2011.10.11 Tue
みなさま、ごぶさたしています。先月末に1ヶ月ぶりにヨーロッパから帰ってきました。
エストニア、ノルウェー、ドイツ、デンマーク、クロアチア、ルーマニアと北欧、東欧6カ国の旅。ルーマニアでは吸血鬼で有名なトランシルヴァニアで煌々と輝く仲秋の名月を見てきました。世界中どこでも満月は満月だって、なんだかふしぎですね。デンマークでは1週間の介護施設研修。コミュニティのケアワーカーさんとおそろいの制服を着て、ホームヘルプに同行するというめっちゃおもしろい体験をしました。その感想やご報告はいずれ。
ところでドイツはデュッセルドルフにフックス真理子さんをお訪ねした際、前回の「WANが生んだ200万円」の後日談をお聞きしてきました。なるほどねえ、NPOというのは、どんなに小さくても、こういう力を発揮するんだ、と感心した出来事でしたので、これもご本人のお許しを得てご紹介します。
(文中e.V.とあるのはドイツ語でVerein、日本でいうNPO法人のことです)
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ネットワークが力になった話—ちづこのブログNo.13「WANが生んだ200万円」後日談
フックス 真理子(独日文化フォーラム/ひゅうまねっとe.V.代表、在Dusseldorf)
仙台に200万円送金して、少したったころの話です。
当地の某日本人団体のドイツ人税理士さんから電話がありました。いわく、日本への送金をどのようにしたのか、そのノウハウを教えてほしい、と。
地震のあと、ドイツの日本人団体は、どこでもみんなたくさんの義援金を集めました。けれど、さあ、それを日本に送るという段になって、突然ドイツ税務署からストップがかかりました。なぜか。企業はもちろん、商工会議所や日本人の団体はどこでも、その定款に被害者救済などの一項が入っていません。
地震が起きたから、同胞を救うためにお金を集めて本国に送るというしごく当たり前に見える論理も、ドイツの厳格な法解釈の前には、まったく認められないのです。
しかし、考えてみれば、テロリストたちにドイツから何かの隠れみのをつかって送金するのと、このケースは、同じと言えば同じ。定款にないお金の移動を日本に許して、テロリストはだめだといっても、それではその線引きはどこにあるということになります。
そこで、どの団体も義援金は集めたものの、日本に送れなくなっていたのです。
この状況では定款を変えるしかない。いくつかの団体が、大変煩瑣な手続きを経て、それを実際に行ないました。しかし、今回電話してきた税理士の団体では、定款を変えたものの、税務当局は日本への送金に、まだ難色を示しているというのです。
幸い私たちのNPO、ひゅうまねっとは、定款に「困窮している人たちを、国籍を問わず援助するプロジェクトを推進する」と書いてあります。
そして、私たちは、ドイツの州財務局に言われたとおり、㈰仙台にいる元メンバーに、今回のプロジェクトのフリーランス契約を送り、㈪連邦銀行に送金届けを出し、㈫仙台のNPOへの振り込み証明をドイツに送ってもらう、ということをしましたが、と答えました。そして、この手続きをふめば、送金額はノーリミットだと言われたことも伝えました。
そう答えているうちに、そのドイツ人税理士と2人、突然わかったのです!
私たちにあって、その、彼女が財務を担当している、デュッセルドルフの日本企業の団体にないもの、それは、仙台に住んでいる私たちの元メンバー! この人が日本で私たちのお金を受け取って、自分でも援助活動に使い、かつ他のNPOに寄付する、この存在があちらにはないから、日本へお金が送れないんだ。
この発見は感動的でしたね。私たちのように弱小のボランティア団体ができて、私たちの何十倍の規模の会計が動いている団体にできないこと、それはネットワークを通した、ただのお金の動きではない、本物の援助活動。この差が決定的だったのです。
仙台在住の元メンバーは、今から10年以上も前、当地で活動にたずさわって、その後帰国したのですが、しばらく音信不通となっていました。そのうちに、インターネットの時代到来。ひゅうまねっとのホームページを見つけて、懐かしさから連絡してきてくれました。私たちのメーリングリストにも入り、ドイツでの活動が共有できるようになりました。
そこへ地震が起こった。私たちは即、彼女を通して、支援活動をすることを決めました。その後の経過は前便に書いたとおりです。
見かけは、たいしたことのなさそうな草の根のつながり。でも、こんな風に、大きな組織・企業のできないことができるんですねえ。
すごい! あらためて、ネットワークの底力を感じた出来事でした。
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