2014.02.21 Fri
今年も恒例の雑誌『みすず』読書アンケート特集(2014年1/2月合併号)が出た。
うえのの投稿をご紹介。
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⑴ シリーズ『福祉社会学』全4巻(武川正吾編『①公共性の福祉社会学』副田義也編『②闘争性の福祉社会学』藤村正之編『③協働性の福祉社会学』庄司洋子編『④親密性の福祉社会学』)東京大学出版会
こういうアンケートにはふさわしくない回答かもしれないが、2013年度の「今年の収穫」風にこの4巻シリーズをあげておきたい。社会福祉学と福祉社会学の違いもわからない人が多いところに、書評にものりにくい編著シリーズだが、編者らが「現代日本の社会学にとっても、福祉研究にとっても、事件である」と自負するとおりの挑戦的な刊行。
⑵ 小熊英二『原発を止める人々–3.11から官邸前まで』文藝春秋、2013年
あいかわらず読み続けている原発関連図書では、本書がイチオシ。著者は「いま日本で原発は止まっている」、止めたのは私たちで、その奇跡を私たちは理解していない、と言う。
⑶ 牧野雅子『刑事司法とジェンダー』インパクト出版会、2013年
ジェンダー関連の著作では本書を。強姦犯へのインタビューを通じて、警察、検察、司法がよってたかって強姦の「性欲神話」をつくりだす過程を克明に暴く。司法そのものが性差別で成り立っていると思わざるをえない。元警察官だった研究者ならではの、視点の深さと徹底性にうなった。
⑷ アーサー・ビナード『さがしています』童心社、2013年
梓会出版文化賞の選考にたずさわっているせいで知りえた日・中・韓平和絵本のひとつ。同じ絵本を三カ国語で同時刊行しようという、出版人の良心ともいうべき平和教育の試み。ヒロシマの被爆者の遺品に、達意の日本語の文章がついている。東アジアの緊張緩和はこういう地道な試みの中からしか生まれない。それを台無しにする宰相がいる不運を嘆く年末だった。
5 竹村和子『境界を攪乱する—性・生・暴力』、岩波書店、2013年
日本におけるジュディス・バトラーの最良の紹介者であり、日本のクイアセオリーを牽引していた故竹村和子の遺稿集。2011年12π月にがんで才能を惜しまれながら五七歳で急逝。早すぎる死だった。彼女の仕事はこれ以上一作も増えない。縁あって、わたしが編集を引き受け解説も書いた。いろんな出来事がおきる度に、彼女が生きていたらどう反応しただろう、と想像する。WANのブックストアに、彼女の追悼コーナーがある。http://wan.or.jp/
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タグ:上野千鶴子
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