2012.05.05 Sat
5月3日憲法記念日。全国憲法研究会(代表 辻村みよ子東北大教授)主催の定例の憲法記念日集会@慶應大学に呼ばれて行ってきました。ふたりの講演者のうち、わたしともうひとりは会員の中里見博さん。この3月まで福島大学に勤務していた自主避難者のひとりです。上野の「当事者主権と自己統治」、中里見さんの「原発事故と第3の生存権」というふたつの講演には、互いに打ち合わせをしたわけではないのに、期せずして共通点がありました。第1は原子力の平和利用と軍事利用とは表裏一体であること、第2は「主権」「人権」の重要性、そして第3に「当事者性」の獲得です。とくに最後の「当事者性」について、中里見さんは、フクシマの被害者のあいだに持ちこまれた「分断と対立」をめぐって「当事者になることの困難」を述べたのが印象的でした。被害者であることを認めるのは、自分が弱者であることを認めることと同じだから、できるだけ自分の受けた被害を過小評価する機制が働く、というものです。同じ心理的機制は、女性、障害者、高齢者にも同じように働きますが、外からみてはっきりわかる社会的マイノリティと、フクシマの被害者のように一見して外からは見えない被害、それも長期にわたって結果がはっきりしない被害を受けた人たちは、社会学でいう「パッシング(なりすまし、なかったことにする)」が可能だからでしょう。弱さを認める強さを得るには?という議論へと展開するやりとりは、たいへんスリリングなものでした。雨の中を来ていただいた500人を超える聴衆の方たちには満足していただいと思います。久しぶりにお会いした中里見さん、考え抜かれたことばを語り、かっこよかったです。
ところで以下はその講演のなかで紹介された福島県のSPEEDI情報をめぐる不祥事の報道です。ご本人があとから情報を教えてくださいました。読んでびっくり。1年以上経ってようやく検証と処分が決定されたという報道ですが、ほんとうに職員2人の「自主的判断」の結果なんでしょうか。政府内でも無視黙殺されたSPEEDI情報、複数の担当者が関わっているはずですが、その人たちの責任はどうなっているのでしょうね。ここにも「当事者性」を引き受けようとしない人々がいるようです。
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SPEEDI問題で県のミス認定 産経新聞 4月21日(土)7時55分配信
放射性物質の拡散を予測する国の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)のデータを原発自治体周辺に提供せず、県も国から送られてきたデータを消去していた問題で、福島県は20日、指揮命令系統が混乱し、情報共有ができなかったことや受信容量の確保のためデータを削除したなどとする検証結果を明らかにした。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120421-00000112-san-soci
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東日本大震災:SPEEDIデータ問題 86通中65通を消去−−県調査結果/福島 毎日新聞 2012年04月21日 地方版
県が福島第1原発事故直後に、電子メールで文部科学省から送られた「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」による拡散予測データを消去した問題で、県は20日、対象となった86通のうち65通を消去していたとの調査結果を公表し、謝罪した。データの取り扱いに関する取り決めがなく、電子メールの受信容量を確保するために削除したなどとする一方、データの活用については検討課題とした。
県によると、県災害対策本部が原子力安全技術センターから受信したデータのうち、保存の確認ができなかった昨年3月16日午前10時以前のデータを調べた。その結果、12日午後11時54分から16日午前9時45分までに86通を受信。72通を閲覧し、うち51通を削除、14通は閲覧もされずに削除されていた。この中には原発を中心に92キロ四方に放射性物質が拡散した場合のイメージ図も含まれていた。
データの受信時期を巡り、国から過ちを指摘されながら放置していた問題に関する調査結果も公表した。県は同5月19日に、記録が残っていた「同3月13日午前10時37分に受信したファクシミリが最初」との見解を出した。これに対し国は「同3月12日午後11時54分から送信を開始」と指摘。県は同5月26日までの調査で、受信記録が残っていることを認識したが公表しなかった。業務多忙などを理由に詳細調査も怠っており、この点も陳謝した。【清水勝】
http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20120421ddlk07040160000c.html?inb=yt
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SPEEDIデータ消去 知事陳謝、職員を処分 福島 2012.4.26 02:03
放射性物質の拡散を予測する国の「緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム」(SPEEDI)のデータを県が消去していた問題で、県は25日、東京電力福島第1原発事故発生当時の県災害対策本部事務局次長と同本部の管理職を指導監督が不適切だったとして書面訓告処分、電子メールで受信したデータを消失させた職員2人を厳重注意処分とした。
処分については、佐藤雄平知事が同日の会見で「県民に大変心配をかけ、申し訳ないと思っている。十分な情報共有ができなかったことは問題。教訓を踏まえ、初動対応の検証に取り組む」と陳謝した。
県によると、データは昨年3月12日午後11時54分から16日午前9時45分までに86通を受信。しかし、USBメモリーなどで保管していたのは21通で、残りの65通は消去していた。原因は県の災害対策本部でメールの取り扱いが明確に定められていなかった▽組織として情報共有が徹底されていなかった▽電子メールの受信容量を確保するため削除した-としている。
http://sankei.jp.msn.com/region/news/120426/fks12042602030000-n1.htm
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<SPEEDI>予測データ消去…福島知事が陳謝 毎日新聞 4月25日(水)21時6分配信
福島県が福島第1原発事故直後に「緊急時迅速放射能影響予測システム(SPEEDI)」による放射能の拡散予測データを消去していた問題について、佐藤雄平知事は25日の定例記者会見で「事故発生当初(県災害対策本部内で)十分な情報共有ができなかったこと、長期間にわたって詳細な調査を怠ってきたことは大変問題があった」と陳謝した。
県は、指導監督が不適切だったなどとして、当時の県災害対策本部事務局次長の荒竹宏之・生活環境部長らを訓告、データを削除した男性職員2人を厳重注意処分にした。【乾達】
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120425-00000092-mai-soci
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