上野研究室

views

4517

山梨市講演会中止について ちづこのブログNo.64

2014.03.15 Sat

それでなくても忙しいのに、またまた火の粉が降ってきました。わたしが招いたわけでもないのに、降りかかる火の粉は払わねばなりません。
山梨市で予定されておりました市民講演会の中止について多くの方からお問いあわせを受け、わたしの対応が注目されておりますので、以下にご報告したいと思います。
山梨市長に2月に当選した望月清賢氏から、3月18日に予定されていた市主催の介護講演会「ひとりでも最期まで自宅で」の講演中止の通知を受けました。
昨年秋に依頼を受け、この3月初めから募集が始まり、市民164名の応募がすでにあったものです。3月5日に担当者からメールがあり、こういう重大なことを1本のメールで通知するのは不適切だから市長名の公文書がほしい、と要求しましたら、3月12日に担当者とその上司計3名の訪問がありました。

本文は以下のとおりです。
_______________________
市民講演会中止について
山梨市長 望月清賢
春寒の候、先生におかれましては、ますますご健勝のこととお慶び申し上げます。また、日頃から高齢者保健福祉行政にご理解・ご協力をいただき感謝申し上げます。
さて、来る3月18日に実施を予定しておりました市民講演会についてですが、市民の皆様から様々なご意見をいただく中で、講演会当日の運営に支障を来す恐れがあることから、やむを得ず中止とさせていただくこととなりました。
誠に申し訳ありませんがご了承いただきますようお願い申し上げます。
________________________
もちろんお願いされたからといって「ご了承」できるわけがありません。
メディアの取材が入り、新聞報道からわかったことは、「市民の皆様から様々なご意見」とは、⑴メールが10本、他にブログ、twitter等での上野への批判発言、⑵上野の過去の発言が問題にされているとのこと。内容は朝日新聞連載コラム「悩みのるつぼ」の2012年12月8日回答分の「性欲の強い中学生」への回答であること、⑶あとから追加された情報は他にも『セクシィギャルの大研究』『スカートの下の劇場』などの著書があること、だそうです。
いちいち反論するのもうざったいですが、言うべきことを言っておくと、以下のとおりです。
⑴すでに市が決定し、告知と募集までした講演会を、講師の考えに賛同できないという少数の「市民」のメール等のクレームで中止するとはあってはならないことです。
⑵「講演会当日の運営に支障を来す恐れ」とありますが、具体的に脅迫や警告を受けたのか、と聞くと、それはまったくない、とのこと。何もないのに先取りして中止とは過剰な自主規制です。まんがいち脅迫や警告があったとしても、一部の脅しに行政が屈してはならないことは当然でしょう。警備をして実施すればよいだけの話です。
⑶上野の「過去の発言」はすべて講演依頼を受けたときにはわかっていたこと。新しい情報は何もありません。最初から問題なら上野に講師の依頼をしなければよいだけの話です。となれば、講師依頼の時と中止の時とでは、上野の側に変化はなく、講師の適切さについての判断が行政側で変化したことになります。前市長が了承した企画を、政権が変わったからと言って現市長が覆してもよいものでしょうか。
⑷「過去の発言」のやり玉にあげられているのが「悩みのるつぼ」の回答。「熟女にお願いしなさい」という回答のどこが問題なのでしょうか。「依頼」であって「強制」ではありませんし、「相手のいやがることはぜったいにしないこと」それに「避妊の準備も忘れずに」と書いてあります。淫行条例に違反するという指摘もありましたが、中学生に性交を禁じる法律はありません。成人が児童(18歳未満だそうです)に「みだらな行為」をすることは禁止されていますが、中学生が大人に「お願い」するのを禁じることはできないでしょう。15歳といえば昔なら元服の年齢。妻を娶ることもできました。この回答を問題視するひとたちはまさか「結婚まで童貞を守りなさい」とは言わないでしょうね?
⑸『セクシィギャルの大研究』『スカートの下の劇場』をきちんと読んでみてください。いずれも実証研究にもとづいた、そうは見えないけれど学術書です。『セクシィギャルの大研究』はCM写真の記号論的研究、『スカートの下の劇場』は下着の歴史研究です。いずれのタイトルにも「セックス」も「パンティ」も入っていません。仮に入っていたからといって何が問題なのでしょう?まさか性を論じることがタブーだというのではないでしょうね?性を論じる人物は、それだけで講師として不適任だと?
⑹というわけでうえのは「過去の発言」について、天にも地にも恥じるところはありません。しかも以上の「過去の発言」のいずれも今回のテーマである「介護」には無関係です。それを理由に「中止」を決定するのは言いがかりとしか思えません。

