エッセイ

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調停と審判が同じ裁判官なのは? 審判に不服のときは?【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-9(34)

2014.06.18 Wed

【打越さく良の離婚ガイド】NO.3-9(34)  

調停と審判が同じ裁判官なのは? 審判に不服のときは?

調停と審判と同じ裁判官だった。異なる結論が出るとは思えないのだが? 

審判が出たが不服である。どうしたらいいか?

◎ 調停と審判と同じ裁判官が担当…?結論は同じ…?  

調停委員会から勧められた案に納得が出来ないから、審判で判断を求めたい。でも、調停委員会を構成する裁判官が、審判も担当する?それなら、同じ結論になるの?疑問に思いますよね。

裁判官も調停委員会の一員ですが、たくさんの事件を担当していて、始終調停に出席してはいませんが、調停の記録は目を通していますし、調停委員と随時打ち合わせをしていて、事案のことはよくわかっています。調停委員会として調停条項案を出す場合、もちろん、調停委員のみならず裁判官も検討して意見を一致させた上で出しています。

弁護士が非常勤裁判官として調停を担当している場合には、審判は担当が変わりますが、そうでない職業裁判官の場合、異動のタイミングでちょうど交替になったというような場合でない限り、調停委員会の裁判官が審判を担当します。 となると、調停委員会の勧める案に不服があっても、審判に移行してもムダのような気にもなりますが、しかし、あくまで当事者の話し合いによる解決を目指す調停と裁判官が判断する審判とでは規律が若干異なり、たとえば、今もなお調停では「相当であると認めるとき」に記録の閲覧謄写が認められるにとどまる一方(家事法254条。もっとも、実際は調停段階でも調停委員会に提出する書類の写しを相手方にも交付するよう求められますが)、審判では原則として閲覧謄写が許可される(家事法47条3項)、審判では職権探知主義のもと、裁判所が当事者に拠らずに積極的に情報を収集し判断することが求められているなど(家事法56条1項、ただし、不意打ち防止のためにどんな事実を調査するのかを当事者双方に通知するなどの制度もあります)、調停とはやはり違いもあります。 納得がいかないのであれば、審判でさらに資料をだし、主張をするということも、大いに意義があるでしょう。

◎ 審判への不服申立て

面会交流の審判が出たけれども、頻度や方法に納得がいかない。婚姻費用(養育費)の審判が出たけれども、金額に納得がいかない。 婚姻費用(養育費)や面会交流等の審判に不服がある場合には、即時抗告することができます。即時抗告が出来るのは、審判の告知を受ける者についてはその告知を受けた日から、2週間です(家事法86条1項、2項)。

なお、審判は、確定するまで効力を生じません(家事法74条2項但し書)。 抗告状の写しは原則として原審の当事者に送付されます(家事法88条)。婚姻費用、養育費、面会交流など別表第2審判事件については、原則として、高等裁判所は、原審における当事者の陳述を聴かなければなりません(家事法89条)。 家事事件手続法では、不利益変更禁止の原則(民事訴訟法304条。上訴審で上訴人に不利益に変更できないこと)のような規定がありません。

裁判所は後見的な立場で判断する家事事件では当事者の申立てに拘束されないからです。家事審判法の下では、他方当事者が抗告したので、それならばと慌ててこちらも附帯抗告する、なんてことがありました。しかし、家事事件手続法は、不利益変更禁止の原則が採用されていないことなどから、附帯抗告は認めていません。 抗告しても、自分に必ずしも有利な判断に変更されるとは限らず、かえって不利になってしまうかもしれない。

しかし迷っていたら2週間を過ぎてしまい、先方は抗告したのにこちらは附帯抗告できず、応戦だけというのも、何か弱腰な感じがする…。迷いますよね。よくよく見通しを検討して、抗告するかどうか、判断してください。

カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド

タグ:非婚・結婚・離婚 / くらし・生活 / フェミニズム / 女性学 / 弁護士 / 打越さく良 / 審判 / 調停 / 裁判官