2015.08.18 Tue
48 面会交流1『子どもが会いたくない」という場合は
・子ども(小5の長男、中2の長女)を連れて実家に戻り、夫と別居しました。離婚調停を申し立てました。夫は、離婚には応じない、子どもに会わせろと言ってきます。子どもたちにきいたら、「会いたくない」と言います。
夫にそうメールしたのですが、「おまえがそう言わせているに決まっている」と決めつけます。どうしたらいいでしょうか。
・妻が子ども(小2)を連れて別居しました。別居後月1回子どもと面会してきましたが、妻が「子どもが会いたくないと言い始めた」と言って断られるようになりました。納得がいきません。どうしたらいいでしょうか。
◎ 子どもが会いたくないと言っている場合(監護親として)
子どもが会いたくないと言う理由は何でしょうか。次回以降に説明するような虐待などもっともな事実がなく、監護親であるあなたも心当たりがない場合を考えてみます。
監護親であるあなたに遠慮したり、別居してちょっと気まずい程度のことかもしれないと思うのであれば、お子さんたちに、遠慮することはない、別居後の生活を根堀葉堀きかない等ルールもつくれる、などと説明してはいかがでしょう。安心して、会ってみようと思うかもしれません。
小学5年生以上の子どもであれば、個人によりますが、大体意思能力(有効に意思表示する能力…噛み砕いてませんね。まあ独立して考えられる能力くらいに受けとめていただければ)があるでしょう。とはいえ、まだあなたや中2の姉の話しぶりなどに影響されているかもしれません。「会ったらちょっとは緊張しても、そのうち楽しくなるかもよ」と促してあげれば、その気になるかもしれません。
もっと年長の中2のお子さんは自分自身の考えもあるでしょうから、さらに丁寧に理由をきいてみる必要があるでしょう。
お子さんたちが一定の方法(場所、時間、頻度)であれば会ってもいいということであれば、その要望をお父さんに伝えましょう。
もしお子さんたちが何らかの事情で固く拒絶するのであれば、何かあなたにいえない事情があるのかもしれません。そのような場合にまで繰り返し会うように言い続けていたら、あなたとお子さんたちの関係までぎくしゃくしてしまう可能性もあります。
お父さんのほうから面会交流の調停を申し立ててもらってはいかがでしょう。調停手続の中で、家庭裁判所の調査官に子どもの意思等を確認してもらうことにより(家事事件手続法58条、258条)、お母さんであるあなたもお父さんも、お子さんたちの気持ちを把握することができ、解決の糸口がつかめることでしょう。
◎ 子どもが会いたくないと言い出したと言われた場合(非監護親として)
「あんなになついていたのに、そんなばかな。母親が「洗脳」でもしているに違いない。通学路で待ちぶせして、直接会ってきいてみよう。」
いたたまれない気持ちになるのはよくわかりますが、ルールも決めないで突然会いに行ってはいけません。お子さんたちはびっくりし、おびえてしまったりします。忍耐強く話し合えば、糸口がつかめたかもしれないのに、強引なことをしてしまうと、お母さんのみならずお子さんたちがますます「どんびき」、面会交流に応じたくないと思ってしまいかねません。
また、直観的にそう思っても、監護親に「洗脳しただろう!」などと言い募らないようにしてください。面会交流の再開には、監護親と非監護親が、たとえ離婚原因等では争っていても、子どものために穏やかな面会交流を実現しようという協力関係を築く必要があります。攻撃されれば、監護親はムッとして、「とんでもない。大体あなたの別居前の子どもに対する態度が悪かった。自業自得だ」などと反撃したくもなるものです。お互いヒートアップしてしまい、協力関係を築くどころではないです。
そもそも、別居後会っていたのですから、監護親が「会わせたくない」とお子さんを囲い込もうとしているとは考えられません。何度か面会した際に何かなかったか、思い返してみてください。待ち合わせ時刻に遅刻したり、会っているとき、自分はパソコンで仕事をし、子どもにはDVDを見せるだけだった、あるいは、子どもが行きたいところなどきかず、自分が行きたいところに連れまわして子どもを疲れさせているだけだったとか…。ふりかえってみることが大切です。
思い当たることを反省したとして、その上で穏やかに話し合いもした。それでも、あるいはそんな事情もないのに、監護親がどうもかたくなだ、子どもがそんなことを言っているはずがない、言っているとしても、監護親に遠慮しているのだ…と思えてならないのであれば、上記の通り、調停を申立てたらよいでしょう。調停手続において、調査官調査をしてもらうなどして、お子さんたちの真意を双方が確認してみましょう。
◎ 面会交流とは
そもそも、面会交流とは何か、説明もしてませんでした。父母の離婚前後を問わず、父母が別居状態にある場合に、子どもと同居していない親が子どもと直接会ったり(面会)、面会以外の方法(電話、手紙、メール等)で意思疎通を図ったりすること(交流)です。
2012年に民法766条が改正され、父母が協議上の離婚をするときは、「父又は母と子との面会及びその他の交流」について協議で定め(1項)、協議が調わないときは、家庭裁判所が「子の監護に関する事項」として定め(2項)、これを定めるにあたっては、「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」ことが明記されました(1項)。
面会交流は、家事事件手続法別表第2三の「子の監護に関する事件」のひとつとして、調停や審判の申立てができます。
なお、最高裁平成12年5月1日第一小法廷決定民集54巻5号1607頁の調査官解説には、「面接交渉の内容は、監護者の監護教育内容と調和する方法と形式において決定されるべきものであり、面接交渉権といわれるものは、面接交渉を求める請求権というよりも、子の監護のために適正な措置を求める権利である」と解すべきであると説明されています(なお、最近は面会交流といわれるようになっていますが、以前は面接交渉といわれていました)。ちょっととっつきにくい説明でしょうか…。ともあれ、面会交流は、協議、調停、審判がされて初めて具体的な権利となる、と理解していただければ十分です。
面会交流の調停・審判事件数は年々増えていますし、解決が難しい事案も増えているように思えます。次回以降しばらく面会交流のお話を続けます。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
タグ:非婚・結婚・離婚 / フェミニズム / 女性学 / 弁護士 / 打越さく良 / 面会交流 / 親権 / 再婚 / 暮らし・生活 / 監護権
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