というわけで今回山梨市長はまったく不適切な対応をしたことになります。たぶんご本人は自分の決定の重大さに気がついておられないのでしょう。
さっそくメディアが動きました。取材に入ったのは以下のメディアです。
山梨日々、毎日、朝日、読売、共同通信、NHK山梨、テレビ山梨
朝日新聞と毎日新聞は山梨地方版だけでなく、全国版に報道を掲載しました。言いがかりをつけられたのは、朝日のコラムですから、朝日新聞も「公序良俗」に反していることになるのでしょうかしら?

これからは周辺情報からの憶測です。
⑴上野の発言のうち、安倍政権批判が気に入らない人々が市長の周辺にいたようです。
⑵前市長(民主党)から現市長(自民党)に政権交代して、前市長のやったことをことごとく否定したい、と思ったようすも。
⑶安倍政権が誕生して地方の保守派がいきおいづき、このくらいのこと、と安直に考えて講演会つぶしをやってしまったと。
もし以上の「憶測」が正しいとすれば、こういうことがまかりとおってはなりません。山梨市のみならず他の自治体においても同様のことが起きる可能性を未然に防がなければなりません。
こういうことはあってもらっては困ることですから、山梨市長には根拠のない憶測にすぎない、ときっぱり否定していただき、わたしや一部の市民の方の疑念を晴らしていただくことを期待します。

さあて、わたしはどう対応したものでしょう?
まず抗議をして市長に説明責任を果たしてもらう必要があります。抗議の意志はすでに伝えてありますし、説明に納得できないことも伝えてあります。
次に事実経過を明らかにするために情報公開請求ができます。市はどんなメイルを受け取ったのか、意思決定過程はどうなっているのか、関係者のあいだでどういう合意形成をしたのか、情報公開を求めることができます。もし非開示の決定がくれば、不服申し立てで行政訴訟に持ち込めます。
さらに法的対応をとることができます。契約不履行で損害賠償の民事訴訟を起こすことができます。その賠償の内容は、⑴契約不履行に伴う違約金(当初提示された額は10万円でした)、⑵日程調整にともなう逸失利益や準備のための費用、⑶精神的慰謝料(そりゃわたしだって傷つくし、むかつきますよ!)の合計額となります。
それだけでなく、山梨市民なら誰でも「住民監査請求」を監査委員に宛てて出すことができます。その対象は⑴上野に支払うことになるであろう違約金、⑵ポスターやちらし等広報にかかわる費用、⑶会場のキャンセル料その他、中止にともなって発生する費用の合計額です。市の財政にそれだけの損害を与えたことで、市長を訴えることができます。

とはいえ、もともとこの講演会は、山梨市民の方の熱意で企画され、多くの方が楽しみにしておられた企画です。もし市長がご自分の誤りを認めて「中止」の決定を撤回したら・・・上野は予定通り18日に講演する用意があります。その日は山梨市民のみなさんのために空けておきましたから。
それを宣言して、山梨市の対応を18日当日までお待ちすることにしましょう。
わたしの側からはもっとも寛容な対応だと思っておりますが、これに望月市長はどう対応なさるでしょうか?ボールは市長の手にあります。

カテゴリー:ブログ

タグ:女性運動 / 上野千鶴子 / バックラッシュ