上野研究室

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「51C」家族を容れるハコの戦後と現在    ~住まう人・住まうハコから考えてみる~

2012.03.22 Thu

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 「51C」とは、1951年度公営住宅標準設計の一つの型の名称である。戦後の焼け野原、町は家のない人であふれていた。1945年終戦を迎え、復興のため政府は、とにかく不燃・積層の集合住宅を建て、家族をその「ハコ」に容れた。「51C」は、現在のnLDK(例えば、2LDK・3LDK)のもとであるといわれている。しかし、この近代社会において、『家族はとっくに終わっている』と、上野千鶴子さんは断言する。性の絆のない夫婦。そして育児・介護・介助といったケアと呼ばれるものを家族が担っていた時代から、脱私事化である育児・介護のアウトソーシングの時代を迎えた現代では、家族一人ひとりが、ケアの機能を果たせない現実を受け入れ、家族を容れてきた『ハコ=住居』は、内にではなく、ケアを目的とし外に開かれていく必要があると、上野さんは提言している。
「家族」はもう、重荷を背負うように、家族をしなくていい時代なのだ。住宅から近代家族のあり方・行く先を考えるきっかけを与えられる一冊である。

堀 紀美子

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タグ:上野千鶴子 / 堀 紀美子