上野研究室

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書評セッション『ケアの社会学』 参加レポート 寺本光世

2011.11.11 Fri

第2回web上野ゼミ番外編は、大変充実した会でした。
ありがとうございました。

評者の米澤さんは「上野先生が協セクターに拘泥する理由がよくわから
ない」と言います。
私は千田有紀編「上野千鶴子に挑む」を読み終わっておけばよかったな
あ、と思いつつ(実際には「ケアの社会学」だけで精いっぱいだったの
で…)聞いていましたが、もしかして上野先生は(もちろん現実を見据
えた上での)とてつもないロマンチストなんじゃないだろうかと、ちら
っと考えてしまいました。
そうじゃないと、朴さんからの「上野の片思い」という評は出てこない
のではないかと…

それから横井さんのコメントも、この本の本質を非常によく見極めて的
確だったと思います。
わかりやすくコンパクトにまとめて下さっていると感じました。

そしてなんといっても強烈なインパクトのあったのが、高口さんでした。
なんてパワフルでざっくばらんで魅力的な女性でしょうか。
現場で経験を積み重ねてきた人が持つオーラが、まぶしかったです。
ALSの老人に「病院に行かなくていいんですね?」という呼びかけに
ついての、上野先生とのやりとりはせつなかったですね。

最初に高口さんがその話をした時、上野先生は微妙な顔をしていました。
う~ん、と思っていたら案の定、前述の「病院に行かなくていいんです
ね?」というネガティブ・メッセージに対して、「病院に行きましょう
か?」というポジティブ・メッセージもあり得るのではないだろうかと
いう話を、上野先生はします。
それに対して高口さんは、その時の現場のせっぱ詰まった様子や、でも
確かに老人より職員のことを考えていたかもしれないということを、率
直に語りました。

聞いていて私は、老人が最初に託した「病院に行きたくない」という願
いに対し、「病院に行かなくていいんですね?」は呼応しているんじゃ
ないかな?と思ってみたり。
でもそもそも、あの「親戚には迷惑をかけん!」と言っていた老女が最
後に「実家の墓に入りたい」と本音を言うように、老人の最初の願いが
どこまで本音だったかも探るべきなのかと思ってみたり。
正解は1つではないのでしょう。

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