2015.10.18 Sun
50 面会交流3 再婚と面会交流
・前夫と離婚した際、私が長女(離婚時1歳、現在4歳)の親権者となりました。離婚して1年ほどは2か月に1回ほど前夫と長女を会わせていましたが、その後は前夫が転勤となって遠隔地になったので、写真を送るようになりました。私は1年前に再婚しました。今の夫は長女と養子縁組しました。長女は夫になつき、「パパ、パパ」と呼んでいます。前夫のことは忘れているようです。
2年ほど会っていなかった前夫がまた転勤になって、近隣に住むことになった、長女に会いたいと連絡してきました。今の夫は養父で、別に父もいることを長女に話していません。
今話すと、長女がショックを受けると心配です。もう少し大きくなるまで、写真を送るだけにしたいです。
・前妻から離婚したいと言われ、やむなく応じました。長男(12歳)と長女(10歳)の親権者は私です。前妻と長男と長女の面会交流を認めてきましたが、前妻が再婚するようです。子どもたちは前妻を慕い、戻ってきてくれないかと望んでいるので、再婚を知ったらとてもショックを受けそうです。ですから、「お母さんは遠くへ引っ越した」と説明して、会わせないようにしたいと思います。
・前夫が再婚し、再婚相手との間に子どもが生まれたそうです。私には前夫との間に長男がいます。離婚時3歳だった長男は11歳になり、父親に会いたいと言い始め、手紙を送りましたが、返信がありません。LINEでつながろうとしましたが、ブロックされてしまったと寂しそうでした。「会いたい」という願いをかなえてあげたいです。
◎ 監護親が再婚した場合
最近の家庭裁判所裁判官による文献では、子の福祉に反するなど特段の事情がない限り、面会交流を認める方向性が示されています。家裁実務上も様々な事情でただちに実施することが困難であると監護親が主張しても、面会交流の実施に向けて非常に熱心に調整する傾向が見受けられます。
監護親が再婚した場合、古い裁判例では、平穏な生活に波風をたてないようにという理由で、面会交流を認めない例もありました(東京高決昭和40年12月18日家月18巻7号31頁)。しかし、現在は、監護親の再婚、さらに後述する非監護親の再婚は、直ちに面会交流を禁止・制限すべき事由に当たるとは考えられていません。しかし、監護親が再婚したときは、「子と再婚相手の関係、再婚家庭における子の生活面等への配慮が一定程度必要」とは指摘されています(水野有子・中野晴行「第6回 面会交流の調停・審判事件の審理」東京家事事件研究会編『家事事件・人事訴訟事件の実務~家事事件手続法の趣旨を踏まえて』法曹会、2015年、196頁)。
「子が養親を実親と信じている場合には、面会は適切な時期の適切な方法による子への真実告知を経てからとされている」ともいわれます(二宮周平・榊原富士子『離婚判例ガイド第3版』有斐閣、251頁)。未公表の判断ですが、監護親が再婚し、再婚相手と子らが養子縁組した事例で、非監護親の記憶がある年齢の子どもには面会交流を認め、既に記憶がなく再婚相手の養父を父と信じている年少の子どもには認めなかった事例もあります。
本件の場合、前夫としたら、「いずれ適切な時期に子どもに話してから」と言われるだけでは納得しがたいかもしれません。いずれどのように伝えるか、今の夫とも相談した上、特定の時期になったら長女に伝える、その上で実施したいと前夫に事情を説明して相談してはいかがでしょうか。話し合いが難しい場合は、調停を申立ててはいかがでしょうか。
◎ 非監護親が再婚した場合
上記の通り、非監護親の再婚は、直ちに面会交流を禁止・制限すべき事由に当たるとはみなされていません。
修復を心待ちにしていた子どもたちは、母親が父親以外の男性と再婚したことを知ったら、ショックを受けることが予想されます。しかし、母親が再婚してからも子どもたちと会いたいと望んでいるのに、子どもたちに嘘をついてまで、勝手に拒否していいとは思えません。後に事実を知ったら、子どもたちはきっと「再婚したために僕たちを切り捨てたんだ」と誤解してなお一層傷ついてしまうのではないでしょうか。また、拒否したいという気持ちには、父親としての配慮だけではなく、自分勝手な嫉妬もまじっていないでしょうか。今一度、子どものために何がいいことか、考えてみてください。再婚しても、親であることには変わりがないのですから。
もっとも、非監護親が子どもたちに再婚相手や再婚相手との間の子どもを会わせようとする場合には、「子に与える影響を慎重に検討すべき」と裁判官による文献(水野・中野前掲)にあります。周囲にはわりとあっけらかんと会わせている場合もあるのですが、確かにケースバイケース、慎重な検討を要することもあるでしょう。
◎ 非監護親が交流を拒否する場合
残念ながら、非監護親の方が、監護親との間の子どもと会うことを拒否する場合もあります。
現行法では、子どもには面会交流等子の監護に関する処分(民法766条)について申立権がなく、監護親が非監護親に対して子どもとの面会交流を求めて調停ないし審判を申立てることになります。家庭裁判所は、子の陳述の聴取等適切な方法により、子の意思の把握に努め子の年齢及び発達の程度に応じてその意思を考慮すべきことになっています(家事事件手続法65条)。そこで、手続上聴取された子どもの意向等は、非監護親に伝えることができ、非監護親が拒否的な姿勢を改めてくれる契機になるかもしれません。
しかし、改めない場合には…。切ないですが、面会したくない親に面会しろと命じた判断はないようです。
なお、親権者母から再婚した非親権者父に子ども(離婚時2歳、判断時小学4年生)との面会交流を求めた事案では、父母間の葛藤は極めて根深いものがあり、面会交流の早急な実施は父母双方にとって精神的な負担を負わせ、子の心情に良い影響を与えられるとは言い切れないことから、将来的に面会交流が円滑に実施できることが期待されるが、当分の間は間接的な交流(父から子ども宛に手紙を年に4回、3か月ごとに書く)にとどめるのが相当であるとされました(さいたま家審平成19年7月19日家月60巻2号149頁)。
考えてみれば、「面会交流は子の権利でもある」等と謳われることがしばしばあるのに、子どもに会いたい非監護親は調停や審判を申立てられるのに、非監護親に会いたい子どもは申立てられないなんて、それでいいのかな?と疑問ですね。
カテゴリー:打越さく良の離婚ガイド
タグ:非婚・結婚・離婚 / フェミニズム / 女性学 / 弁護士 / 打越さく良 / 面会交流 / 親権 / 養育費 / 再婚 / 暮らし・生活 / 監護権 / 交通費
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