上野研究室

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ケアの社会学―当事者主権の福祉社会へ ~「わたし」を生きるための社会学~

2011.11.30 Wed

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「どんな理論も研究も、現実の変化のほうを後追いする。わたしは現実の変化にともなって、介護保険法施行前夜からこの分野に参入した。またわたし自身の加齢という個人史上の変化が、この社会史上の変化と足並みをそろえたのは、研究者としての幸運でもあった。」(本文p.4)
1997(平成9)年、私たちは、介護保険法を成立させた。この介護保険法成立をうけ、この国には「高齢者のいのちとくらしをまもること」を職業的使命とする人びとが大量に創出され、それから10余年が経過した。本書は、『家父長制と資本制』(1990)でしめされた理論の実証として世に出た続編である。
上野さんは、その著『家父長制と資本制』の結びで、こう記している。―なぜ人間の生命を産み育て、その死をみとるという労働(再生産労働)が、その他のすべての労働の下位におかれるのか・・・この問いが解かれるまでは、フェミニズムの課題は永遠に残るだろう。
「ケア」は、不払い労働ではなくなった。けれども、女性は、依然として二流の労働者として位置づけられている。そして「つくられた労働力不足」が発生している。フェミニズムの課題は未だ、解決をみてはいない。
この国で将来、ケアを必要とする人たちが、安心してケアされる経験を委ねられる保障はあるか。私たちは今、その解を求める麓まできている。頂をみるには、明らかにしなければならないロジックが必要となる。それが『ケアの社会学』にある。
ケアは実践であり、現実は変化する。私たちは常に登り続けなければならないことを忘れずにいよう。そして本書が、なくてはならない良き伴走者であることも。
堀 紀美子

カテゴリー:イチオシ

タグ:高齢社会 / 上野千鶴子 / 堀 紀美子

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