翻訳」の仕事をするために彼女が選んだ種類の人材もまた、独特であり秀逸であつた。スクリーンの向こう側から私達は彼女の命の授業を受けているのである。

北村道子 スタイリスト
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翻訳家スヴェトラーナの生涯を、彼女自身が語る事で、言葉が一つ一つ美しくしなやかな生き物のようだった。
胸が閊えるような情景をも映し出し、それはまるで行間を味わう小説のよう。

道端カレン モデル
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2014年2月22日(土)より、
渋谷アップリンク、シネマート六本木ほかにて全国順次公開

(2011年山形国際ドキュメンタリー映画祭市民賞インターナショナル・コンペティション部門2冠受賞. 原題『5頭の象と生きる女』)

カテゴリー:新作映画評・エッセイ

タグ:仕事・雇用 / くらし・生活 / ドストエフスキー