2015.06.18 Thu
46 養育費とは
夫と離婚と子ども(14歳10か月)の親権者は私がなることまでは合意したのですが、養育費の金額が、決まりません。はじめは、「勝手に出て行ったのだから、勝手にやれ」と言っていたのが、払わなくてはいけないことはようやくわかってくれました。でも、自分が熱心に受験させた私立中学校の学費分はびた一文払わないと言い張ります。
あきらめるほかないでしょうか。
◎ 養育費
親は、直系卑属である子どもに対して扶養義務を負っているので(民法877条1項)、親権者でなくても、養育費(子どもが生活するために必要な費用)を負担する義務があります。
さらに、未成年の子どもの親権者は、子どもを監護養育する義務があります(民法820条)。この義務を果たすためには、費用がかかります。これは、子どもの生活費であり、父ないし母としての親族関係から生じる生活保持義務に基づくといえます。そこで、親権者でない親でも、子どもに対する扶養義務があるので、子どもの監護養育に必要な費用を負担する義務があることにあります(民法766条1項、877条1項)。
扶養義務は、義務者(扶養義務を負う者)が権利者(扶養を求める権利を有する者)に対し、義務者と同程度の生活をさせる必要がある「生活保持義務」と、権利者が生活に困窮したときに、義務者の生活を犠牲にすることなく給付することができる費用を負担すればいい「生活扶助義務」に分類されますが、養育費の支払い義務は、「生活保持義務」といわれています。
まあ、理屈はともかく、権利者側の代理人をする立場としては、生活保持義務であることを前提にした算定表で算出される金額といわれても、「子どもが義務者と同程度の生活を維持するだけの金額かなあ本当に?」という気はするのですが…。
◎ 算定表
現在の家庭裁判所では、養育費のほか婚姻費用も、その算定をより簡易化し、迅速な算定を実現するため、東京家庭裁判所や大阪家庭裁判所等の裁判官たちが参加した東京・大嵩養育費等研究会が2003年に発表した「簡易迅速な養育費等の算定を目指して―養育費・婚姻費用の算定方式と算定表の提案―」に付された算定表により、金額が算出される実務が定着しています。東京家庭裁判所のWebページ上も掲載されていますhttp://www.courts.go.jp/tokyo-f/vcms_lf/santeihyo.pdf#search=’%E7%AE%97%E5%AE%9A%E8%A1%A8‘。
算定方式は、公租公課、職業費(仕事をするために必要な交通費等の出費)、特別経費(住居費や医療費等)を、法律や統計に基づいて、標準的な割合で推計するという考えに基づいています。養育費(婚姻費用)の分担額についての算定方式は、①義務者と権利者双方の実際の収入金額を基礎とする、②義務者、権利者及び子どもが同居していると仮定した上で双方の基礎収入の合計額を世帯収入とみなす、③その世帯収入を義務者、権利者及び子どもの生活費の指数(標準的な生活費の割合を数値化したもの。義務者権利者は各100、15歳以上は90、14歳までは55とされている)で按分して、金額を定める、という考え方に基づきます。
算定表は、算定方式によって算定される分担額を表にまとめたものです。「2万円~4万円」「4万円~6万円」など、ざっくり2万円の幅のある表になっています。
実務上、特別な事情がない限り、算定表により迅速に算定しようという傾向があります。それは承知していますが、どちらの代理人になっても、算定表の2万円の幅のどこで定められるかも大きな違い。ですから、私はいちいち計算して確認はします。しかし代理人をつけないと、計算が難しいかもしれません。その場合は算定表で確認してください。
◎ 学 費
算定表は、公立中学校に関する学校教育費を指数として考慮していますが、私立中学校の学校教育費等は考慮していません。義務者が私立学校への進学を了解していたり、ある程度高い収入で義務者に負担してもらうのが相当の場合などには、算定表によって求められた額に権利者と義務者の収入に応じて不足分を加算することもありえます。算定表上あらかじめ考慮されている学校教育費はいくらだとか、どのように按分すべきかとか、権利者が了解しているといえるかとかいったことは個別の事情によるので、法律相談に行かれたほうがいいでしょう。
ご相談のケースでは、受験を応援していたということですから、義務者が進学を了解していたといえそうですね。
◎ 具体的ケースにより交渉を
ご相談のケースでは、お子さんは14歳10月、だから生活費の指数は55でやむを得ないしょうか。でも、交渉している間、あるいは交渉がうまくいかなくて調停・審判を申立てる等していると、あっという間に2か月は経過するものです。あまり機械的でなく、当事者の合意で90で計算する場合もあります。権利者の側からも、諦めずに90でと提案してみてはどうでしょうか。
義務者側としても、養育費はお子さんの生活のために必要なものですから、あまりかたくなにならずに事案によって柔軟に考えてはいかがでしょう。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
タグ:非婚・結婚・離婚 / フェミニズム / 女性学 / 弁護士 / 打越さく良 / 親権 / 養育費 / 暮らし・生活 / 監護権 / 学費 / 算定表
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