2012.02.16 Thu
ひょんなことで名誉ある朝日賞を受賞いたしました。朝日賞って何?と思う方は以下へ。実はわたしもよく知りませんでした。
http://www.asahi.com/shimbun/award/asahi/
受賞式の模様はこちらに。
http://wan.or.jp/reading/?p=5966
受賞式のスピーチ、おかげさまで各方面で評判になっているようです。
で、全文採録しますね。著作権者はわたしなので、ここにのっけます。
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賞には縁の無い人生を送ってきたと思っておりましたので、電話で受賞のお知らせを受けたときには、「朝日賞?それってなんですか?」と聞き返したほどでした。
元旦の朝日新聞の1面に、「女性学・フェミニズム」という文字を見て、わが目を疑いました。おそらくこのことばが新聞の1面に載るのは、歴史上初めてのことでしょう。
過去の受賞者の方々のお名前を見ますと、主として文化、芸術、芸能分野の方が多いことがわかります。こうした分野は、ことばを介さずに世界に通用する業績をあげることができる分野です。学問の分野では自然科学者のほうが社会科学者よりも多いことに気づきます。理工系の分野では結果がはっきり出るの対し、社会科学はイデオロギー性や政治性があるために評価が分かれるところがあるのでしょう。(すみません、社会学者ですので、つい分析してしまいます。)朝日賞の過去10年の受賞者の女性比率を調べましたところ、14%でした。これは国会議員の女性比率より、わずかにましです。
私はまず女、それに社会科学者、それも男を敵に回すと考えられている女性学の研究者、しかも下ネタでひんしゅくを買ってきた札付きのフェミニスト…と四重苦、五重苦の持ち主です。そういう私のような者が栄えある朝日賞をいただくとは、青天の霹靂でした。わけても審査委員の方々のだれひとりとして面識がなかったことは、この賞の公平さを保証するものと、うれしい思いです。
学問の世界にもベンチャーがあります。わたしが大学へ入ったころには、大学には女性学はありませんでした。わたしたちの世代はみなパイオニアです。独学で女性学を学び、やがてそれを教える立場に立ちました。今回の受賞は、わたしだけでなく、わたしとともに女性学・フェミニズムを担ってきたすべての女性たちの活動を評価していただいたものと、感謝しています。
日本では女性の力が生かされておりません。3.11の後の政府の震災復興会議の委員15名のうち女性がたった1人だったことにわたしはショックを受けました。震災からの復興も、日本の未来も、女性の力なしになしとげることはできません。女性の声が政治に届いていれば、もしかしたら原発をつくらずにすんだかもしれないと痛恨の思いです。
朝日賞の過去の受賞者のなかには、わたしの尊敬するふたりの大先輩、鶴見和子さんと石牟礼道子さんがいらっしゃいます。このおふたりと名前を並べるのは身のすくむ思いです。このおふたりが自然と環境とになみなみでない関心を払ってこられたことはご存じのことと思います。
鶴見さんからわたしは「ちんぴら」と呼ばれておりました。代わりにわたしは、鶴見さんのことを「おじょんば(おじょうさんおばさん、の意味)」と呼んでおりました。これからも「ちんぴら」として、世間を騒がす挑戦的な発言を続けていきたいと思っています。和子さん、天国から見守っていてくださいね。
今回の受賞式には、なでしこジャパンのみなさまにお会いできることを期待してまいりました。なでしこジャパンの方々のご活躍は、「やまとなでしこ」の意味を、「従順で耐える女」から、「挑戦する女」に変えました。
女性の力をきちんといかす社会になることを願って、期待と共に与えられた賞だと思っています。ありがとうございました。
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