2011.12.27 Tue
アマゾンのサーバでエラーが起こっているかもしれません。一度ページを再読み込みしてみてください.フェミニズムは、知の力である。「人の世の弱さ」を選ばなかった上野さんが、体現しているフェミニズムは、まさにこの生きがたい人の世を生き延びる知であるといえる。ひとりの人と結婚する弱さ、子どもを産み育て、子どもと暮らす弱さ、家族をもつ弱さ。弱さを抱えながら、わたくしの自由と何度も何度も引換えにしながら、権力の鎖に繋がれて、寡黙を選ぶ。それが弱者の選択肢のない生き方であるとしたら、そう考えることができる者は、なにを選び、なにを捨てるだろう。自由を選びとること、自分が何者かを問うことで、フェミニズムは解を明白にする。
さまざまな共依存に自らの足元を掬われる。掬われた足元で危なげに立ちすくみながら、自身が纏う女性性に訣別をくだす峠さえ乗り越えれば、弱さを内包していた自己は変容する。「弱者が弱者のままで生きられる社会」と上野さんはしきりに言う。上野さんは弱さが内在することを知り尽くしたうえで、外在するこの時代の理不尽な力とあえて格闘してきた。
そして、老いること。だれもが老い、そして逝く。上野さんが培ってきた理論が実践とつながる。弱さに立脚した強さだからこそ、上野さんの言葉は、読者の琴線にふれ、心を揺する。テキストがもつ力、その力をもっても、変わらない、しがみつきたい自己があることは否めない。身をよじる思いでそこを通過した者から、多様なフェミニズムの、生きて老いゆく知を受け取る。
『その気になれば、そこには食いつきがい、食いちぎりがいのある背中が、あるいは言説が、たっぷり見つかるはず(本文 p.280)』というフェミニズムは、あなたのその気をいつでも、待っている。
堀 紀美子
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